ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第十七話 ガレアゲーセンに行く

「やあ、こんばんは、今日は帰ってきたら泥だらけだったね」


「うん、砂場でプロレスごっこ」


「怪我はしていないかい?」


「うん、だってパパの子だもん」


そう言うたつの気持ちが嬉しかったよ


「そう、それは良かった」


じゃあ話を始めようか。
昨日は誘拐事件の所までだったね。


###


そう、その日は快晴で目覚めのいい朝だった。
下に降りると凛子さんが朝食を作ってくれていた。


「おはよう竜司君」


「おはようございます」


決まりの挨拶を済ませると僕はガレアを起こしに行った。
ガレアはカンナの部屋で寝ている。
一応女の子だしね。
僕はノックしたよ。


「カンナちゃん? 朝だよ」


「はぁ~い」


弱弱しい声で返事は聞こえたもののなかなか出てこない。


「カンナちゃん? 入るよ?」


入るとカンナちゃんがガレアの下顎にぶら下がっていた。
そしてガレアはふんふん首を振っている。
どうしてこうなったって思ったよ。


「カンナちゃん、ガレア起きて」


「あ~竜司にーちゃん、おふぁよ~ふぁぁ~」


【竜司うっす】


竜は寝覚めがいいらしい。


「ガレアちょっと待って今カンナちゃんを降ろすから」


【いや、このままでいい】


朝っぱらからデレてやがる。
純粋にそう思ったよ。
しょうがないからそのまま下まで案内したよ。


「凛子さーん、二人連れてきましたよー」


「ありがとう竜司君。ってあらあら」


ガレアの下顎にへばりついている娘を見てしょうがないと笑っていたよ。
食卓を囲んで朝食を頂いた。


「竜司君、今日はいつ出発するの?」


「昼前にはここを出ようかと」


「えー! 竜司にーちゃんどっかいくのー?」


「そうだよカンナちゃん、そろそろ行かないと」


「やだやだ! もっと遊ぶのー!」


【やだやだ、カンナと離れるのやだ!】


「ガレアは黙ってて」


「カンナ、わがままを言ったら竜司君が困ってしまうわよ」


「わかった……じゃあ竜司にーちゃんまた会いに来てね!」


「ああ、絶対また来るよ」


朝食を終え、出発まで魔力制御の練習だ。
まだまだ上手く行かない。
岩以外のものも破壊してクレーターが出来てしまう。


【破壊のイメージは具体的であればあるほど良いものです】


「そうは言ってもなあ……」


僕自身破壊するのが好きと言うわけでもそんな動画を見ていたわけでも無い。
イメージするのに四苦八苦だったよ。
そんなこんなですぐに出発の時間だ。
身支度を終え、僕は凛子さんの家から出た。


「忘れ物は無い?」


「大丈夫です」


「何かあったら私の携帯に連絡して」


「わかりました」


「竜司にーちゃん、ガレアちゃん、行っちゃうの……?」


「ごめんね」


僕は気まずくなった。
するとガレアが


【なあなあ竜司。
これって第四十五話「夕日の別れ」みたいじゃね?】


ホントガレアの頭の中はアステバンとばかうけしか無いのか。
そう思ったよ。


「じゃあーーねーーまたねーー!」


カンナが大きく手を振る。
見えなくなるまで。
僕はこの経験をどう活かすのだろう。
そんな事を考えてる内に駅に着いた。


【おっ? 電サだな。
ばかうけ買ってくれよう】


「電サじゃなくて電車。ばかうけはまた買ってやるから」


今度はスムーズに切符を買った僕らは電車に乗り込んだ。
もう飽きたのかガレアは凄く静かだったよ。
静かにばかうけを食べていた。


(大阪梅田終点です)


そう言えば凛子さんが出る時にこんな事を言っていた。


「最後に竜司君。
竜河岸たつがし竜河岸たつがし同士引かれ合うみたいよ。
この事を覚えておいて」


「引かれ合うですか?」


「ちゃんとした根拠があるわけじゃ無いけどね」


「わかりました」


そういえばそうだなと思いながら駅に降りた僕は驚いた。
人、人、人、周りに人だらけだ。


そう言えば僕は子供の頃から遠出と言うのをした事が無かった。
横浜時代の事はよく覚えていないし、加古川に住むようになって引き籠もったしね。


【すっげぇな! どこもかしこも人だぜ!】


「そうだね……ガレア」


しかし案外そうでもなく人の中にちらほら竜も混じっていた。
これが引かれ合うって事なのかな?
そんな事を思いながらとりあえず地上に出た。


外も凄かったよ。
とにかく建物が大きい。


【なあなあ! 竜司! でかいぞ! 赤の王ぐらいのサイズばかりだ!】


「そうだねガレア」


赤の王には触れず、僕も建物の大きさにびっくりしていた。


【なあなあ、あんなデカい建物どうすんだ?】


「ガレア、あれは百貨店って言って品物がいっぱい売っているんだよ」


【コンビニよりも?】


「そうコンビニよりももっとたくさんの品物が置いてあるんだよ」


【へえ、人間は自分で物質形成も出来ないのか。
やっぱ人間て不完全ケタケタ】


自分もばかうけ買ってもらってるくせに。
そう思ったよ。
ここで僕は気づいたんだ。
僕には明確な旅の目的が無い。
元々家が嫌で家出して来たからどこでも良かったのだ。


とりあえず僕は歩く事にした。
すると右に電飾の派手な店が飛び込んできた。


ゲームセンター モンテカルロ


ゲームかー久しくやって無いなあ。
ふいにガレアを見ると


【なあなあここ何だ?】


「これはゲームセンターって言って遊ぶ所だよ」


【何か綺麗だ……入ってみたい】


ガレアがポーっと店を見つめている
僕もゲームがしたかったしちょうど良いと思って中に入った。
入った途端中から歓声が聞こえた。


【何だ何だ!?】


見ると大会をやっている様子だった。
看板には


ゲーム「ストリートグラップラーⅣ」大会
飛び入り自由!
最後の一人になるのは君だっ!


有名な格闘ゲームの大会だった。
壇上で今対戦中だ。
右が男性、高校生ぐらいだろうか。
左が女の子だ、僕と同い年ぐらいの。


僕もこのゲームはそこそこ上手くてオンラインランキング五十番圏内だ。


しかしその僕が見ても思う。
この子、上手いってね。
男子高校生は押されっぱなしで、最後


「アナタ、弱いわね……」


と言われ負けてしまった。


(さあ、ほかに挑戦者は居ないかー!)


司会者が煽る。


(クイーンには勝てねえって)


そんな声が聞こえる中僕は手を上げた。


(おおっと! 挑戦者現る! おっと竜も……君は竜河岸たつがしかい?)


「はい」


(てめぇら! 聞いたか! 竜河岸たつがしの少年がクイーンに挑戦だー!)


ウォォォ!


会場がヒートアップ。


(じゃあいいかい?
二本先取で勝利だ!栄光を勝ち取るのはどっちだ!?
レディー……GO―!)


僕は使い慣れているキャラを選んだ。
すると向かいから


「アナタ正気? そのキャラは致命的な弱点があるって知らないの?」


「知ってるよ」


僕も勝算無しで挑んでいるわけじゃ無い。


「まあ、いいわ。私は手加減しないわよ」


「どうぞ」


試合が始まると僕のキャラはすぐに押され始めた。
弱点を突く攻撃を彼女が繰り返したからだ。
でもそれは作戦の内だった。


KO!


(クイーン一本!)


「もう降参しなさい」


「しないよ」


二回戦スタート。
相手がまた弱点を突く攻撃をして来た。
次は違う。
僕はカウンターを相手に入れ始めた。
何回も。


「えっ? うそっ……」


僕も攻撃を食らったが全然ゲージは余っていた。
僕の勝利。


(挑戦者一本!)


(この挑戦者やべぇぞ!)


そんな声が聞こえてきた。
僕は快感だった。


最終戦。
ここは今まで貯めたスーパーアーツでごり押しだ。
このキャラが唯一公式で認められている特性はスーパーアーツが躱しんいくいんだ。
相手のゲージがみるみる減っていく。



最後とどめと思って放ったスーパーアーツを全てブロッキングしてきた。
ブロッキングっていうのは攻撃を食らう瞬間防御を解除することで発生するダメージ無しの防御法。
タイミングがシビアなため狙う人はいないけどね。


僕は焦ったよ。
会場もどよめいた。


(すっげぇー! 全部ブロッキングだぜ!)


そこから多連コンボを叩き込まれ最後相手のスーパーアーツでとどめ。
僕は負けたってわけさ。


(クイーンの勝利! さすがやはり我らのクイーンは強かった!)


結局そんな試合を見せられて次に挑む者なんて無く試合はクイーンの優勝。


「ごめんガレア負けちゃったよ」


会場の熱も冷めきった頃。
そのクイーンが話しかけて来た。



「あなた、凄いわね。あんな出がらしキャラであそこまで戦うなんて」


「カウンターの取り方は凄く練習したからね。
あとカウンターは倍加ダメージが発生するからね」


「なるほど……これはあのキャラの印象を改めた方がいいわね」


何やら難しい顔をしている。


「あなたとはまた対戦したいな。
お願いできる?
あたしは新崎蓮しんざきれん十四歳、竜河岸たつがしよ」


「僕は皇竜司すめらぎりゅうじ十四歳、竜河岸たつがしです」


「同い年? 嬉しいな。同い年の竜河岸たつがしにあうのはじめてなの」


蓮はショートボブで髪の色は緑と青が混ざったような色をしていた。
髪留めを使って前髪をまとめていた。
瞳も髪と同じ色で青緑だった。


「とりあえずここを出ない? あなたの話を聞きたいわ」


僕は蓮と一緒に近くの喫茶店へ向かう事となった。


###


「さあ、きょうはここまで」


「パパ、凄いねクイーンて。
僕ブロッキングなんて全然出来ない」


家にもストリートグラップラーはある。
たつは一生懸命練習している。


「ここからまた色々起きるからね」


じゃあ、おやすみなさい……また明日


バタン

          

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