ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第二十話 ガレア、アメリカ村に行く

「やあ、こんばんは。
昨日は…そうそう、蓮と服を買いに行くところだったね」


「うん!」


じゃあ、今日も始めていこう


###


僕は連に連れられて、駅に戻って来た。
僕らが出てきた方と逆方向に歩いていく。


「ここよ。すいませーん、中学生二枚と竜二枚」


切符の買い方も手馴れている。


【おい竜司。お前と違って簡単に買ったなあ】


「うるさいよガレア」


そんな事は僕が一番わかっている。
だってしょうがないじゃないか。
僕は竜と一緒に電車に乗るなんて初めてだったし、そもそも電車自体数えるほどしか乗った事が無い。
自分への言い訳を考えながら電車に乗った。


幾分か空いていたためガレアとルンルが乗っても問題なかった。
これが満員電車だと……僕は考えてゾッとした。


「どうしたの?」


蓮が心配して話しかけて来た。


「いや……満員電車だったらって思って……」


「そんな事気にしてたの?
大丈夫よ、ラッシュ時は竜用の車両が設けられるから」


僕は全然知らなかった。
つくづく引き籠もりって世間知らずなんだなあって思ったよ。


(心斎橋―心斎橋―)


「あ、着いたわ行きましょ」


僕とガレアは言われるままついていった。
十分ほど歩いたら妙な建物が並ぶ区画に来た。


「蓮……ここって……」


「驚いた? ここがアメリカ村。通称アメ村よ」


【おい! 竜司! なんだここ!? 面白そうなのがいっぱいあるぞ!】


巨大なピエロの顔がモチーフとなっている看板を指差してガレアが喚いている。


「凄いね蓮。アメリカに来たみたいだ」


「でしょ?
元々女性が開いた喫茶店が繁盛して、そこにサーファーとかがハワイからの服とかを売るようになってこうなったんだって」


「へぇー詳しいね。
何でそんなこと知ってるの?」


「私、知らない事を知らないままって言うのが我慢できなくて、ふとアメ村って何で出来たのかな? って考えてすぐにネットで調べたわ」


「なるほど」


「やっぱ竜を使役するぐらいなら好奇心は強くなくっちゃね」


蓮はウィンクをする。
凄く可愛い。
ルンルと比べて段違いだったね。
そんな事を考えてるとふいに気付いた。


ルンルが居ない。


「大変だ蓮! ルンルが居ないよ!」


「ああ、大丈夫よ。
あの子アメ村に来たらいっつもこうだもの。
多分コスメグッズとか見てるんじゃない?」


「でも……大丈夫なの? ……店に入って強盗しちゃったりとか……」


「大丈夫よ、そこら辺の人間ルールはわきまえてる子だし。
買いたいものがあればおねだりしに戻ってくるわよ」


「そうなの……?」


僕は半信半疑だった。
だがそれが本当なら竜は本気で人間界で暮らしたいんだなって思ったよ。


「そんな事より服よ。服」


蓮に連れられて店に入った。
ハワイアンの曲がBGMの洒落た店だ。


「まずはインナーね……」


「HEY! REN!」


店員が声をかけてきた。
その店員は脇の辺りまで金髪を伸ばし、レーバンをかけていた。
ヒッピーっていうのかな?
昔の映像で見た風来坊みたいなバンドを頭に巻いている。


「ジョイ、久しぶりね」


「またRENの歌が聞キタイヨ」


「あははっまた気が向いたらね」


そういえばさっき声楽コンクールで金賞って言ってたな。
そんな事を思い出していると


「これなんか良いんじゃない?」


蓮が出してきたのは白いTシャツで真ん中に夕日とサーファーとヤシの木のシルエットがあしらっている。


僕は一目で気に入ったよ。


「これ……いいな……」


思わず笑っていたよ。
僕はすぐに購入を決めた。


「私も何か見よっかな」


蓮が服を物色し始めた。
それを待っている間ジョイという店員が話しかけて来た。


「HEY! YOU、RENのカレシ?」


「いいやっそうゆうわけじゃ」


「アノ子ト付き合うト苦労スルゼー」


「それってどうゆう……」


「アノ子ね、心斎橋で歌を歌っていたストリートミュージシャンなんだゼ。
ファンも多イしな。
ダカラRENを泣かせたら……」


ジョイは首を掻っ切る仕草をした。
僕は怖くなって蓮を連れて外に出た。


「マイドアリー」


僕は小走りで外に出て一息ついた時蓮が


「竜司君……手……」


僕は思わず蓮の手を握っていた。


「わわっ! ……ゴメン……」


僕はすぐに手を放した。
蓮はそっぽを向いて赤面していた。
僕も赤面した。


「あ、このTシャツありがとうね」


僕は空気を変える為に話題を反らした。


「気に入ってくれて嬉しいわ、じゃあ次はボトムね」


次の店はもうイメージしてたのがあったらしく、すぐに選んだ。
いい感じのグレーのダメージジーンズだ。
値段一万円で結構高い。
僕が躊躇していると


「私に任せて」


奥に行った蓮は数分して戻って来た。


「ハイ竜司君、七千円で良いってさ」


何したの?って純粋に思ったよ。
そしたら蓮はあっけらかんと


「値切り交渉したのよ」


ってさ。
たくましいなって思ったよ。
最後、三店目で薄緑の七分袖のジャケットを購入。


そして僕らは三角公園を目指した。
途中ルンルとも合流した。
三角公園に着くと僕は手で顔を押さえ伏せた。
ガレアがキラキラした目でたこ焼き屋を見学している。


伊賀流 アメ村店


看板にはそう書いてあった。


「もうガレアは……蓮、待っててちょっと行ってくるから」


ガレアの元に辿り着いたら


【なあなあ竜司! 何だこれ! クルクルコロコロ回してるぞ!】


「これはたこ焼きって言う食べ物だよ」


【たこ焼き! 焼いてんのか!】


ガレアは当然の事を聞く。
すると僕の鼻を香ばしいソースの焦げた匂いが鼻をくすぐる。
僕は生唾を呑みこんだ。


【クンクン……いい匂い……竜司! これ食いたい!】


そうゆうと思って僕はすでに財布を出していた。
僕も食べたかったしね。


「えーとじゃあ二……」


【三つ!!】


ガレアはニコニコしている。
僕はため息をつきオーダーを変更した。
蓮とルンルに買ってやろうと思った。


「すいません、たこ焼き六つ下さい」


「へいよっソースマヨでいいかいっ!?」


「はい」


僕は五つ袋に入れ、一つをガレアに差し出した。


【何だこれ!? 美味いぞ! ……でも中のグニュグニュいらね】


ガレアはプッと何かを吐き出した。蛸だ。
それじゃあメリケン粉焼きだろうと思ったよ。
戻ってきたら蓮の大声が聞こえてきた。


「ちょっと止めてよ! 放して!」


二人の男と相対する蓮。
男が腕を掴んでいる。
一人は金髪で小太りの男。
腕を掴んでいるもう一人はそこそこ背が高い赤髪のセンター分けだ。


「ええやんけー、俺らと遊ぼうや」


「嫌だって言ってんのよ。しつこいのよ!」


「そんな事言わんとー後で俺らとエエ事しよーなー」


男が蓮ににじり寄って来た。
僕はヤバいと思ったね。
すぐに蓮の側に戻って間に入った。


「ちょっと止めてもらえませんか?」


「なんやお前!? かっこつけてんなよ! どけや!」


僕は蓮を掴んでる手を思い切り握ってやった。
筋トレの成果がここで出たと思ったよ。


「いてててて! やめろ! 放せ!」


蓮の手を放したのを確認し、僕は手を放した。


「もうええわ。そんなブス知らんわい!」


ええと、ここで出ちゃったんだよね……頭に血が上る性格が。
言い終わった後僕は言った男の顔面を思い切り殴っていたよ。
センター分けが勢いよく吹っ飛んだ。
でも口を拭っただけでまだ起きてくる雰囲気だ。


「いってぇーー何すんねん!」


起き上がってきそうだったのでまた顔面に前蹴りを入れた。
完全に伸びてしまったみたいだ。
後は小太りの男だ。そちらを睨んだら


「ひっ」


完全に戦意喪失していた。
そしたらその男が僕の後ろに目をやり


「あっ! 鮫島さめじまさん!」


僕もその声に反応して後ろを振り返る。


まず黄色いTシャツに顔がぶつかった。
離れて上を見上げると男が僕を見下ろしている。
金髪のリーゼントでライダースを着こなし、グラサンをかけている。
それ以上に漂ってくる暴力の空気はなんだ。
僕は本能的に間合いを広げた。


「何やワラシ? やるんか?」


鮫島さめじまさん! こいつが急に殴って来たんですよ」


「ほぉーほいでアイツはのびとるんか?
ワラシィ、急に人様の顏を殴ったらあかんわなあ」


この男の迫力に気圧されそうになったが深呼吸して言ってやった。


「そちらの二人が僕の連れを強引に連れて行こうとしだんです。
そして連れを侮辱した。だから殴ったんだ」


「なるほど……ウソは言ってへんようやな。
となると悪いのは……おぉーい……お前ェ!」


「ひえっ!」


小太りの男が顔面蒼白だ。後ずさりしている。
逃げようとしているのだ。
それを逃がさず腹にボディーブロー。
服を着てても腹が波打ったのが解ったよ。


「おっぱぁぁぁ……」


顏から唾液やら涙やら鼻水やら出る液体全てを流し、前のめりに倒れた。
しかしその男は暴力をやめない。
倒れている腹をずっと蹴っていた。


「アホがぁ! ボケがぁ! 俺に恥をかかせよって……」


「ちょっと! もういいですよ!」


僕はたまらず制止した。


「ワラシィ、口出しすんなや……これはしつけなんや……ってな!」


言い終わり際にもう一発蹴った。


「これ以上やると死んでしまいますよ!」


「ほほぅ~ワラシィ、この俺に口答えすんのか?……
っとあの竜、お前んとこのか?」


「だったら?」


その男は笑い出した。


「はははっ!そうかそうか。
なら、自己紹介せなあかんな、俺はげん鮫島元さめじまげんや! 一七歳 竜河岸たつがしや!」


皇竜司すめらぎりゅうじ 一四歳 竜河岸たつがしです」


(お巡りさん! あそこです!)


「おっと、マッポがきよったな。
じゃあ、俺は逃げるで。すめらぎ、お前とはまた会いそうな気がするな。ほな」


ライダースを翻して元は走っていった。


###


「さあ、今日はここまで、たつ?どうした」


たつの様子がおかしい


「パパ、このサメジマってやつやっつけるの……?」


げんの話を聞いて怖がっているのか。


「さあ、どうだろうね。じゃあ続きはまた明日」


おやすみなさい……


バタン

          

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