ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第七話 ガレア幼女に萌える

「やあ今日も話を続けようか。
えっと、そうだそうだ野球がしたいとガレアが言い出した所からか」


「うん!」


じゃあ、始めようか


###


まず、どうしようかと迷ったよ。
知らない土地だしね。


駅前のマクレナレヨで遅めの昼食を取った僕が向かった先は甲子園警察だ。


道案内の基本だからね。
兄の知り合いに会わないかドキドキしながら警察に出向いた僕。
ガレアには外で待っててもらってた。


地域振興課に聞くと


「入れてくれるかはわからんが、海岸沿いの公園に球場あるで。
ちょうど今日は商店街の草野球大会やってるはずやで」


との事。


海岸線まで二十分かかる。
その間僕はずっと竜儀の式をガレアとするかどうか考えてた。
ガレアは承知するだろうか。
ガレアは何で式をやらなかったのか。
とかね。


ガレアは着くまでの間ずっと色々なものにわーきゃー言ってた。
生返事しか出来なかったのは申し訳なかったよ。


僕は長く考え込むのが苦手で結論が出ない場合はとりあえず置いておくんだ。
僕らは球場に着いた。
人の気配はするが、歓声等は全く聞こえない。


【何だちっこい所だなあ】


愚痴を尻目に中に入り、とりあえずガレアを座らせた。


「じゃあ、ガレア、僕がやらしてもらえるか聞いてくるからここで待ってて」


【吉報を期待している!】


ガレアはビシッと敬礼で見送った。
これってアステバンの敵側でよく使う言葉なんだ。
球場内に入って交渉しようとした矢先


「あなた竜河岸たつがしなの?」


誰かが話しかけてきた。


「え?」


声のした方を見ると、黒髪の女性がこちらを見ていた。
日傘に麦わら帽に白いワンピース。
夏の日に映えてて凄く綺麗な人だと思ったよ。


「ん?」


「あ……いえ、そうですが何か……」


「見てたらあそこの竜と楽しそうな動きしてたから、おばさん声かけちゃった。
クスクス」


笑い方一つにしても上品だ。
ボーっと見とれていたら


「もしかして迷惑だった?」


って更に声をかけてきた。
僕はぶんぶん首を横に振るのが精いっぱいだった。


「ちょっとあの竜と話してみたいわ。
いいかしら?」


「あ、はい……どうぞ……」


ここでおかしいと思うべきだったんだ。
普通の人はガレアと話す事なんか出来ないのに。
僕はその人の美しさに正常な判断が出来なかったんだ。
その女性を連れてガレアの元へ戻った。


【あ、どうだった? 竜司。
って女連れって! 結婚! 結婚!】


「ちょっとガレア……やめてよ……そんなんじゃ無いよ」


「そうよ、私みたいなおばさんじゃこの子が可哀想よ」


【おばさん……ああ、年食ってるって事か……】


「年を食ってるって言っても三十九歳だけどね」


【で、何? このおばさん】


「さっきそこで声かけられたんだ……」


【あ、知ってるぜ! 逆リンだろ? 逆リン】


「逆ナンじゃないかな……?」


僕の返答を聞くと女性が笑いだした。


「クスクス……楽しいわねあなた達。
それに凄く仲良さそう」


【おうよ! 俺と竜司はマタタビだ!】


「……それってマブダチ……」


【そうそれ!】


その時のガレアのドヤ顔ったら無かったよ。
その女性もついに声を上げて笑った。


「アッハッハッハ、こんなに笑ったの久しぶりだわ。
ねえ私とも友達になってくれないかしら?」


「えっ? あ、はい……あ、でもまだ旅の途中……携帯番号ぐらいなら……」


「それでいいわよ」


僕は携帯電話を取り出し赤外線通信をしたよ。
引きこもりだったから電話帳に兄以外で載るのはこの人が初めてだったよ。


警戒しなかったのって?
それだけその人が美人で僕も健康男子だったってことさ。
君にはまだまだ早いかもね。


改めて僕らは自己紹介した。


「私は蘭堂らんどう凛子りんこ
竜河岸たつがしよ。商店街で開業医をしているわ」


名が示す通り凛と立つその姿は素敵の一言で。
僕はこの時、熟女好きなのかな? って勘違いしたぐらいだよ。
思春期の健康男子なら当然なんだけどね。


「僕はすめらぎ竜司りゅうじ
十四歳。竜河岸たつがしです。
今は旅の途中です……」


「いいわね若いってエネルギーが有り余ってて、素敵だと思うわ」


「……はい」


本当は違うんだけど、とりあえず同意した。
ここで僕から話しかけたんだ。
今考えたら何でこんな事を聞いたのか?
何の確認なのか。


「……今日はお一人ですか……?」


凛子りんこさんは含みのある笑い方をして


「あらー、意外に攻めてくるじゃない。
お一人ではいけませんか? 竜司君?」


「いえ、そんなつもりでは……」


「でも残念。
今日は一人じゃないのよ。
今日は……」


「ママーー!」


答える前に凛子りんこさんの後ろから大きい声が聞こえた。


「ママママ! すっごいよ! ここすっごいでっかいの!」


凛子りんこさんの陰から出てきたのは赤毛のツインテールの小さな女の子だった。
大きな目をキラキラさせながら、大きく身振り手振りで説明していたよ。
何だろうね、好奇心が回転するとみんな同じ目になるんだなあと思ったよ。


「あの娘を見てごらんガレア。
君と同じ目をしているよ」


ちょっとからかい気味に言ってやったんだ。


【何おう! 俺とこのハナクソが一緒なわけあるか!】


そしたら、その声を聞いたその娘が話しかけて来たんだ。


「お兄ちゃん、だあれ?」


「えっと……」


戸惑っている僕に凛子りんこさんから援護が入った。


「この人は竜司さん。
さっきママとお友達になったのよ。
そしてその竜はガレアよ。
ほら、カンナご挨拶なさい」


僕とガレアをじっと見たカンナは頭を下げた。


「こんにちは、私らんどうカンナって言います。
たつがしです。
私とも仲良くしてください」


後ろで凛子さんが優しい拍手をしながら


「はい、よくできました」


「ねえねえ、竜司お兄ちゃん」


「どうしたの?」


「あそこまで競争しない?」


カンナは観客席の端を指さした。


「別にいいけど」


「ホント!? ありがとう。
それじゃあ位置についてー……」


突然だとは思ったが僕もやるからには負けたくなかった。
考えていたのは段とかベンチが邪魔で走りにくいなって事ぐらいだ。


「どん!」


カンナと僕は走り出した。するとすぐに


「にゃー!」


変な声が聞こえた。
後ろを振り返ると、カンナがこけていた。
何も無い所で


「負けないもん! ……にゃー!」


僕のすぐ後ろぐらいでまたこけた。
ただの平地で。


僕はこのままゴールしたらダメな様な気になってその場にに立っていた。
僕を追い越したカンナが一生懸命走る。


「にゃー」


こける。
一生懸命走る。


「にゃー」


こける。


何度か繰り返してようやくゴール。
こっちに歩いて戻ってくると体中砂利まみれと膝を擦りむいたカンナ。
顔は半べそをかいている。
僕は手をつないで戻った。
下の方でグスグス言ってたよ。


「おかえりカンナ。どうだった?」


凛子りんこさんのその言葉を聞くや否やぱあっと明るい笑顔を見せて


「大勝利!」


とVサインを見せた。
すると凛子りんこさんが耳打ちで


「この娘、転び方可愛いでしょ?
走ると何も無い所でよく転ぶのよ。
私は立場上助けないといけないんだけど可愛くて忘れちゃうのよねえ」


「ガレアー負けちゃったよ。ガレア……?」


僕を無視してガレアが黙っている。
ガレアの様子が変だ。
何か心なしか頬が赤い。


「ガレア? ガレアさーーん?」


【ななな、何だよ竜司。
負けたのか? ったくしょうがねえなあ】


目の前で手を交差させてようやく気付いた。
僕はこのガレアの状態に見覚えがあった。
アステバンの劇中で「~ナリよ」が口癖の可愛い女の子が出てきた時だ。
二,三話しか出て来ないゲストキャラなのにその回だけは何度も見たことを思い出した。
その時も今も僕はこう言ったんだ。


「ガレアさん、お前……萌えてるだろ」


【ばばば! 馬鹿な事を言ってんじゃねえし!
別に? 俺は? あのこけ方が萌えるとか全然思ってねーし】


僕はため息交じりにこう思った。
こいつ萌えてやがる。


###


「さあ、今日はここまで、ちょっと長く話しちゃったね。
僕も疲れたよ」


「ねーねー萌えって何?」


「うーん、可愛いものを見た時に出る反応? 上手く言葉に出来ないなあ」


じゃあ、この続きはまた明日……おやすみ


バタン

          

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