No title

(´・ω・`)

62.決勝戦当日

 雲一つない空の下、微かに吹く熱風の中で決勝戦は行われた。
会場は、予選をした広場に半径10mほどの土台を設けたもので、ルールに「場外に出た者も失格」というのが追加された。

既に会場に立たされた俺たち選手は、程よい緊張感の中で距離を保ったまま立ち尽くしていた。
そして進行役による選手の紹介が始まる。

「さぁさぁ皆様お待たせしましたぁ!早速だが今大会の決勝戦で闘う選手の紹介といこうかぁぁ!!!」

予選の比ではない数の観客が、一斉に声を上げる。
凄い声量だな…耳が変な感じだ。

「まずはコイツだぁ!!初出場にして決勝戦進出を果たした謎のダークホース!うちの騎士様方にも負けないその力をもっと見せてくれぇ!!エントリーナンバー78!アダラァァァ!!」

一際大きな歓声の中、彼は薄く微笑んで観客席に礼をした。
ていうか堂々と自国の騎士様方が負けた発言したけどいいのか…?

「続いてこの人!前大会準優勝者にしてウルクラグナ騎士団のNo.2!去年は優勝まで一歩及ばなかったが今年は更にパワーアップして再挑戦だぁ!!副団長ブラギィィィ!!」

え、ブラギさんて副団長だったんだ。
そっかNo.2か…そうだよな強いもんなブラギさん…。
というか歓声の中に明らかに黄色い歓声が混じってる。大人気だなぁウルクラグナ騎士団。

「そしてこいつだぁ!!みんな説明なんてしなくても知ってるよなぁ!?史上最年少の決勝戦進出者にして今やウルクラグナの時の人!エントリーナンバー23!レェェイスゥゥゥ!!」

その説明で起こった歓声はもはや笑い声だった。
俺は苦笑を浮かべ、四方向に礼を繰り返す。
笑いたくなるのも分かるけど、結構な人数に笑われるのってなんか複雑な気持ち…。

「最後はこの人だぁ!激戦続きの予選を突破した3人を王座にて待つ最強の女騎士!今年はこの人を越えられる奴が現れるのかぁ!?我らがウルクラグナ騎士団団長ルゥゥミスゥゥゥ!!」

彼女は困ったような笑顔で礼をしていた。
観客席からは野太い声から黄色い声まで様々な歓声が上がっている。
老若男女問わないんだなぁこの人気…。

「もう言葉はいらねぇよなぁ!?じゃあいくぜぇ!?」

あ、もう始まるのね?
相変わらず必要最低限の解説だね?

各々に武器を構えたのを確認し、進行役が会場から降りる。
大きな深呼吸の後、彼が試合開始の合図を出そうとした………その時だった。


ゴォォォォォォォォォォオオオ!!!


鼓膜が破れそうな程の轟音が脳を揺さぶる。
一体何が起きた…!?

だが真相が知れるまで時間はそうかからなかった。
入国審査を受けた辺りの場所から、叫び声や悲鳴が聞こえてきたからだ。
奇襲か?
でもあの強固な壁をそう容易く壊せるもんなのか?

危険を感知した観客達が騒ぎ出す。
どこにあるかも分からない安全な場所を求め、ただでさえ多い人の大群が一斉に蠢きだした。
決勝戦の会場は、瞬く間に鳴り止まない喧騒に包まれた。

「冒険」の人気作品

コメント

コメントを書く