転生したら防御チートを手に入れたのでので死亡予定の悪役令嬢を守ってみせる

ユーガ

魔神・アンシェル

「何が起こるって言うんだ……」


  俺達がそう言っている間にも迷宮中から魔力がどんどん集まってくる。




「何とか止めれないか!?」




「無理だ!  そもそも近付けねぇ!」




「やってみねぇと分からねぇだろ!」


  俺はそう言って身体強化を使い飛び上がり、繭に近づく。


  ゴォォォォ!!


  近づけば近づくほど魔力の濃度が上がってくる上にどんどんと魔力の質が邪悪なものになっていく。




「まだまだぁ!!」


  俺はそれでも進もうとするが、残り数メートルという所で魔力の嵐に阻まれ、進めなくなってしまう。


  やっぱり無理か……




「無茶すんじゃねぇよ!」




「悪い、でもほんとにどうしようもねぇな……」


  魔力は尽きることなく繭に集まり続ける。
  そして、繭は魔力を吸収するとそれを隠蔽しているらしく、中で何がどうなっているのかも分からない。




「おい、止まったぞ!」


  レインが言うように迷宮から魔力が集まるのが止まった。
  そして、繭を守るように周りを囲んでいた魔力も最後に繭に吸い込まれていく。




「今のうちに!」


  俺は繭に剣を突き刺す。すると、


  ビキビキビキ!


  そう音を立てて繭にヒビが入る。




「集まった魔力が溢れてくるかもしれない!  一旦離れよう!」


  俺達は一旦繭から距離をとる。


  しかし、魔力が溢れてくる様子はない。




「おい、アンシェルはどこだ?」


  俺達は繭の残骸の中からアンシェルを探す。


  すると、煙の中に人影が見えた。




「いたぞ!!」




「おう!!」


  俺達はその人影に向かって走り、斬りかかる。


  スカッ!


  俺達の剣はその人影に当たることなく、空を切る。
  人影はまだそこにあるのに、だ。




「え?」


  完全に当たったと思ったのに!  どこだ?


  俺はまさか、と思って後ろを見る。


  すると、恐ろしい姿をした化け物がレインのすぐ後ろで手に魔力を集めている。




「レイン、危ない!!」


  俺はレインを助けようと飛び出す。




「グラァ!!」


  化け物は闇の魔力を纏った拳でレインを殴る。


  ドォン!!


  爆発音にも近い音がする。
  そしてレインがそこから消えたと思えば壁に叩きつけられていた。




「レイン!!」




「グラァッ!!」


  レインに駆け寄ろうとするが目の前を化け物が塞ぐ。




「どけっ!!」


  俺は化け物に斬りかかる。
  化け物はそれをしゃがんで避け、俺の腹を殴る。
  体中に衝撃が走る。




「ぐはっ!!」


  俺は逆側の壁に打ち付けられる。
  俺の防御力はオーバーSSSなのにかなりのダメージを受けた。
  恐ろしい威力だ。




「レ、レイン!!」


  俺は痛む体を無理矢理動かして立ち上がる。
  そして、レインの方を見るが、レインは意識があるようには見えない。




「まだ動くか。申し子はタフだなぁ!」


  この声、少し変わっているがアンシェルだ。
  アンシェルが大量の魔力を吸収して変化したのがこの化け物なのか……




「縮地!!」


  俺は縮地でアンシェルの死角に回り込み、剣を振り下ろす。


  完全に虚を突いた!


  キィン!


  完全に当たったと思われた俺の剣はアンシェルが纏っているオーラのようなものに弾かれる。




「ふっ、無駄だ。この闇の衣がある限りお前達の攻撃は全て弾かれるのだ!」




「何だと!?」




「絶望して死ね!!」


  アンシェルの拳が再び俺を迷宮の壁に吹き飛ばす。


  ドォン!!


  くそっ、もう体中が悲鳴をあげている……
  もうどうしようもないのか……?




「んっ、アル……?」




「レイン!  目を覚ましたか!」




「くそっ、痛てぇ……何なんだ、あいつ……」




「アンシェルだ。かなり強くなっている。そしてあの闇の衣があるせいでこっちは全く攻撃が入らないんだ」




「おお、あれで生きていたか。勇者はそこの申し子より強く殴ったつもりだったんだがなぁ!」




「俺はこんな所で負けらんねぇ!  俺は勇者なんだ!」




「勇者の光!!」


  レインは勇者の光でアンシェルの闇の衣を解除しようとする。
  勇者の光がアンシェルを包む。


「くそっ、まずい!  闇の衣がぁぁ!!」




「うおおおお!!」




「やめろぉぉ!!」




「よし!  効いてるぞ!  頑張れ!」




「なんてなっ!」


  アンシェルは勇者の光を吹き飛ばす。




「嘘だろ……」




「大量に魔力を吸収して魔神となった俺にまだ覚醒していないひよっこ勇者の特有スキルなんぞ効かんわ!!」




「覚醒……だと?」




「はっ!  覚醒も知らないのか!?  そんなんでよく魔王軍幹部に立ち向かおうと思ったな!」




「くそっ!  こうなりゃ!」


  レインはヤケになって剣を握り、アンシェルに突進する。




「バカ!  ヤケになるな!」




「縮地!!  貫け!  グングニル!」


  レインは縮地でアンシェルの頭上に移動する。
  そして、剣を突きだし、グングニルを発動する。


  しかし、グングニルはやはりアンシェルの闇の衣に弾かれる。




「おいおい勇者が冷静な判断が出来なくなってどうするんだ、よっ!」


  アンシェルはレインの目の前に飛び上がりレインを蹴り飛ばす。




「レイン!  くそぉ!!」


  俺はアンシェルに斬りかかる。




「お前も寝てろ!」


  アンシェルの拳が肉薄する。




「縮地!!」


  俺は拳が当たる直前に縮地を発動し、アンシェルの死角に移動する。




「そんでぇ……強制解除!」


  俺は近接魔法の1つ、魔法を強制的に解除する魔法を発動する。




「無駄だ。これは魔法の類では無いからな。  グラァ!」


  アンシェルの拳が俺の鎧を砕く。
  最高級の高性能鎧なのに、だ。




「がはっ!」


  もうダメだ。強いなんてものじゃない。
  格が違いすぎる。




「ここまでだな。さぁ、全員殺して帰ろうか」




「や、やめろ……」




「やめてくれ……」




「お前達はそこで仲間が殺されていく様子をじっくり見てな。そうだな……まずはこいつだな」


  アンシェルはセリィの目の前に立つ。




「おいてめぇ、セリィに指1本でも触れてみろ……ぶっ殺すぞ……」




「おいおい何だ?  お前こいつの恋人か何かか?  そいつは滑稽だなぁ!  恋人が殺される様子をそこで絶望しながら見てな!」


  そう言ってアンシェルが爪でセリィの頬にちょっとした切り傷を作る。


  胸の中に今まで感じたことの無いほど強い怒りが込み上げる。
  

  あいつは、絶対に許さない。
  セリィは絶対に守る。
  俺はそのために転生してきたんだ。


  だったら、何をしなきゃいけない?
  ここで立ち上がらなきゃいけないだろ!


  立ち上がれ!  守るんだろ!




「うおおおおおおおおお!!」


  俺は吠えた。


  痛みを吹き飛ばすために。
  弱気になっていた自分を奮い立てるために。
  自分の使命を思い出すために。


  俺はセリィを守る!




『称号スキル:守る者を獲得しました』


  頭の中に聞き慣れない声が聞こえてくる。


  称号スキル?  守る者?
  そりぁいいや!




「ちっ、そろそろしつこいぞ!  諦めろって言ってんだよ!」




「嫌だ!  俺はセリィを守るんだ!」


  俺は身体強化で最大限まで強化して床を蹴り、アンシェルに肉薄する。




「くらえっ!!」


  俺はアンシェルを殴る。


  俺の拳は闇の衣に弾かれることなくアンシェルの体に当たる。


  アンシェルは吹き飛ぶ。
  が、すぐに体勢を立て直して立ち上がる。




「何故だ!  闇の衣で攻撃は弾かれるはず!  魔神のこの俺が……!」




「あまり人間を舐めるなよ!  こっからが本番だ!」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品