傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

霧の原因

  僕達は霧の濃い方へと進んで行った。


  かなり歩いたがまだまだ先は続いている。


「どこまで続いているんだ?」


「広すぎるよぉ……」


「ん?下に降りれる場所があるぞ」


「とれどれ?」


  僕は下に続いている穴を見つけた。
  梯子がかかっていて降りても上がってこれそうだ。


「行ってみようか」


「うん!」


  僕達は慎重に梯子を降りた。


「うわ、ここの方が霧が濃いね」


「そろそろはぐれそうだな……そうだ!」


  僕は鞄からロープを取り出す。


「これで……2人を結んで……」


「よし!  これではぐれない!」


「でもこれじゃ戦いにくいよ?」


「大丈夫大丈夫、敵に1回も会ってないじゃないか」


  カラカラカラカラ


「何の音だ……?」


  霧の奥からボロボロの布を纏った動く人骨が現れた。


「スケルトンよ!!」


「えぇ!アンデット系が湧くのかここ!」


「ぎゃー!!お化けー!!」


「いやお化けではないでしょ……って!!」


「ちょっとレイナ待って!ロープで繋がってるから!」


 レイナと僕の体はロープで繋がってるので引っ張られてしまう。


 レイナってそんな力あったっけ!?


 僕はズルズルとスピードを出しながら引きずられる。


  スケルトンが見えなくなるとレイナは走るのを止めた。


「レ、レイナ……」


「あ、つい、ごめんなさい!」


「あれはお化けじゃなくて、アンデットだから……」


「わかってるんだけどね、ハハ……」


「で、ここどこだ?」


  レイナは出鱈目に走ったのでどう来たのかもわからなくなった。


「とりあえず移動しようか。それとロープは外さない方がいいね、逆に」


「わかった」


  それから僕達は再び霧の濃い方へ進んで行った。途中アンデットがちょこちょこいたが何とかレイナを引き止めて倒すことが出来た。


「戦ってみれば余裕ね!」


「ハハ……」


  終始ブルブル震えていて実質戦ったの僕だけなんだけどな……
  ま、喜んでるからいいか。


  それからちょこちょこ出てくるスケルトンやゾンビを倒しながら霧の濃い方へ進むと大きな扉の前に着いた。


「ここから霧が出てるな」


「気をつけてね」


「うん」


  僕は大きな扉をゆっくりと開く。


  中から霧が溢れだしてくる。


「さぁこの霧がどこから出てるか調べよう」


「うん」


  僕達はその部屋をくまなく探した。
  すると奥にまた扉を見つけた。


「開けるよ」


「ちょっと待って!  何か聞こえない?」


  レイナがそう言うので耳をすまして見るとある音が聞こえてくる。


「ゾンビとスケルトンの鳴き声だ……」


「それもたくさんいるね……」


「構えて!  開けるよ……」


  僕は武器を手に持ち扉を開ける。


  すると中からアンデットが大量に出てくる。


「スラッシュ!  スラッシュ!」


「ファイアーボール!」


  僕は近くにきた敵をスラッシュで倒し、レイナは遠くの敵を魔法で倒していく。


  だが、どれだけ倒してもアンデットは減らない。


「キリがない!  どこからか湧いてきてるな!」


「あっちの方、何か光ってる!」


「よし行くよ!」


  僕達は無理矢理その場所へと行く。


  そこには紫色に光る宝石のようなものがあった。


  そこから紫色の霧が出てきている。


「魔力結晶!?」


「魔力結晶って?」


「とあるモンスターから稀にドロップする魔力の塊みたいなものよ」


「とりあえず壊すよ!」


「勿体ないけど、仕方ないね」


「スラッシュ!」


  僕は魔力結晶を叩き割る。


  すると霧が晴れた。そしてアンデットも湧かなくなった。


「もうロープは要らないね」


「後は残ってるこいつらを倒すだけ!」


  僕はスキルを駆使しながらスケルトンとゾンビをどんどんと倒していく。


「これで最後!」


  僕は最後のスケルトンの頭蓋骨を叩き割る。


「よし、魔力結晶の欠片を持って帰ってギルドマスターに報告しよう」


「うん!」


「で、どうやって帰ろう?」


「えー!!」




――火山の森――


「やっと出れた……」


  洞窟で帰り道がわからなくなった僕達は、あらゆる方法を尽くして何とか外に出ることが出来た。


「さぁ、町に帰ろうか!」


「ハル……後ろ……」


  振り返るとそこにいたのは洞窟に入る前、散々僕達を追いかけ回したあのドラゴンだった。
  だが違うところが一つだけある。
  あの霧を纏っていない。
  これなら倒せる!


「散々追っかけ回されたお返しだ!  スラッシュ!」


  僕はドラゴンの頭目がけてスラッシュを繰り出す。


  カキィン!!


「え?」


  ドラゴンの鱗は霧を纏っていないのに僕の脇差を弾いた。


  ドラゴンはブレスの準備をしている。


「やばいレイナ逃げるぞー!!」


「馬鹿なの?  ハル!」


「ぎゃー!!」


  僕達は何とか振り払って町に戻ることが出来た。




――ドワルゴン――


「ハル、ドラゴンの鱗は硬いんだからそう簡単に刃が通る訳がないでしょ!」


「いやだって、リヴァイアサンの時は斬れたから……」


「あれはオリハルコンの剣だったからでしょ!  もー!」


「ごめんなさい……」


  僕は叱られた犬のようにしゅんとしながらギルドに向かった。


「すみません、ギルドマスターさんおられますか?」


「おお、ここじゃここじゃ」


「霧の原因を突き止めることが出来ました……」


「それはいいが何故そんなにテンションが低いんじゃ?」


「レイナにめちゃめちゃ怒られまして……」


「ハルがドラゴンに喧嘩売るから悪いんでしょ!」


「ほっほっほ、そうじゃったか」


「それで本題ですがこの魔力結晶が霧を発生させていました」


「魔力結晶じゃと!?」


「更にアンデットを発生させていました」


「アンデットもか……じゃがこれで解決したであろう。ありがとう、クエストクリアじゃ」


「では魔鋼が頂けるんですね?」


「ああ、鉱山が再開出来るからな。魔鋼が取れるまでしばらく待っていてくれ」


「わかりました。ありがとうございます」


  外に出ると何やら騒がしい。


「七大冒険者がこの町に来たぞ!」


「【瀑布】だ!」


「七大冒険者か、ユウ、元気かな?」


「やぁ」


「え?僕ですか?」


「ああ、君だよ。話はユウから聞いているよ」


  僕に話しかけてきたのは魚人だった。顔が魚と言う訳ではなく、耳の代わりにヒレがついているといった感じだ。


「あのリヴァイアサンを倒したんだってね。凄いじゃないか」


「あ、ありがとうございます」


「そんな君に情報をあげよう」


「何ですか?」


「この町にも封印されている伝説の龍がいる。そしてそれを狙っているやつもいる。出来れば封印が解かれる前に止めて欲しい」


「僕が……ですか?」


「もちろん僕も動くよ。でも人は多い方がいいだろ?」


「わかりました。こちらでも調べてみます」


「あ、ちなみにお名前は?」


「僕はドラム。この町の中心にある宿屋にしばらく泊まるから何かあったら来てくれ。じぁな」


「わかりました」


  僕はそう言ってドラムと別れた。


  この町にも封印されている伝説の龍がいるのか……


「とりあえず宿屋に行こ?」


「そうだね、レイナ」


  僕達は宿屋に向かった。


「すみませーん。しばらく泊まりたいんですけど」


「あらいらっしゃい。部屋は分けるかい?それとも一緒かい?」


  おばちゃんがニヤニヤしながら聞いてくる。
  この世界の宿屋はみんな僕の失恋の傷を抉るらしい。


「いや別々でお願いします」


「すまないね、今一部屋しか空いてなくてね」


  なら何で聞いた!?えぇ?


「どうする、レイナ?  別のとこ探す?」


「私は……別にいいけど……」


「なら決まりだね。ゆっくりお休み」


  やっぱりおばちゃんはニヤニヤしている。      
  もう止めてくれぇ……




――部屋――


  き、きまずい……


  レイナはお風呂を上がって髪を魔法で乾かしている。


  何か髪が濡れているとやけに艶やかに見えてしまう。


「どうやって寝るの?」


  レイナが聞いてくる。


「あ、僕はソファで寝るからベッド使って」


「え、そんなの悪いよ」


「いやでも……」


「ベッド使っていいよ?」


「え、でもそれならレイナが……」


「ああもうだから!  ベッド一緒でも良いよって言ってるの!」


「えええええ!!」


「でも、こっち向いちゃダメだからね!」


「えぇ……」


「もう私寝るからね!  おやすみ!」


  不味いことになったぞ……
  良いのか?ほんとに良いのか?


  ダメな気がする。と言うかそんな勇気ない。ソファで寝よっと……


  この町は火山の町なので布団が無くても暖かい。


  疲れていたのですぐに寝ることが出来た。


「……バカ」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品