傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

ご縁がありますね

「んあ?  レイナ?」


  寝返りをするとレイナがいないことに気づいた。


  僕はベッドから出て部屋を少し探してみる。


「やっぱりいないな……」


  どこかに出かけてるのかな、と部屋から出る。


  すると部屋の前に何人もの男がいた。


「えと……何か御用でしょうか?」


「出てきたぞ!  お前がハルだな?」


「そうですけど……」


「お前を強姦の罪で逮捕する!」


「え、ちょ、なんのことでしょうか?」


「話は署でだ!」


  僕はある建物へと連れていかれた。


  そこは日本で言う裁判所のような場所だった。




「レイナ!  どういう事なんだ、これは」


「酷いよハル……信じてたのに……」


「衛兵さん!  僕は何もしていません!」


「あーはいはい。誰でもそう言うよ」


「静粛に!  それでは裁判を始める!」


  裁判長らしき人が出てくる。


「裁判だと……?」


「被告人ハルは先日の夜、抵抗する被害者を無視し、強姦した罪である!」


「被告人、何かアリバイはあるか?」


「ありません……」


「それでは被告人ハルを有罪とし、教会国の牢獄に投獄することにする!」


  教会国!?  なぜ教会国なんだ?


  僕はそう思って裁判長を見る。


  彼は坊主だった。


  ハメられた!  クソ!  でもなぜレイナが?


  僕は十数人の護衛に囲まれ、教会国の牢獄に投獄された。




――教会国・ニクシス――


「入れ」


  僕は何も言わずに牢屋へ入る。


「ここで大人しく反省するんだな」


  そう言って兵士が離れていく。


「さぁどうしようか、ってえぇ!?」


  僕がとてもお世話になった魚商人さんがいたのである。


「よぉ、久しぶりだな」


「お久しぶりです。なぜこんな所に?」


「深夜に許可なく馬車で移動したからとか言われたが、まぁ実際はお前達を逃がしたからだろうな」


「僕のせいじゃないですか!?  ごめんなさい」


「いいってことよ、俺がやりたくてやったことだからな」


「そう言えばお名前って何でしたっけ?」


「俺はクマツだ。お前は確か、ハルだな」


「覚えてくださったんですね」


「港町で有名になってたからな」


「そうでしたか。さて、どうやって出ましょうか……」


「どうしようか……」


  僕達が悩んでいると足音が近づいてくる。


「……誰か来ますよ」


  少し警戒しているとオークが現れた。


「オーク!?」


「オークじゃねぇ!!  前に言っただろうが!  ソーマだよ、七大冒険者の!」


「あ!  あの熊を倒してくれた?」


「そうそう。助けに来たぜ」


「え?  どうして?」


「お前、やったのか?」


「やってません」


「だろうな」


「信じてくれるんですか?」


「俺はな、鼻が良くてな。獣人の特有の能力らしいんだが嘘の匂いのようなものを感じられるんだよ」


「そうなんですか」


「さぁ、早く出るぞ」


「でも鍵が……」


「そんなもん要らねぇよ。どいてろ」


風刃ウインドスラッシュ


  スパァン!


  ソーマが放った風の刃は鉄格子を簡単に切断する。


「さ、出るぞ」


「クマツさんも行きましょう!」


「ありがとうございます!  七大冒険者のソーマ様!」


「様なんて付けなくて良い」


「じぁ豚野郎」


「おかしいだろ!  あぁ!?  置いてくぞてめぇ!?」


「冗談ですよ」


「はぁ、とりあえず外に馬車を用意してある。それでドワルゴンに戻ろう。お前はどうする?」


「俺は港町にでも行こうかな」


「わかった。なら別々だな」


「ハル、武器はどこだ?」


「ドワルゴンで回収されたからドワルゴンにあると思う!」


「魔法は使えるか?」


「使えない!」


「なら戦うのは俺だけだな。任せとけ」


「任せるよ」


  途中、坊主が数人出てきたが全てソーマが一瞬で倒してくれた。


  見た目はあれだけど流石は七大冒険者だな。


  そして外に出ることが出来た。


「クマツ、お前にはこの地図を渡しておく。ここに書いてあるところに行け。そこに港町まで連れていってくれるやつがいるから」


「ありがとう、ぶたやろ……ソーマ」


「なぁほんとによぉ?  わざとか?  わざとだよな?」


「じぁな!  ハル、元気でな!」


「クソ、なんなんだよアイツ……じぁ行くぞ、ハル」


「はい!」


  僕達は急いでドワルゴンへと向かった。


  急いだので日が暮れる前にドラゴン乗り場の近くまで来れた。


「お前あの町では犯罪者だからドラゴンには乗れないな……」


「じぁどうやって町まで行くんですか?」


「うーん……あ、飛ぶか!」


「え?  どういう事ですか?」


「風の力で上まで吹っ飛ぶ」


「は?  いやいや無理ですよ!  怖いですもん!」


  僕は絶叫系の乗り物が大の苦手だった。


  命の危機を感じるからだ。これなんて命の危機しかない。


「迷ってる暇は無いぞ。行くぞ……」


「……ちょま!」


  ブォン!!


  ゴゴゴゴゴゴ!!


  下から勢いよく吹き付ける風で僕達は吹き飛ばされる。


「ぎゃあああああああああ!!」


  どんどん加速し、一瞬で上にある町まで辿り着く。


「こんなもんか」


  下からの風が止まった。


「へ?」


  落ちるぅ!!


  ブォン!!


  今度は後ろから風が吹いてきて、町の方へと吹き飛ばされる。


「それで……」


  僕はものすごい勢いで町へと吹き飛ばされる。


  地面との距離がどんどんと近付く。


  死ぬっ!  まじで死ぬ!


  ビュオォォ!!


  最後に下からの優しめの風でゆっくりと着地する。


「な?  大丈夫だっただろ?」


「無傷でも心の傷が……」


  ドゴォン!


  僕があまりの恐怖でげっそりしていると火山の方から大きな音が聞こえてくる。


「何の音だ……?」


「チッ、ドラムめ……間に合わなかったか……」


「ハル!  行くぞ!」


「っ!  はい!」


  僕は音が聞こえた火山へと向かう。


「ソーマ、なにが起きてるの?」


  僕は走りながら聞く。


「封印が解かれた」


「封印が!?」


「ああ、だから早く行かないと町が壊滅するぞ……」


「早く行かないと!」


「仕方ない。飛ぶか」


「いや、それはちょっと……」


  ブォン!!


  ゴゴゴゴゴゴ!!


「ぎゃあああああああああ!!」


  何で一日に2回もこんな思いしなければいけないのぉ……


  吹き飛んだ先ではドラムがとても大きなドラゴンと戦っていた。


「ドラム!  受け止めてやってくれ!」


「は!?  どういう状況だよ!」


「ウォーターボール」


  僕の目の前に大きな水の塊が現れる。


  ドボン!!


  僕は水の塊に突っ込んで減速する。


  少し泳いで地面へと足をつける。


「手荒な登場だな!  おい!  ソーマ!」


「悪かったな!  それよりドラム、封印が解かれてるんだ?」


「それはすまない!  俺のせいだ!」


「ドラム!  あのドラゴンは何なんだ!」


  僕はドラムにそう聞く。


「あいつは伝説の龍・サラマンダーだ」


「サラマンダー!?  サラマンダーってもっとサンショウオっぽかった気が……」


「何の話をしてるんだ?  とりあえず手伝え!」


「でも武器が……」


「ゴランさんからこれを渡せって頼まれてな」


  僕はドラムから剣を貰う。


「これは……」


  鞘から抜くとその剣は少し光を帯びていた。


「さぁ感動してる暇は無いぞ。もう倒すしか無いからな!」


「人間ゴトキデハ我ヲ倒スコトハデキヌ!」


  サラマンダーも喋るのか。


「行くぞ!  ハル!  ソーマ!」


「「おう!」」

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