ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第十八話 竜司と蓮

「やあ、こんばんは。昨日は蓮と出会った所までだったね」


「うん」


じゃあ、今日も始めようか。


###


ゲーセンから出る時、蓮が呼び止めた。


「待ってそう言えば忘れてた。
私の竜が二階にいるのよ」


そういって二階に上がる連。


「ルンルー?」


何だか可愛らしい名前だなあって思っていたよ。
僕とガレアも二階に上がった。
するとパズルゲームに熱中してる派手な竜が居た。


【もうっ! もうっ! 何でここにこれが落ちてくんのよっ】


そのルンルと呼ばれる派手な竜は落ち物パズルのぷるぷるをやっていた。


「ちょっとルンル、行くわよ」


【ああっ!
やめて引っ張らないで……ああっ】


あっさりゲームオーバー


【ちょっと蓮?
いくらソウルメイトでもやり過ぎじゃない?マジ卍―】


僕は立ち上がったそのルンルと呼ばれる竜を見た。
肌はこげ茶色で爪にはネイルアート。
目にアイプチとつけまつげ、いわゆるギャル竜ってわけだよ。


僕は思ったよ。
よくそんなサイズのつけまつげがあったなって。


【どーすんのー? 蓮―……って何?
カレシ? カレシ? 蓮アナタもやるじゃない】


「もうルンルったら。
竜司君とはそんなんじゃないって」


【そんな事言いつつもう名前で呼んじゃってるじゃない】


「もういいから。
外に行くわよルンル、ごめんね竜司君」


【キャーカレシっぽーい】


この時僕はやれやれといった感じで見ていたよ。
何というか人も色々、竜も色々って事だなあって思ったよ。


僕達はテラスのついている喫茶店に来た。
僕と蓮はアイスコーヒー、ガレアは持参したばかうけ、ルンルはスィーツ六種を頼んだ。


「改めて自己紹介するわ。
私は新崎蓮しんざきれん
そしてこの子がルンル 雷竜よ。よろしくね」


【ヤッホー、ルンルでぇーす。よろしくね竜司ちゃん】


「あ、こちらこそ……
僕は皇竜司すめらぎりゅうじ
そしてこっちが翼竜のガレアだよ」


ガレアはばかうけをポリポリ食べながら、黙ってじっとルンルを見ている。


【なぁーにぃ?
ガレアちゃんってばそんなに見つめられたら……アタシ濡れちゃうわ】


ルンルが大きい目でバチンとウィンクした。


【お前……オスだろ】


僕は唖然とした。
え? てことはオカマの竜?
もはや竜色々では収まらなくなってきた。
僕は恐る恐る蓮の方を見た。


「ごめん竜司君。ガレアの言ってる事正解。
ルンルはね、オカマの竜なのよ」


僕は思わず椅子から立ち上がり後ずさりした。
オカマと言う人種も物語の中だけと思っていたし、また人ならまだしも竜なんてなあ。って思ったよ。


【ちょっとちょっと連。オカマはやめてよ。ニューハーフって言ってほしいわ】


更にガレアが


【お前、本名言ってみろ……】


【なぁーにぃ、私のプライベート暴いて何する気ぃ?
いいわ教えてあげる。
私の本名はルヒャル・ン・ルルーよ】


【やっぱり!】


そういったガレアはばかうけを十個口に入れた。


【お前、ルヒャルか! あの寝坊助ルヒャル!】


「ガレア知ってるの?」


僕はたまらず聞いてみた。


【おうよ! こいつはルヒャルっていう奴で雷竜の中でも結構強いんだがとにかく寝てた。
ずっと寝てた。
どこぞの竜との決闘も寝過ごした】


「そう……」


僕はかける言葉が見つからなかったよ。
それといま改めて認識したよ竜って寝るんだなあって。


【いや、ちょっと待て! お前……前はもっとこう……ゴツクなかったか!?】


ひとの目線で見ればガレアも含め竜はみんなゴツイ。
そう思ったけどあえて突っ込まなかった。


【ヤァーネェ、ガレアちゃんったら。
あれから百年以上も経ってるのよ。メスはね、成長するのよ】


【メスじゃねぇーー!】


もう僕は我慢の限界だった。
大声を出して笑ったよ。
蓮も見ると笑っていたよ。
そしたら


(お客様、他のお客様のご迷惑になりますので……)


と怒られてしまった。
周りを見渡すと皆こっちを見ていた。
僕が向くと視線を反らしたけどね。


「す、すいません」


「じゃあ、気分変えてちょっと散歩にでも行く?」


蓮がそう言いながら伝票を持った。


「ああ、いいよ」


僕と蓮と竜二人は中之島公園と言う所を目指して歩いていた。


「でも竜司君、もっかい聞くけど何であのキャラがマイキャラなの?
あれって致命的な弱点が見つかってから使う人ほとんどいないのに」


「ああ、その情報は僕も知ってたよ。
僕があのキャラを選んだのはネットの書き込みを見たからなんだ」


「書き込み?」


「そこには散々書かれていたよ。ゴミとかカスとか落ちこぼれとかね。
それを見た時何だか他人のような気がしなくてね。
僕がこいつを強くしてやるって思って。
ごめん、気持ち悪いね」


僕は正直な自評を述べた。蓮は微笑みながら


「ううん、そんな事ない。
ステキな理由だと思うわ」


中之島公園に到着。
そこには色とりどりのバラが咲いていた。


「気持ちの良いところだね」


「そうなの私この場所大好き!」


そう言いながら笑顔を僕に向ける蓮は素敵だったよ。
バックのバラも手伝って。
僕は少し赤くなっていた。


「あとごめんね、あの大会私ズルしちゃった」


「ズル?」


「最後に竜司君が放ったスーパーアーツあったでしょ?」


「ああ、君が全部ブロッキングしたやつね。
僕のキャラはスーパーアーツが躱しにくいので有名なのに。
凄いなあ」


「あれ実はスキルを使ったの」


「スキルって竜河岸たつがしの?」


「そう、スキルを使って体の反応速度を上げたのよ。
あのスーパーアーツが躱しにくいのも知ってたし、これじゃ負けるって思ってついね……」


僕は黙って聞いていると蓮が


「やってみせようか?」


蓮は後ろから雑草を一本持ってきた。


「じゃあ、竜司君。
今から合図したらこの草を取ってみて」


蓮は草を握った手を僕に差し出した。
僕はこうゆう勝負事には負けたくないタイプだ。
絶対取ってやろうと意気込んだよ。


「いいわよ」


蓮の瞳が黄色に光っている。
結論から言うと取れなかったね。
こちらの動きを予測しているかのように蓮の動きは素早かった。
僕も色々したよ。
取らないよって雰囲気を出してみたり、フェイントを入れてみたりでも全然ダメだった。


「はぁーー! もう無理! 降参だ!」


僕は尻もちをついてしまった。


「どう? 竜司君、これが私のスキル、電流機敏エレクトリッパーよ」


「おみそれしました」


蓮は微笑んでいたが急にフラフラし出し、倒れてしまった。
僕は焦ったね。
そしたらルンルが


【やだ、この子ったら電流機敏エレクトリッパー使ったの?
この子十分ぐらい起きないわよ。
寝てるだけだから心配無いんだけどね】


「そうなんだ」


するとルンルがニヤニヤし出した。


【ちょぉっとー竜司ちゃん何してんのよ。ホラ早く!】


僕は何を言ってるのか解らなかった。


【膝枕よ! ひ・ざ・ま・く・ら!】


ルンルがまた大きい目をバチンとウィンクした。
はっきり言って可愛くない。


「ええええ!」


僕は驚いて焦って。
確かに蓮をこのまま通路に寝かせるのもアレだしとかもう頭はグチャグチャだったよ。


【ほぅら、王・子・様】


「やめてよルンル。あーもーわかったよ」


僕は蓮を担ぎ上げたいわゆるお姫様抱っこという奴だ。


【お姫様抱っこキターー!】


【竜司! 何だ! 死ぬのか!? 死ぬんだろ! お前!】


さっきまで蝶々を追っかけていたガレアがわめいてる。
これはアステバン四十二話「決着」からの引用だ。


僕はお姫様抱っこをしたままベンチに腰掛け、降ろした蓮の頭を僕の膝に置いた。
もうずっと心臓はドクドク鳴りっ放しだったよ。
女の子の顔がこんなに近くにあるなんて事今まで無かったし、蓮の青緑の髪も綺麗なんだ。


僕はちょっと手櫛で蓮の髪の毛を触ってみた。
引っかかりが全くないさらっと抜ける感触が心地よかった。
僕は何度か同じ行為をしていた。
ちょうど頭を撫でるような感じになっていた。


「ううん……ママ……」


蓮の寝言を聞きながら凛子さんの最後の言葉を思い出していた。


「凛子さん、引かれ合ってます」


僕は独り言をつぶやいた。
十分ほど過ぎた時、蓮が目覚めた。


「ううん……あ、竜司君……え? ええええ!」


見下ろした蓮の顔が見る見るうちに赤くなる。
蓮はガバッと飛び起きた。
そして僕に背中を向けて正座で座りだした。
ベンチなのに。


「りりっ竜司君っ! 何してるのっ!?」


背中から話す連。
僕も慌てて


「しょうがなかったんだ!
蓮が急に倒れるし、通路だから邪魔になるって思ってたら!
そしたらルンルが膝枕しろって騒ぎだして……」


「ルンルーー!!」


ルンルがドキッとしてたよ。


【あ、あらん、蓮おはよ。チャオ】


「チャオじゃないわよっ! どうゆう事か説明しなさいっ!」


【だぁーってぇ? 蓮てば奥手じゃない?
だからアタシがサポートしてあげなきゃって。
お姫様抱っこして膝枕しろってねぇ。ううん、我ながらグッジョブ】


親指を立ててサムズアップをするルンル。
正確にはお姫様抱っこは自発的にやったんだけど、あえてそこには触れなかった。
蓮の顔ったらそれはもう茹でた蛸のようにみるみる赤くなっていったよ。


「ルンルーーーー!!!」


と中之島公園に蓮の大声が響きましたとさ。


###


「さあ、今日はこれでおしまい」


「ねーパパ、お姫様抱っこしろってルンル言ってないよー」


「そうだね、正確にはお姫様抱っこは自発的にやったからね」


「なんでー?」


「その方が面白いって思ったからだよ」


この続きはまた明日話そうか……おやすみ……


バタン

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