No title
9.ニビ
「...ん......?」
「あぁ起きたか。おはよう」
レイスの黒い瞳が、少年の赤い目を覗き込んでいる。
「......!!」
勢いよく起き上がった少年の頭が、レイスの頭と激突した。
「「いっ!?」」
突然の激痛に、二人揃って悶絶する。
「おいレイス。子供ビビらせてんじゃねーよ。大丈夫か?」
「おいちょっと待てよ!なんで俺が悪者みたいになってんだ!?俺何もしてないからな!?」
俺とカイの会話を聞いても、少年は警戒の色を弱めない。
まぁこれで警戒されなくなるとは微塵も思ってないのだが。
「ほら、これ食えよ。腹減ってんだろ?さっきからすげー腹鳴ってたぞ」
俺は少年にパンを手渡した。
別に餌付けをしたいわけじゃない。
純粋に心配なだけだ。
それに対して少年は間髪入れずに「いらねーよ」と、睨んできた。
・・・・・・うん、だよね知ってた。
そりゃ警戒してる時に食べ物なんか渡されたら誰だってそうなるよな、うん。
「心配せずとも毒なんか入っちゃいねーよ。安心して食え」
すると少年はしばらく悩んだ後、恐る恐るパンを食べ始めた。
意外とちょろい奴である。
毒が入っていないと分かると、少年の食べる速度はどんどん加速していった。
他のどれかに入っているかも、という考えはないのだろうか?
いや入れる気はないけども。
パンパンに膨れていた袋は、ものの数分で空気の抜けた風船のように萎んでいる。
掃除機並の吸引力だなんて、間違いなく殴られそうだからここでは黙っておこう。
「そろそろお前の事を聞いてもいいか?」
最初は体をビクつかせたものの、少年は無言で頷いた。
やけに素直になったな...。
食べ物の恨みは恐ろしいというが、恩も同様らしい。
「まずお前、名前は?」
「......ニビ」
「ニビか。じゃあニビ、才能は?」
「一応......料理」
「へぇ。じゃあお前は何で俺を襲った?」
なんかちょっと尋問してるみたいで嫌だなこれ...。
それはさておき、ニビは少し驚いたような顔で聞いてきた。
「なんの質問なんだこれ…?」
唖然としたようにも見える彼の表情からは、微かな混乱が窺えた。
途中から、目まぐるしく表情が変わる様子が面白くなってくる。
「いや、なんで俺は襲われたのかっていう…」
「答えようが答えまいが俺への処罰は変わらねーんだろ?だったら早くしてくれよ」
「ん?なんだお前。可愛くない奴だな」
「可愛さで腹が膨れるかよ」
短い舌打ちの後、ほんの少し黙り込んだニビは消え入りそうな声で呟いた。
「お前らの戦闘のレベルが高かったから......金もそれなりに持ってると思ったんだ。お前らを選んだのは失敗だと気付いて逃げようと思ったら、お前の一言で冷静じゃいられなくなって......今現在に至る」
なるほど。
感情のコントロールがあまり得意ではないタイプか。そして口が悪いタイプだな。
「で、俺をどうする?奴隷として売るか?それなら他の国で売った方が高くつくぞ」
「ホント可愛くねーなお前...。別にお前を売ろうなんて思っちゃいねーよ。勿論殺す気もないしな」
ため息まじりの俺の言葉に、ニビは目を見開いた。
出会ってから恐らく一番激しい表情変化だ。
「じゃあどうするんだよ。このまま逃されるのは筋が通らないぞ」
謎なところで律儀だな...。
そういう情緒があるなら人を襲うのやめれば良かったのに…。
「俺だって見逃そうなんて思っちゃいないさ。その代わり」
不気味な笑みを見たニビが不安と警戒を強める。
「お前、俺らについてこい」
理解が追いつかず固まったニビが、数秒後ようやく動き出した。
面白い程に混乱しているのがよく分かる。
いつにも増して不敵な笑みが、レイスの口元で鈍く輝いていた。
「あぁ起きたか。おはよう」
レイスの黒い瞳が、少年の赤い目を覗き込んでいる。
「......!!」
勢いよく起き上がった少年の頭が、レイスの頭と激突した。
「「いっ!?」」
突然の激痛に、二人揃って悶絶する。
「おいレイス。子供ビビらせてんじゃねーよ。大丈夫か?」
「おいちょっと待てよ!なんで俺が悪者みたいになってんだ!?俺何もしてないからな!?」
俺とカイの会話を聞いても、少年は警戒の色を弱めない。
まぁこれで警戒されなくなるとは微塵も思ってないのだが。
「ほら、これ食えよ。腹減ってんだろ?さっきからすげー腹鳴ってたぞ」
俺は少年にパンを手渡した。
別に餌付けをしたいわけじゃない。
純粋に心配なだけだ。
それに対して少年は間髪入れずに「いらねーよ」と、睨んできた。
・・・・・・うん、だよね知ってた。
そりゃ警戒してる時に食べ物なんか渡されたら誰だってそうなるよな、うん。
「心配せずとも毒なんか入っちゃいねーよ。安心して食え」
すると少年はしばらく悩んだ後、恐る恐るパンを食べ始めた。
意外とちょろい奴である。
毒が入っていないと分かると、少年の食べる速度はどんどん加速していった。
他のどれかに入っているかも、という考えはないのだろうか?
いや入れる気はないけども。
パンパンに膨れていた袋は、ものの数分で空気の抜けた風船のように萎んでいる。
掃除機並の吸引力だなんて、間違いなく殴られそうだからここでは黙っておこう。
「そろそろお前の事を聞いてもいいか?」
最初は体をビクつかせたものの、少年は無言で頷いた。
やけに素直になったな...。
食べ物の恨みは恐ろしいというが、恩も同様らしい。
「まずお前、名前は?」
「......ニビ」
「ニビか。じゃあニビ、才能は?」
「一応......料理」
「へぇ。じゃあお前は何で俺を襲った?」
なんかちょっと尋問してるみたいで嫌だなこれ...。
それはさておき、ニビは少し驚いたような顔で聞いてきた。
「なんの質問なんだこれ…?」
唖然としたようにも見える彼の表情からは、微かな混乱が窺えた。
途中から、目まぐるしく表情が変わる様子が面白くなってくる。
「いや、なんで俺は襲われたのかっていう…」
「答えようが答えまいが俺への処罰は変わらねーんだろ?だったら早くしてくれよ」
「ん?なんだお前。可愛くない奴だな」
「可愛さで腹が膨れるかよ」
短い舌打ちの後、ほんの少し黙り込んだニビは消え入りそうな声で呟いた。
「お前らの戦闘のレベルが高かったから......金もそれなりに持ってると思ったんだ。お前らを選んだのは失敗だと気付いて逃げようと思ったら、お前の一言で冷静じゃいられなくなって......今現在に至る」
なるほど。
感情のコントロールがあまり得意ではないタイプか。そして口が悪いタイプだな。
「で、俺をどうする?奴隷として売るか?それなら他の国で売った方が高くつくぞ」
「ホント可愛くねーなお前...。別にお前を売ろうなんて思っちゃいねーよ。勿論殺す気もないしな」
ため息まじりの俺の言葉に、ニビは目を見開いた。
出会ってから恐らく一番激しい表情変化だ。
「じゃあどうするんだよ。このまま逃されるのは筋が通らないぞ」
謎なところで律儀だな...。
そういう情緒があるなら人を襲うのやめれば良かったのに…。
「俺だって見逃そうなんて思っちゃいないさ。その代わり」
不気味な笑みを見たニビが不安と警戒を強める。
「お前、俺らについてこい」
理解が追いつかず固まったニビが、数秒後ようやく動き出した。
面白い程に混乱しているのがよく分かる。
いつにも増して不敵な笑みが、レイスの口元で鈍く輝いていた。
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