ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第一話 竜司とガレア

「やあ、こんばんわ」


「あ、パパ、どうしたの?」


「いや、 たつがどうしてるかと思ってね」


たつも今年で十二歳。
僕が十二の頃と言えばあの忌まわしき事件があった頃だ。


僕はいい機会だと思うので たつに教えてやろうと思う。


 たつ……今からパパとお話ししよう」


「いいよー、どんなお話?」


「パパが十四歳の頃の一人の竜との出会いと別れのお話さ」


「竜ってあのゲームとかで出てくる奴?」


「そうだよ」


「嘘くせー、でも興味ある!」


 たつの目は輝いている。僕は話し始めた。


###


僕は落ちこぼれだ……


そんな事を考え始めたのは、小六の頃からだ。


その頃に僕が引き起こした「ある事件」が決定打となって僕は自分に自信が無くなってしまった。
それまでは家の名に恥じない立派な人間になるものだと思っていた。
しかし現実は上手く行かないもので、一度の失敗で僕は人生をドロップアウトした。


これから話す内容は僕と一匹のドラゴンとの出会いと別れまでの話。
長いけど是非聞いて欲しい。


悶々としながら僕はコンビニから帰り。
当分の食料を袋いっぱいに詰め込んでいた。
暑い夏だったのをよく覚えているよ。


人生をドロップアウトし、見事に引き籠もった僕。
毎日特撮を見るか、筋トレしかしていなかった。
筋トレを始めたのは祖父の最後の言葉”落ちこぼれ”がきっかけだった。
その頃は自分が落ちこぼれじゃ無いって思いたかったんだろうね。


その事件直後は毎晩悪夢を見て、それから逃げるように筋トレをしての繰り返しだったなあ。
悪夢を見なくなった後は惰性と言うか習慣で続けていたよ。


特撮は新旧ほとんど見た。
学校も行かないから、ネットでダウンロードして見ての繰り返しだった。
いつも辛い日々だったけど、この日は幾分か気持ちは晴れやかだった。
特撮の「宇宙警察アステバン」の新作が公開され、そのダウンロードをセットして外出したからだ。


帰宅したらダウンロードは完了している。
早速帰って見よう。
馬鹿みたいな話だけど僕の頭の中はソレしか無かったよ。
こうゆうのって準備してる時が楽しいんだよね。


アステバン上映開始。


CGの多い昨今、頑固に特効にこだわった作風が好きでシリーズを何回も見ていた。
話もラストに差し掛かった所で脇から声が聞こえた。


【アステバンじゃん】


その声が人ではないことはすぐに解った。
竜の言葉って耳から入るというよりは、脳に直接響くって感じなんだ。


声のした方を見ると一人の竜が肩肘ついて窓に寄りかかっていた。
竜なんてこのご時世には珍しくない。
しかもその頃の僕は特撮以外に全く興味を抱かなかったんだ。


【アステバンいいよな? 色々ありもので表現してるってゆーの?
アステクラッシュのガラス割れる効果なんかサイコー】


最初僕はよく喋る奴だなとぐらいしか思わなかった。


【てかこれって新作? マジで!? 出たの? 見せて見せて!】


その竜はキラキラした目で言った。
それを見た僕が言った一言が「じゃあ一緒に見る?」だった。


今となっては何で受け入れたかはわからないよ。
でもその時話せる人がほしかったのかもね。
人って言っても竜だけど。


【マジで!? いいの?
じゃあちょっとサイズ小さくなるわ】


温かい光に包まれたその竜は二回りぐらい小さくなって僕の部屋に入ってきた。


君からしたら不思議な光景だろうね。
竜と人が並んで特撮を見てるって絵は。


その竜の名前はガレア。
本名はガ・レルルー・アだそうだが呼びにくいからガレアって呼んでくれって言ってた。


ガレアはとにかくうるさい。上映中もずっとわーきゃー言ってた。
僕の家が大きくて部屋が離れていないと近所迷惑この上ない。


例えば……


【何だよこの敵! うっとおしいなあ!】
【この地球人良い人過ぎ!】
【アステーー! クラーーッシュ!】


とまあ、こんな感じで。
でもその頃の僕はその状況が楽しくて笑ってたんだ。
他と接して笑ったのなんてホント久しぶりで凄く嬉しかったんだと思う。
新作を見終わって一息ついていた。


ちなみにガレアはお菓子のばかうけがお気に入りでストック全部食べてしまっていた。


【あー面白かったーやっぱサイコーだよなアステバン。
不完全な人間が無い知恵絞って作ったって感じがよー】


僕は竜に悪気が無いことは知っていたから別にその発言はスルーした。


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「さあ、今日の話はここまで」


「パパ、引き籠もりだったのダッセー」


そんなたつに微笑みながら


「そうだね、僕も自分が嫌いだったよ」


じゃあ、この話の続きはまた明日……



バタン

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