魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!

ユーガ

第13話『成果』

  昼間のギルドは朝、夕方に比べて人が少ない。
  基本昼間には冒険者はクエストに行っているからだ。




「セーラさん。こんにちは」


「あ、ダイゴさん。もう大丈夫なんですか?」


「まぁ魔力が回復しきってはいないんですけどそれ以外は大丈夫です」


「良かった……あ、ミリアさんとマックスさんは朝に2人で簡単な討伐クエストを受けて森に行かれましたよ」


「じぁ僕もクエストに行こうかな……」


「いけません!  昨日あんなにボロボロになってたのに……」


「でも薬草採取くらいならできますよ」


「油断は禁物です!  もしもが起きたらどうするんですか!」


  セーラさんは凄く真剣な表情で迫ってくる。
  そこまで心配してくれているのか、って自意識過剰かな。
  でもまぁそこまで言われるならやめとくか。




「じぁ……そこまで言うならやめておきます」


「はい。それとギルドマスターが盗賊団の事について話があるそうですよ」


「分かりました。では今から行ってもいいですか?」


「はい。ギルドマスターは基本暇なので」


「はは……」


  案内されたギルドマスターの部屋はギルドの奥にあって人もほとんど通っていない場所だった。
  ギルドマスターの部屋って結構人が行き来しそうなイメージだったんだけどな。


  部屋の中には偉い人が座るような大きな椅子に座っている白髪まじりの中年の男がいた。
  凄く威厳があるな……




「失礼します。ダイゴさんを連れてきました」


「ありがとう。すまんね、腰を痛めていて椅子から動けなくなってしまってね」


「それって大丈夫なんですか?」


「もう1ヶ月も続くと慣れるもんだよ、はっはっは!」


「1ヶ月って笑い事じゃ無くないか……?」


  どんだけ長いこと腰痛めてるんだよ、って言いかけたがギルドマスターなのでやめておく。




「それで、話ってなんですか?」


「ああ、君が倒した盗賊団の事なんだが……」


「はい」


  急に顔が真剣になったので俺も姿勢を整える。
  何か重大な問題でもあるのだろうか。




「何言うか忘れた」


「はぁ!?」


  ボケてんのかこのおっさん!?  
  人呼んどいて何言うか忘れたってアホなの!?




「はぁ……すみませんダイゴさん。この人はいつもこんな感じなので」


「そ、そうなんですか……」


「私から話しますね」


「あ、お願いします」


「まずあの盗賊団のバックにはある組織が関わっていました。それはご存知ですね?」


「はい、あの仮面のやつですよね?」


  我々の計画、とか言っていたからあいつの属している組織が何かしようとしているのは絶対だな。




「はい。その組織の計画はまだ分からないのですがダイゴさん、何か知っていますか?」


「えっと……確か、国王を殺せって盗賊に命令していました」


「国王を殺す!?  それは大変です!」


「ああ、これは一刻も早く王都に伝達しないとな。最悪戦争が起こるぞ……」


  おっさんヌルッと入ってきたな。
  普通に真面目な考察してるから頭の切れる人ではあると思うんだけどどっか抜けてるっぽいんだよなぁ……




「それは直ぐに伝達するとして、もう1つ。犯行の手口にかなりの問題があります」


「はい、あの箱みたいなやつですよね?」


「そうです。あれは元々は収納ボックスで、それが改造されて人も収納出来るようになっていたのです」


「なるほど……だから見たことあったのか……」


「それで問題なのが、収納ボックスを改造できる技術が仮面の組織にあるということなんです」


「そうなんだ。収納ボックスを改造出来ると言うことは他の魔道具も改造出来るということ。魔道具は基本同じ仕組みだからな。つまり、彼らは安価で手に入る魔道具を兵器に変えることも可能なのだ」


  魔道具を改造して兵器に変える……
  それはかなり危険だ。


  でも何故そんな技術がありながら自分達で国王を殺そうとせずに、盗賊達に命令したのだろうか?




「あ、それと一つ分かった事があるんですけど、あの仮面を外すと付けていた者は苦痛を代償にパワーアップするみたいです」


「仮面を外すとパワーアップ?」


「うーん……よく分からんが一種の催眠かもしれないな。元々その者を狂戦士バーサーカーにしておいて仮面で抑え込んでいるとかな」


  狂戦士バーサーカー……あるのか……
  そうだとしたら仮面の組織は仲間を道具にしか見ていない最低の集団って事だ。
  絶対に許せない!




「あるかもしれませんね」


「まぁこんな所ですね。それでは報酬の件なのですが、10万Gとアジトにあった収納ボックスの特大でよろしいですか?」


「収納ボックス貰えるんですか!?」


「はい、改造されていない普通の収納ボックスもあったので」


「ありがたくいただきます!」


  やったー!  収納ボックス貰えた!  しかも特大!
  これはミリアに自慢しないといけないな。




「以上ですね。何か質問ありますか?」


「あ、行方不明者はどうなりました?」


「全員無事に帰ってきましたよ。安心してください」


「良かった……」


「では、ギルドマスター失礼します。早く腰を治して働いてくださいね」


「あ、ああ……」


  それから俺はギルドの倉庫に案内された。
  いやー、まさかこんな所で収納ボックスが手に入るなんて思ってもいなかった。




「こちらです」


「お、おおぉ!!」


  ギルドの倉庫はギルドから少し離れた所にあった。
  倉庫は大きい、とりあえず大きい。


  天井も何十メートルもあるし、そもそもの広さも東京ドームいくつ分!  とか言われる程の大きさだ。




「えっと、確かHの13-105だから……ここですね」


「えっと、これですね?」


「はい。そちらです。10万Gも中に入れておきましたので」


「わざわざありがとうございます」


「では、戻りましょうか」


「はい」


  今日のセーラさんはいつもと少し雰囲気が違う。
  いつもの落ち着きが無いように見える。
  もっとも、表情はいつもと同じなんだが。




「……あの」


「はい?」


「昨日言っていたお礼の件なのですが……」


「は、はい!」


「今日の夜、私の仕事が終わったら良ければ一緒にお食事でもどうですか……?」


「よ、喜んで!」


「良かった……では今日は早めに終わるので日が暮れる位にギルドに来ていただけますか?」


「分かりました!」


「では、私は仕事に戻りますのでくれぐれも無理しないようにしてくださいね」


「分かりました。ではまた夜に」


「はい、また夜に」


  ニコッと笑ってセーラさんはギルドに戻って行った。
  

  ああ、人生で初めて女の人に食事に誘われた……
  これってそういう事!?  
  

  ……いや、そんな訳ないな。
  セーラさんは真面目な人だからそのまんまお礼なんだろうな。


  

  俺はやる事も無いので宿に戻ろうとして中央広場を通っていると、人だかりが出来ていた。
  気になったので近くまで行くと街の掲示板に大きな貼り紙がしてあってその内容を見て驚愕した。




「最後の魔法使いアンドレ=ウェルナードを3ヶ月後に聖教国で公開処刑だと……!?」


  師匠が処刑されるだと!?
  それも3ヶ月後?  ここから聖教会までどれくらいかかるんだ!?


  俺は落ち着いて考え事をするために宿に戻った。
  すでにミリア達は帰ってきていた。




「おかえり。もう大丈夫なの?」


「大丈夫じゃなさそうにゃ。凄く顔色が悪いにゃ」


「何かあったの?」


「……師匠が3ヶ月後に聖教会で公開処刑らしい」


「3ヶ月後……ならまだ間に合う。というか充分よ」


  間に合う?  充分?  どういうことだ?




「どういうことだ?」


「ここから聖教会まで二週間ぐらいしかかからないんだよ。今から急いで聖教会に行くより帝国都市を経由していく方がいいと思う」


「どうして帝国都市に行くのにゃ?」


「あの国は唯一の反教会都市なの。そこなら仲間を見つけられるかもしれない」


「なるほど……」


「でもゆっくりはしていられない。急いで準備して早くて明日の夜中、遅くても明後日には出発しよう」


「分かった。それを聞いて安心したよ。もしかしたら間に合わないかもって思ってたから……」


「うん。絶対に救い出そうね」


「ああ!」


  3ヶ月後か……いくら余裕があるからと言ってゆっくりはしていられない長さだ。
  待っててください師匠、必ず助けに行きます!

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