No title

(´・ω・`)

38.騒がしさ

「ただいまー」

俺とブラギさんの会話はその一言で打ち切られた。

「おかえり。どうだニビ、勉強になることはあったか?」
「おかげさまで。お前と違って人間の範疇内の動きだったからよく勉強になった」
「そう褒めるなって」

軽めの言い合いを終え、まだ何か言いたげだったニビから離れてルミスの元へ向かう。
すると彼女は模範じみた綺麗な姿勢で俺に言葉をかけた。

「食料の他に頼まれていた水と薬草もとってきましたが、薬草は望まれているものか分からないので仕分けをお勧めします。その時は私も手伝うので言って下さい」
「ありがとう。ニビの事も無理言って悪かったな、助かった」
「いえ、そんな...」

まだ続きがありそうだったが、俺はそれを断ち切って声を上げた。

「騎士の皆さんもありがとうございました!今から俺とニビで調理するんで終わるまで休んでて下さい!」

後ろに続く騎士の皆に礼を言い、ニビと一緒に調理を始める。
ルミスが手伝おうとしてきたが、彼女が動くと部下全員が動きかねないので断った。

「火はおこしたし即席だけど木の机もあるぞ」
「こりゃまたすげーな...」
「最初はブラギさんと雑談してたんだけど話題が尽きてさ。暇潰しに作ったんだ」
「へぇ」

せっかく敬語も取り払ってもらったし、丁度いい活動だった。
単純に楽しかったし。

「にしてもレイスって本当に器用貧乏だったんだな。なんで魚捌けてんだよ」

驚いたようなそうでないような顔でニビが言ってきた。
目の前を横切る名前の知らない鳥を眺めながら、俺は言葉を返す。

「やる気があればやるんだよ俺だって。普段はそれがないだけ」
「それ宝の持ち腐れって言うんだぞ」
「まぁそうだな」
「せめて否定しろよ...」

雑談をしながらでも驚異的なスピードで動いていた手は、15分を少し超えたところで止まった。

「できたぞー!」

ニビの声を合図に騎士達が集まってくる。
野宿にしては豪華な品々は、彼らを喜ばせるには十分だったらしい。
歓声とも言えるざわめきが垣間見えた。

「すみません二人共。こんな豪勢な...」
「何言ってんだ。俺らはお前らがとってきたのを調理しただけだ。なぁ?」
「そうそう。ていうか早くルミスも座れば?皆待たせてるし」
「あ、うん...。ありがとう」

ニビに促されて座ったルミスを確認し、フラストレーションの溜まった部下達と共に手を合わせる。

いただきますを合図に始まった食事は、もはやレースだった。
いつもより割増で賑やかな食事に苦笑を禁じ得ない。

(お前も一緒に食べられたらよかったな...)

当たり前だがカイはまだ目を覚まさない。
俺の背もたれという名目で後ろに横たわっている。

いつもの騒がしいカイに少し物寂しさを感じながら、いつか魚でも捌いてやろうと密かに企てる。
そうして俺は、まだ少し赤みがかっている肉を口に入れた。


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