No title

(´・ω・`)

14.秘密を知る者

 あれから俺達はニビが作った夕飯を食べ、早々に野営の準備を終えていた。
獣の肉を焼いたものしか食べてこなかった俺達にとって、 今日の夕飯はご馳走だった。
焼いただけである事に変わりはないが、俺達が作ったのより確実に美味かった。
それに、俺達の反応を見たニビもどこか嬉しそうにしていた。

する事もないから今日はもう寝ることにしたが、俺は中々寝つけなかった。

木に登って幹に寄りかかるように座り、夜空に瞬く星々を虚ろな目でただ眺める。

.........ニビの言った言葉が、頭の中で何度も谺響した。



「才能ってのは5才までに一番強く望んだ事が才能になるもんだ。言いたくなきゃ聞かねーが、お前ら一体どんな環境で育ったんだ?」



才能の現れ方を知っている者は少数派だ。王とか庶民とか関係なく、それを知る者は数える程しか存在しない。いや、’’存在してはいけない’’。
それなのに何故ニビが知っていたのか......。

「どんな環境で育ったんだ?...か...」
「そういや言ってたなぁそんなこと」

突然の自分以外の声に驚き、バッと後ろを振り返ると、逆さになったカイが俺を見ていた。
「なんだカイか......驚かせんなよ」
「レイスちょっと鏡見てきて?全然驚いてる風な顔してないから」

カイが反対側に同じようにして座る。
そして、さっきとは打って変わった真剣な声音で話しかけてきた。

「どこで誰から聞いたのか知らないけど気を付けないとな...」

こいつの巫山戯と真剣の切り替えはどうなっているんだろうか?
相手が俺以外だったら随分と振り回されるだろうな...。

「あぁ。最悪命に関わるからな」
「その本人は警戒ゼロで寝てるけどな」
「そうだな」

パチパチと音を立てる残り火の隣で、すやすやと寝息を立てている。
あれほど殺気に満ちていた奴が......。

「ま、いっか。子供らしくなってさ」
「俺らにはない純粋さだよな…」
「そうだな…」

否定はしないのか。
なんか悲しくなってくるな。

空虚な森の中で眺める星々。
たまに聞こえるパチパチという残り火の音。
どこからともなく吹いてくる、少し冷たい夜の風。
家で畑いじりするのも良かったが、こういうのも良いな...。

「寝るか」
「おう」

木から飛び降り、火の近くまで行って横になる。
もう一度夜空を見ると、夏の大三角が見えた。
 (綺麗だな...)
今の今まで気付かなかったけど、それだけ動揺してたんだろうか。

(今はどうでもいいか。そんなこと)

美味い夕飯を食べて、新しい仲間ができて、綺麗な星空を見た。
旅に出てから間違いなく過去最高の夜だ。今はそれだけ分かってればいい。




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