傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

ヘタレなりの守り方

「うおっ!」


死角からの奇襲にも関わらず、グランは僕の攻撃を弾いた。


「誰だ!」


「僕はハル!彼女を助けに来た!」


「助けに来た?ハッ、馬鹿かよ。俺はかの有名なグラン様だぜ?」


「お前が誰だろうと、彼女は僕が守る!」
「僕が足止めするから逃げて!」


「っ!でも…!」


「いいから!」


「っはい!」


「逃がすかよ!」
そういって彼女を追おうとするグランの目の前に立つ。


「いかせない…!」


「チッ、おい!お前が追え!」


「わかった…」


グランに言われて別の男が彼女を追う。


「お前も、いかせない!」


そう言って僕は男に斬りかかったが


「甘いな」


男は軽々と僕の攻撃を躱し、彼女を追う。


「クソっ!待て!うわっ!!」


「おいおい…俺は無視かぁ?余裕だな?」


残念だがあの男は諦めるしかない。とりあえず彼女が見えなくなるまで僕はこいつの足止めに徹しよう。


「お前だけはいかせない!」


そう言って僕は再び脇差を構えた。
グランは大剣を抜いて僕を睨みつけた。


「退くなら今だ、痛てぇじゃすまねぇぞ」


「クッ……」


僕はグランの覇気に押されてしまった。
その隙をついてグランが突進してくる。


速いっ!!


「ぐあっ!!」


僕はグランの大剣をまともに受けてしまった。胸に鈍い痛みが広がる。


「まだまだ!!」


「ヒッ…!」


「オラオラオラァ!!どうした!?助けるんじゃ無かったのか!?」


グランの容赦ない連撃が僕を襲う。一撃一撃がゴブリンと比にならないほど重い。


僕は吹き飛ばされたが再び立ち上がる。


体中が痛い。おそらく骨はどこもかしくも折れているだろう。正直もう逃げたいし、こんな痛いのは嫌だ。


「もう諦めろよ。ボロボロじゃねぇか、勝てる見込みがねぇことぐらいわかるだろうが」


「別に勝てなくていいんだ……彼女を逃がすのが僕の目的だから……」


「なんだよお前……なら、立てなくしてやるよ!!」


グランの連撃を受けてしばらくたって後ろを確認すると彼女はもう見えなくなるまで遠く離れていた。


よし……目的は果たした……もう逃げよう……
でも、逃げきれない。ましてや走れるかどうかすらわからない。


それからしばらくグランの連撃を受け続けて、そろそろ立ち上がることすら出来なくなってきたその時


「衛兵さーん!こっちです!」


さっきの女の子が町の衛兵を連れて来てくれたのだ。


「チッ、衛兵なんぞ呼びやがって……」


 そう言ってグランは森の奥へと消えていった。


「おい君!どうした、その怪我は!おい、誰か回復魔法をかけてやれ!急げ!」


隊長らしき男が指示すると衛兵の1人が出てきた。


「汝の傷を癒せ、ヒール」


そう唱えられて出た光が僕を包むと自然と傷が癒えていった。


「ありがとう、助かったよ」
僕は女の子にそう言った。


「助かったのはこちらの方です。ありがとうございました。ですが私のせいでこんなことなってしまって、何とお詫びしたらいいのか…」


「いいよいいよ、僕が勝手にやったことだし。」


「っ…この恩は絶対に忘れません!」


「オホン!さぁ、とりあえず町まで送ろう。もうじき夕暮れだからな」
僕達は衛兵さんと町へ戻った。
―――――――――――――――――――――――――
町に戻った後すぐに宿屋に行き、夕食も食べずに眠りについた。


――翌朝――


ドンドンドン


「お客さーん!用があるって人が来てるよー!」


「はーい」


そう言われたので部屋から出てエントランスに行くと昨日の女の子がいた。


「突然やってきてすみません。何かお礼をさせてください」


「別にお礼なんていいのに」


「私の気が済まないんです!お礼をさせてください!」


「…はい」


僕はヘタレなので押しが強いと断ることが出来なかった。
…でも、こんな可愛い女の子と町を歩けるって案外ラッキーなんじゃないか?そんなことを考えていると女の子は


「さぁ、行きましょう!」


そう言って宿屋を出た。


「そういや、名前聞いてなかったね」


「私はレイナです。あなたは確か…ハルさんでしたよね?」


「ハルでいいよ」


「なら私もレイナでいいです」


そんな風に楽しく会話しながらレイナと僕は1日町を回った。


「そろそろ帰りましょうか」


「そうだね。あっ、レイナ!」


「どうしました?」


「も、もし…もし良かったらなんだけど僕と…パーティーを組んでくれないか…?」


「誘ってくださるのは嬉しいのですが…ごめんなさい。実は私は、反教会派なんです。」


「反教会派?」


「はい。だから教会派のグランから情報を集めようとしたら正体がバレてしまって…」


「だから襲われていたのか…」


「そういうことです。だからあなたに迷惑をかけたくないんです。だから…ごめんなさい…」


「そっか…わかった」


そういって僕はレイナと別れた。


「わかった」なんて言ったものの教会派、反教会派の事を知らないので消化不良で終わってしまった。


やっぱり引き止めればよかった、なんて今更後悔しても遅いよな。これだから僕はヘタレなんだよ。




―翌日―


「ふああああぁぁ…」


昨日のことが気になって、よく寝れなかった…


「そんな大きな欠伸してだらしないねぇ。冒険者ならさっさとクエスト行ってきな!」


そうだ。僕は冒険者だ。クエストでも受けて気を紛らわせよう。


僕はギルドで[ゴブリンの角の納品]と
[薬草採取]のクエストを受けて西の森へ向かった。


「グギャァァァ!!」


森を歩いていると1匹のゴブリンが現れた。
ゴブリンは棍棒を振り回し突進してくる。


グランより全然遅い!


グランとの勝負のおかげでゴブリンの動きが遅く見える。


避けて……斬るっ!また避けて……斬るっ!


「グガァァァァ!!!」


来た……おそらく身体強化系のスキルだろう


「ガァァ!!」


やっぱり速い!それでもまだ対応圏内だ!


「おらあああああ!」


ゴブリンに向かって、脇差を振り下ろすといつもより威力もスピードも上がっているような気がした。


「もしや……スキルか!?」
「ステータス!」
―――――――――――――――――――――――――


名前:ハル


称号:なし


スキル:【臆病者】【スラッシュ】


ランク:鋼


―――――――――――――――――――――――――
「やっぱりスキルが増えてる!!」
「スラッシュ?どんな効果なんだろう」


【スラッシュ】刀を振り下ろす威力と速さが上がる


「よし!今日はクエストがてらスキルを試すぞ!」


それから日が暮れるまで僕はひたすらゴブリンを倒し続けた。スラッシュの使い方も身についてきた。


「さぁ、町に戻るか」




「はい!ゴブリンの角5つと薬草が10個を頂きました。えと、買取額は……4500Gですね」


「ありがとうございます。あ、ミラさん」


「はい?どうしました?」


「教会について知りたいんですけど…」


「教会ですか?えーっと、なら教会国に行ったらどうでしょうか?」


「教会国?」


「はい。この町の北の森を抜けた先にある大きな国です。」


「ありがとうございます!行ってみます!」


教会国か……反教会派があるってことはやっぱり悪いこととかしてるんだろうか……


そんなことを考えながら僕はとりあえず宿屋に戻った。

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