No title

(´・ω・`)

43.大人気ルミス様

 国王に言われた通り、俺たちはルミスの案内で用意された宿に向かっている。
所狭しと並ぶ店とそれに連なる行列の数々。
人混みは苦手だったはずだが、最近はそうでもなくなった。
旅の成果だな。

「そういえばフォルセティア様に何か聞かなくてよかったんですか?」
「ん?あぁ。そういえば忘れてたのさっき思い出した」
「え!じゃあ今からでも戻りますか?私、フォルセティア様にお話してきます!!」

ただでさえよく通る声を大音量で出したため、人混みはルミスへと視線を向けた。
最強と謳われる女騎士様はそれなりに顔も知られているらしく、若干のざわめきが生じていた。

「あれってまさかルミス様?」
「ほんとだ!ルミス様だ!」
「いい機会だし握手してもらわない?」
「うん!」

「あー…えっと…」

なんたる扱い…。
ここの騎士は国民の尊敬対象と聞いてはいたが、これじゃあまるでアイドルじゃないか。

「ニビ。ちょっとカイ引きずるの交代しよう」
「…?おう」

なんの疑問も持たずカイを受け取る彼に「許せ」と言って、今度はルミスに声をかける。
ニビに「何を許すんだ?」と聞かれているが、これに答えたら意味がない。
無視でいこう。

「ルミスさんちょっと我慢して下さいね」
「え?……ちょっ、うわっ!?」

国民の要求を無視できない優しい彼女を助けるべく、俺は彼女を抱いて跳んだ。
壁を蹴り、パルクールの要領で人々の頭上を走り去る。

「ちょっ!レイスさん!?」
「とりあえず人気のないとこ行くぞー」

抗議するルミスを無視して街灯のてっぺんに着地する。
ニビの方を見てみると、「許せ」の真意に気付いた彼が信じられないというような顔をしていた。

「おいレイス!どこ行くんだよ!?」
「それ言ったら逃げる意味ねーだろ!悪いが自分で探してくれ!」
「はぁ!?」

もはや半ギレの彼に手を振り、俺はそのまま風を切る。
全身で受ける爽やかな風と、人影の代わりにどこまでも続く群青。
後ろの叫び声を振り切るように、俺はその 群青へ向かって飛び出した。

コメント

コメントを書く

「冒険」の人気作品

書籍化作品