No title

(´・ω・`)

5.無限地獄

資金調達も終わり無事に合流を果たした俺達は、カイが情報収集の際に見つけたというニックの店へと足を運んだ。

「いらっしゃいませー」

結構繁盛しているようだ。
......やたら人が多い。

「あれが料理長でこんなに繁盛するもんなんだなー。世界って不思議だ」
「失礼だぞレイス。見た目がどうあれ腕は確かなんだぞきっと」
「ふーん...」

あちこちに座っている屈強な男達は、どう見ても味に繊細とは思えない。
斧を持っている者もいれば、剣を持っている者もいる。
冒険者という輩だろうか?

「......」
何とも言えない顔で黙り込んだかと思えば、今度は「多分...恐らく...きっと...」と自信なさげに付け加えていた。
もう自分に言い聞かせているレベルで呟いている。

まぁ俺達も味を楽しみに来たわけではないので今はそんな事どうでもいい。
さっきから鳴りっぱなしの腹がもう限界を迎えている。
早く食べ物をくれと叫んでいる。

「お前なんにする?」
「俺は…...ラーメン!ラーメン食いたい!」
「じゃあ俺もそれでいいや」

注文を取りにきた店員は、綺麗な黒髪の女性だった。
去り際に微笑むその姿は、料理やら汗臭さやらで充満しているこの店には分不相応な気がした。

「料理長があれで客がこれなのに店員はあれだぞ」
「物好きな人も居たもんだな」
そんな雑談をしながら、俺達は久方ぶりのまともな食事を待った。





「お待たせしました」

眼前に置かれた物を見て、俺達は言葉を失った。
「......なぁ、頼んだのって普通のラーメンだったよな?」
「あぁ」

俺達の目の前にある物はどう見ても’’普通の’’ラーメンより明らかにサイズが違った。
大きすぎるのだ。

(値段も大して高くなかったし何よりこの量...。そりゃあ屈強な男性客が愛用するわけだ)
その上メニュー表には「完食できなければ追加料金」と書いてあった。
どんだけ不味いんだと笑っていたが、笑い事では済みそうにない。

「どうするんだこれ...」
「どうするも何も食べないと...レイスだって追加料金は払いたくないだろ?」
「.........」

上手くできてやがる。
面白半分で入店すれば、追加料金は確実だろう。そういう客から追加料金を取って成り立っているのだきっと。
でなきゃあの値段でこの量はおかしい。

そして俺達もまた、その被害に遭いそうになっているのだ。

パキッ

割り箸を割り、小さく呟いた。
「い...いただきます」

......これから地獄のような時間を過ごしたのは、言うまでもない。

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