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(´・ω・`)

59.恐怖の微笑み

「レイスさんには助けてもらった恩もありますし、あまりこういったことはしたくないのですけれど」
「はい…」

決闘大会2日目が終わった後、ルミスに呼び出されて城に来ていた。
今は静かに微笑んでいるルミスの前で、正座のまま俯いている。
怖い。怒った最強の女騎士様怖い。

「闘いの最中に声援を送るのは大いに結構です」
「はい…」
「しかし、レイスさんもご存知でしょうが戦闘には空気や流れといったものが存在します」
「はい…」
「それで勝敗が決まるなんてざらにありますよね」
「そう…ですね…」
「レイスさんの今日の行動は間違いなく戦闘の空気を害すものでした」
「仰る通りで…」

なんか勢いで叫んでたけど、今あの時の自分思いきりぶん殴りたい。
これからはもう少し後先考えて行動しよう。うん、それがいい。

「ですが……」

完全KOにまで追い詰めた怒涛の正論パンチが不意に止み、俺は下を向いていた顔を彼女の方へ向ける。
そこには聖母とも言えそうな、優しい顔をした女性が佇んでいた。

「ニビくん個人を応援してくださってありがとうございました」
「え?」

いやまぁあれは誰が見てもニビ個人に対する声援だったけど、何故ルミスがそれについて礼を?
困ったような顔をしながら、彼女は言葉を並べていく。

「レイスさんなら知っているでしょうが、ニビくんはデイディスで酷い環境の中生きていました。私達もウルクラグナに連れてこようと何度か声をかけてはみたんですけど、「俺は余所者だから」と来てくれなかったんです」
「へぇ…」

まぁあんな状態なら人間不信になっても仕方ないだろう。
それに、ニビの性格から考えても十分言いそうなことだ。

「ですから、ニビくんは虐げられることはあっても誰かに応援される事はなかったんです」
(あぁなるほど…)

一人で勝手に腑に落ちる。
彼女は続ける。

「少なくとも貴方の声援は必要以上にニビくんを元気づけた筈なんです。だから、ありがとうございました」

彼女が頭を下げる。
全く……フォルセティアの時もそうだが少々人が良すぎるんじゃないかこの人?

「あいつがどう受け止めたかはさておき、確かに俺の行動は褒められたもんじゃなかった。以後気を付けるよ。すみませんでした!」

俺は立ち上がってルミス以上に頭を下げる。
それを見た彼女はどこか可笑しそうに笑った。

「では、話はこれだけです。明日の大会も頑張って下さい!」
「ルミス様と同じ土俵に立てるよう精進致します」
「ちょっ、やめて下さいレイスさんっ!私、レイスさんが思っているほど強くないんですから!」

……謙虚だなぁ。
そもそも、強くなかったら騎士団長なんて出来てないだろうに…。
剣技といい彼女の人格といい、見習いたいものだ。

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