No title

(´・ω・`)

16.女騎士ルミス

「ご馳走様。美味かったよニビ」

俺が素直に礼を言うと、ニビは少し驚いたような顔をして「そりゃどうも」と呟いた。
俺が礼を言うのが珍しいんだろう。
俺だってちゃんと礼は言うのに.....失礼な奴だな全く。

「レイス、昨日のあれ聞かないと」
「あぁそうだったな」

カイに促され、俺はニビの方に視線を向ける。
視線が合うか早いか


バサバサバサッ!


近くにいた鳥たちが逃げていく。
それほど強力な殺気を、今俺は躊躇いなくニビに向けている。


「な、なんだよ...」


ほう、この状態でまだ声が出るとは。
やるなニビ。

「そんなに警戒すんなって。俺はただ話がしたいだけなんだ」

空気の流れがよく感じられる。
研ぎ澄まされた感覚の中で受ける風は、程よい緊張感をもたせた。


「お前、どこで才能の現れ方を知った? ・・・いや、誰から聞いた?」


混乱も焦りもしていない。
ただ、俺の目を見て警戒を緩めない。
そんな状態でニビは口を開いた。

「ルミス...っていう女騎士。戦士の国のウルクラグナから来たって言ってた。騎士団長してるらしい」

女騎士ルミス...。
ウルクラグナで騎士団長できるなら間違いなく相当な手練だろう。
場合によっては警戒が必要かもしれない。

と、この時俺は’’ウルクラグナ’’と’’騎士団長’’に気を取られ、聞き流していたワードに気付いた。


ちょっと待て’’ルミス’’って言ったか......?


「カイ、本人と思うか?」
「でもウルクラグナの騎士でルミスってもう本人しかいなくねぇ...?」
「.........」
「.........」

俺達が黙り込んでいると、ニビがおずおずと顔を覗き込んできた。
「なに...?お前らルミスと知り合いか何かか?」

呑気な声で聞くニビに、俺達は声を揃えて聞き返した。


「「お前ルミスを知らないのか!?」」


先程までのシリアスな空気から一変した俺達に、ニビは戸惑いを隠せていない。
「知らねぇよ...。そんな有名人なのかよルミスって」

本当に知らないのか?
今時ルミスの名を知らない奴なんていたのか...。

「ここ数年、ウルクラグナで無敗を誇ってる女騎士の名前だ。国で毎年行われる決闘大会で連勝してるって話だぞ?」
「少なくとも俺より強いと思う。レイスが相手なら分かんないけど」
「へ、へぇ......」

しかし何故そんな奴がニビなんかに才能の秘密を話したんだ?
ルミス...若しくはウルクラグナに何か利益があるのか?

「.........まぁとりあえず分かった。殺気なんか向けて悪かったな」
その言葉と同時に、ニビの張り詰めた空気も少しは緩んだ気がした。

「ルミス個人の利益かウルクラグナの利益か......。こればっかりは行ってみるしかないな」
「まぁそうだな。面倒だけど行くか...」

目的地が決まった。
面倒なら行かなければいいのに...というニビの顔が、密かに俺の心を傷付けた。







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