No title

(´・ω・`)

8.VS少年

さっきまでカイと火花を散らしていた空き地まで戻ってきた。
少年を地面に降ろして辺りを見回す。
背を向けるような形で少し距離をとる。


「ここなら誰も来ないぞ。そろそろ起きろよ」


振り返ると、そこにはナイフを持って俺を睨みつける少年の姿があった。

「いつから?演技にはちょっと自信あったんだけど」
暗殺者のような鋭く、冷たい目で俺を見上げている。
まだ子供なのに恐ろしい目するじゃん...。

「最初からだバーカ。瀕死状態の奴があんだけの殺気放てるわけねーだろ阿呆か」

その一言で、少年の顔に青筋が立った。
相当お怒りのようだ。
まぁ自信のある演技を見抜かれた上に罵声浴びせられちゃそうなるか...。

そんな俺をよそに、少年はだらりと力を抜いた体勢になる。
そして小さく呟いた。


「もういい。お前・・・・・・死ね」

瞬きをした直後、少年は俺のすぐ目の前まで迫ってきていた。
容赦なく振られたナイフで、髪が数本宙を舞う。
かと思えば、視界から少年の姿が消えた。
「なっ!?」

そして次の瞬間、俺の首を狙うナイフが宙を舞う。

「あめぇなぁ!!」
背後にまわっていた少年の、更に背後をとる。
「なっ!?」
さっき俺が言った全く同じ言葉を、心底驚いたような顔で少年が言う。

「ほっ!」
うなじに軽く一撃喰らわすと、少年は力なく倒れ込んだ。
誰もいない路地裏で、少年が倒れる音と落ちたナイフの金属音だけが静かに鳴り響く。

今の俺は、きっと物凄く悪い顔をしているのだろう。状況も相まってそれこそ魔王的な感じになってそうだ。
できれば誰にも見られたくないな...。


「たっだいまー!」

呑気なカイの声が、静寂をぶち壊す。
「あ、うん、だよね。知ってた」
「ん?なにが?」

首を傾げるカイに悪意は感じられない。
まぁ確かにコイツこういう所あるから許してやるか...。
「そーいやさっきのレイスの顔すっごい悪役みたいな顔してたな!」
前言撤回。やっぱり許さない。いつか絶対絞めてやる。

「いつもの事だほっとけ。とりあえずコイツが起きるまで待っとこうぜ。このまま野放しにしたらなんか面倒そうだし」
「そうだなー」

俺達はカイが買ってきた食べ物を広げながら、横たわっている少年の目覚めを待った。


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