精霊術士の英雄譚

夢見る少年

第60話 貴族の恐ろしさ

今日は貴族科だけ月に1度ある交流会の日だ。交流会とは、貴族科の1年から3年生が集まり夜会の練習をするようなものだ。夜会には2種類あり、ショウの認定式のように誰でも参加可能で殆どルールが無い夜会と、貴族だけが集まり、ルールや上下関係がしっかりしている夜会の2つある。この貴族科に通う生徒は将来当主になる人が多いので夜会の練習などもするのだ。しかしここは学校でしかも現代当主が全くいなかった為、この夜会では3年生が1番偉く、次に2年、1年となっており、呼び名は、○○さんと呼ぶようになっている。僕とユーリは3時から始まるので1度寮に戻り昼食を食べてから行くことにした。本来の夜会では身分の低いものから会場にいないと行けないが、この交流会はそこまで厳しくなく、遅刻しなかったらいいそうだ。因みに本当の夜会の場合はショウは英雄騎士で公爵と同じ扱いになるのでわざと時間ギリギリに行かないと行けない。そして、ユーリ達は子爵だが、ショウと同時に行く。ユーリ達には招待状は渡されず、ショウ英雄騎士の部下のユーリ子爵という立場になり、夜会ではショウの護衛や、サポートが役目になるのでショウと同時に行くのだ。
現在昼食も終わって1時だった。交流会まで2時間程あるのでギルと遊んでいたが流石に飽きたので、


「ユーリ。何時に行く?」


「今から行きますか?夜会ではショウはギリギリ行くのが逆にマナーなので早めに行くのもいいと思いますよ」


「そうだね!なら、今から行こうか」


「はい。行きましょう」


僕達は大きなホールに行った。流石に2時間前なので貴族科の生徒は誰もいなく準備をしている先生と内政科の生徒だけだった。内政科の人は将来メイドや執事になる人が多いので交流会の準備などは内政科の人が準備と片付けを手伝うのだ。僕はリナがいたので、


「リナー!頑張ってるね!」


「えっ?まだ開始2時間前だよ?」


「暇だから来たんだ!それと手伝うね!」


「駄目駄目!これは内政科の人の授業でもあるんだから貴族科のショウは手伝ったら駄目!」


「そっか。わかったよ」


「ショウ。あちらに飲み物があるので見に行きませんか?」


「そうだね」


「今からでも飲めたら飲んでみませんか?」


「うん」


僕達は飲み物が並んでいる所に行く、飲み物を飲んでみたり、会場内を散策などをして時間を潰した。開始30分前になると1年生が来始め、15分前には2年生、ギリギリに3年生が来た。やはり決まりでは無いが暗黙の了解でこのようになっているのだろう。僕は交流会が始まってからはずっと端の方にいた。何故なら交流会には、僕の知らない暗黙の了解が沢山あるかもしれない為様子を見ていたのだ。僕とユーリが端の方で突っ立っていると不自然なのかちょこちょここちらを見てくる人もいたが、特に話に来たりする人はいなかったのでそのままでいると、男の人が1人で後ろに3人の女子を連れたイケメンがやって来た。


「こんにちはショウくん。僕の事が分かるかな?」


「いえ、申し訳ございませんが存じ上げません」


「そっかそっか。僕はね財務卿のキム公爵の息子のヤンだよ」


「無知な者ですみません。今後このような事が無いように気をつけます」


「いやいや畏まらなくていいよ。僕そういうの気にするタイプの人では無いし、わざわざ親の名前を出したのは今後も宜しくね。って言う意味でなんで知らんのんや!とかそういう事では無いからね」


「そうだったのですか。すみません」


「タメ口でいいよ!」


「では、お言葉に甘えて、よろしくヤンさん」


「宜しくね!何か困った事あったらなんでも聞いてね!教えるから」


「ありがとうございます。初めての先輩の知り合いが出来て嬉しいです」


「それは良かった!あんまり貴族科は交流する機会が少ないからこの交流会で友達を増やすといいよ!」


「そうなんですか。分かりました」


「うん!卒業してからもも仲良くしようね」


「勿論ですが今何故卒業後の事も?」


「そりゃー勿論君がこの国での発言力がとても高いからだよ」


「えっ?」


「陛下に次の国王にならないか?と言われて、実質公爵で、国の英雄でしょ?君は分かって無かったかもしれないけど君は陛下の次に発言力と権力を持ってるよ。でないと君に治めている街に一定の自治など与えないよ。だから昔から仲良くしてたら少しは贔屓してくれるでしょ?だからだよ」


「そうなんですね。でも、今言ったら僕は単純な優しさでしてくれていると思えませんよ?」


「それが狙いだよ?」


「何故ですか?」


「それは教えなーい!」


「そうですか。残念です」


「そろそろ行くね!バイバイ!」


「さようなら」


ヤンさん達は人が沢山いる所へ行ったのを見て、ユーリは、


「ヤンさんは人を有能か無能かを見分ける天才です。有能にはとても優しくし、味方に引き入れようとします。彼は本当に優しく頭がいいので仲間になっていて損は無いと思いますよ」


「でも、まだ僕が有能かは決まってないでしょ?」


「いえ、ショウは有能ですよ。彼は身分関係なく有能なら声を掛け、無能は眼中に無いんです。現に私は1度も声をかけられていないでしょ?」


「そうかもしれないけどユーリは絶対有能だって!」


「なら、何故子爵の中で私だけが内政をせず、リナが内政を勉強していると思いますか?」


「そりゃ、ユーリが僕の身の回り担当だからでしょ?」


「身の回り担当なら最も他がいます。でも、私が身の回り担当になったのはそれしか出来ない無能だからです」


「そんな事無いって!ユーリは家事も出来るしご飯も美味しいからとっても有能だよ!」


「平民ならそうですね。しかし貴族令嬢に求められるのは内政が上手く出来るか出来ないかそれだけなのです。私は本来なら生涯父の元で暮らすだけだったでしょう」


「そっか。でも、僕はユーリを無能と思った事は1度も無いし、これからも絶対に無い。そして、部下の中で1番ユーリを信頼しているよ。これだけは覚えていて」


「ありがとうございます」


「ううん。全然大丈夫だよ。大事な家族が落ち込んでいるんだから助け合いは当たり前でしょ?」


「か、家族?」


「うん。だって同じ家に住んでいるでしょ?だから家族だよ。ユーリ達の部下ももローザ達のパーティー働いてくれているメイドさん達もみんな家族だよ」


「ショウって本当にいい人なんですね。神様ですか?」


「そんなわけないよ。現在ヤンに物凄く怒ってるし」


「私の為にですか?」


「当たり前でしょ!」


「ありがとうございます。でも、怒っていても交流会を楽しめないので今は交流会を楽しみましょう」


「そうだね!」


僕はこうして貴族の恐ろしさを実感した。そして、このような固定概念を自分の権力や発言力を持って、ぶっ壊してやると決意した。

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