転生したら防御チートを手に入れたのでので死亡予定の悪役令嬢を守ってみせる

ユーガ

伝説の生き物・ドラゴン

「たった2人で我を倒すだと?  ふっ、片腹痛いわ!  我はオークジェネェラルの称号を授かった者、ただの魔物とは格が違う!」




「称号ってそんなに重要なのか?」


  俺はフロウに聞く。




「人間でいう加護とか申し子とかその辺のイメージだな」




「なるほど」




「我の力の前にひれ伏せ!  ウォォォォ!!」


  オークジェネェラルは馬から降りて巨大な包丁を手に持ち、突進してくる。


  馬乗らねぇのかよ。


  とりあえず俺は攻撃力を防御力に戻す。




「ホール!」


  フロウはオークジェネェラルの足元に穴を開ける。
  オークジェネェラルはそれに引っかかり、前に倒れる。




「今だっ!」


  俺達は一瞬でオークジェネェラルに近づき、鎧の隙間を狙って剣を振り下ろす。




「ウォォォォ!!」


  オークジェネェラルが叫ぶと衝撃波が生まれ、俺達の斬撃が届く前に吹き飛ばされる。




「小癪な真似を……正々堂々戦え!」




「お断りだね!  これは命をかけた勝負なんだ。正々堂々なんてやってられるか」




「ならば我もそうさせてもらう!」


  オークジェネェラルはそう言うと口から何か煙のようなものを吐く。




「何だ!?」


  辺りが霧に包まれ、視界が奪われる。


  そして、


「ゴホッゴホッ!  これは、毒か!?」


  この霧は毒霧だったのだ。視界も奪い、毒も与える。
  先程、「正々堂々戦え!」なんて言ってたやつの戦い方とは思えない。




「フハハ、我は熱源感知でお前達の居場所が手に取るようにわかるのだ!」


  オークジェネェラルは突然俺の後ろに現れ、背中を切りつけてくる。


  奇襲だ。無防備な背中をやられて大ダメージだ。


  普通ならな。




「効かんな。  そして、捕まえた」


  包丁は俺にかすり傷1つ付けられていない。
  そして俺はオークジェネェラルの腕を掴む。




「何故だ!  完全に不意打ちだったはず!」




「ああ、不意打ちだったよ。だが、攻撃力が足りないな。俺の今の防御力はオーバーSSSだ」




「オーバーSSS!?  オーバーとは何だ!  上限はSSSのはずだ!」




「俺は守護神の申し子でな。その効果で防御力の上限が無いのさ!  おらっ!」


  俺はオークジェネェラルの鎧の真ん中を殴る。




「ゴフッ!!」


  オークジェネェラルは膝をつく。




「さぁ、降参したらどうだ?  お前もう詰んでるんじゃないか?」




「うるさいうるさい!!  ウォォォォ!!」


  オークジェネェラルは腕を振り下ろし、地面を叩き割る。


  俺はオークジェネェラルを離し、結界で足場を作り離れる。




「フロウ、大丈夫か?」




「ああ、びっくりしたくらいだ。とりあえず霧をどうにかする!  サイクロン!」


  フロウは風魔法で毒霧を吹き飛ばす。




「いたぞ!  ……って何かおかしいぞ?」


  クレーターの中心にいたオークジェネェラルは先程までとは違って肌の色が黒くなっていたり、体が一回り大きくなっていたりと明らかにパワーアップしていた。




「まさかこの力を使う日が来ようとは……お前達、命は無いと思えぇ!」


  オークジェネェラルはクレーターから飛び出してくる。
  オークジェネェラルの蹴った地面が大きく抉らえている。




「よっ!」


  俺はオークジェネェラルの拳を素手で受け止める。




「ふんっ!!」


  俺は受け止めきれず吹き飛ばされる。




「力が強くなってるな……ん?  体が……」


  立ち上がろうとすると体に力が入らず、上手く立ち上がれない。




「いくら防御力が高くても毒が効かない訳では無かったようだな!」


  くそっ、フロウに言っておきながら自分で毒を食らっちまった。
  ナージャに消してもらおうにもあっちで手一杯だろう。




「今度はもっと強い毒を入れてやろう。それでお前は死ぬ!」


  オークジェネェラルがゆっくりと近づいてくる。




「オラァ!!」


  フロウが横からオークジェネェラルを斧で吹き飛ばす。




「グォッ!?」




「大丈夫か!?  動けないんだろ?  ほら、解毒薬だ」


  そう言ってフロウは俺に解毒薬を飲ませてくれる。


  毒が消えて俺は立ち上がることが出来た。




「さぁ、仕切り直しだな」




「ぐぬぬぬ、オークジェネェラルのこの我がここまで圧倒されるとは……」




「ほんとに称号好きだな。知ってるか?  物の価値ってのは他人には決められないんだぜ?」


  これが俺の自己中時代に見つけた最大の名言だと思う。




「そんな事ない!  我は称号を頂いたからこのように軍を率いることが出来ているのだ!」




「何か悲しいな、それ」




「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!」


  オークジェネェラルは突進してくる。
  やはり素早さも力も全ての能力が上がっているらしいな、速い。




「アイギスの盾」


  俺はアイギスの盾でそれを防ぐ。


  そして攻撃を弾いて生まれた隙にフロウが斧を振り下ろす。




「グォッ!!」


  オークジェネェラルはよろめきながら後ろに下がる。




「そろそろ決着だな」


  俺は剣を構えてそう言う。




「我は……我はアンシェル様の忠実なる部下のオークジェネェラルだあああ!!」


  オークジェネェラルは咆哮する。
  すると魔物の死体から魔力がオークジェネェラルに集まっていく。




「何が起こるんだ……」






――スライムドラゴンサイド――


  

  セリィに頼まれて俺はスライムドラゴンと戦うことになった。
  まぁ、あっちにはフロウもアルもいるから大丈夫だろう。
  ここは唯一男の俺が2人を守らなくては。




「グォォォォォ!!」


  スライムドラゴンは咆哮する。


  こいつは特異個体だ。普通のスライムの擬態は能力はそのままだが、こいつは恐らく何らかの変化があるのだろう。


  実際に咆哮しただけでスライムドラゴンの足元の地面が抉れている。




「前衛は任せろ!」


  俺はそう言って剣を構え、スライムドラゴンの懐に一瞬で潜り込む。




「斬鉄!  加速!」


  ナージャが俺に援助魔法をかけてくれる。




「ふっ!!」


  俺はスライムドラゴンの腹部を斬り上げる。


  ガキィン!


  俺の剣は弾かれる。
  斬った部分を見てみるとかすり傷程度の傷しかついていない。


  やはりこいつはもうドラゴンとして考えた方が良さそうだ。


  とは言ってもドラゴンは伝説ぐらいにしか出てこない生き物だ。
  その危険度は何とSSになると予想されている。
  そんなレベルの敵だとは考えたくない。




「援助魔法をかけても防がれるなんて……」




「魔法ならいけるかも!  雷砲サンダーキャノン!」


  セリィはそう言って雷属性魔法を発動する。




「ギャォォ!!」


  スライムドラゴンは少し仰け反るがそれだけだ。
  特に目立ったダメージは無い。




「グルルル……」


  スライムドラゴンはブレスを放ってくる。
  ゴォッ!  と音を立てて地面が爆ぜる。




「ブレスをあんなスピードで放ってくるなんて!  化け物じゃねぇか!」


  普通あのレベルのブレスを放つにはもっと長い時間溜めないといけないはずだ。


  しかし、スライムドラゴンは一瞬であのレベルのブレスを放ってきた。




「誰かドラゴンの知識は無いのか?  有効打が見当たらないし、何をしてくるかも分からない!」




「勇者の冒険で出てくるレベルの情報しかないわ」




「私もそのくらい……」


  勇者の冒険とは歴代の勇者の人生が書かれた本だ。


  確かその本に出てきたドラゴンはこうだったな。




――昔、勇者ハルヒが魔王城に向かう途中にある山脈を進んでいた時の話。


  勇者一行が山頂で休憩しようと思って場所を探していると宝の山を見つけた。


  喜んだ一行はそこで休んで後で持っていこうと思っていた。


  しかし、そこは最強のドラゴン、エンシェントドラゴンの巣だったのだ。


  寝床に人間がいることに気づいたエンシェントドラゴンは怒り、勇者一行を退避せざるを得ない状況に追いやったのだ。


  エンシェントドラゴンは魔法を巧みに扱い、怪我をしても直ぐに回復してしまったという。




  この話からわかるドラゴンの情報は魔法を使えるという事と傷をつけても直ぐに回復されてしまうということだけだ。


  実際、さっきのかすり傷も綺麗に無くなっている。




「さて、どうしたものか……」




「グォォォォォ!!」


  スライムドラゴンは再び咆哮し、こちらを睨みつける。


  俺は剣を構えた。

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