魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!

ユーガ

第11話『怒り』

「計画通りにならない奴は俺が殺す」


「お前らあんな炎なんかで怯むな!  こっちの方が数が多い!」


  アンジェロは完全に我を忘れている。
  額に浮き出る血管なんてもうはち切れそうだ。


  数だけ見ると盗賊団が明らかに有利だがさっきの攻撃を見るにアンジェロはかなり強い。
  恐らくだが、アンジェロは一人で数百人の盗賊を全滅させるだろう。


  あいつが黒幕だと思っていたがあいつも何かの組織に属しているみたいだ。
  とりあえず情報を聞き出さないと。




「ミリア、マックス。一般人が外に出るのを手伝ってやってくれ。それと出口までの誘導も」


「分かった。けどダイゴはどうするの?」


「俺も誘導をするがアンジェロ、あのさっきの炎を出した男を止める。そして情報を聞き出す」


「大丈夫?  あいつ凄く強いよ、多分」


「ああ、でも情報を聞き出さないと黒幕が分からないだろ」


「そうだね……とりあえず誘導しよっか!」


「おう!」


  それから俺達は一般人の元へと走った。
  男達は盗賊と戦っていて女性や子供はその後ろに隠れている。
  男達は冒険者だったのだろうか、かなり動きが手慣れている。




「俺に任せてお前達は外に!」


「あんたは!?」


「俺は冒険者のダイゴだ。そこにいる女がミリアで猫がマックスだ。彼らについて行ってくれ。盗賊は俺が何とかする」


「すまねぇ、ありがとう!  よし、お前達行くぞ!」


「ありがとうございます!」


「お兄ちゃんありがとう!」


「おう。気をつけろよ。まだまだ気を抜くのには早いぞ」


「ありがとう!」


  ミリアとマックスが一般人の前と後ろに立ち、出口に誘導する。
  あの二人なら下っ端盗賊なんかには負けないだろう。


  少しホッとしていると俺達が一般人を逃がしていることに気づいた盗賊らがこちらに向かってきた。
  剣や棍棒などを持っているのを見るに完全に敵と見なされてるな、まぁ敵なんだけど。




「てめぇ何勝手に商品を逃がしてるんだよ!!」


「誰だ貴様!  どこから入った!」


「質問が多いな。俺は冒険者だから市民は解放する。それだけだ」


  俺は剣を抜いて攻撃を受け流しつつ、片方の男に足を掛ける。
  バランスを崩した1人は勢いよく転けた。
  そしてもう1人を掴み、持ち上げて転けた男に叩きつける。




「ごはっ!」


「来るなら来い!  俺が相手だ!」


  俺は後ろに待機していた盗賊達を威嚇する。
  仲間が呆気なくやられたことで及び腰になっているようだ。




「ひぃっ!  やべぇぞこいつ!」


「大人数で囲め!  数の力で押すんだ!」


「おおおおお!!」


  今度は一気に十数人が俺を囲むようにして向かってきた。
  

  アンジェロと戦う時のために温存しておきたかったんだが仕方ない。使うか。


  俺は魔力を用いて周囲の風に干渉する。
  そして明確なイメージをもって魔法名を叫ぶ。




「【デュアルサイクロン】!!」


  俺が魔法を発動すると俺を中心に2つの竜巻が発生する。
  竜巻は盗賊を追いかけるように移動し、高く巻き上げては地面に叩きつける。


  これで一気に数十人の盗賊が戦闘不能になった。
  さて、だいぶ減ったがアンジェロの方はどうなっているんだ?
  ずっと悲鳴が聞こえてくるが……




「散れ!  一点に集中するな!」


「ふはははは!  無駄だ。【炎の蛇フレイム・サーペント】」


  アンジェロが剣を振ると剣から炎が吹き出し、縦横無尽に移動する。
  炎はアンジェロの周りを一周し、アンジェロを囲んでいた盗賊達を一気に焼き尽くした。


  炎を自在に操るのか……強いな……


  そう考えているうちにアンジェロと戦っていた盗賊がかなり減り、数人になってしまっていた。




「化け物……に、逃げろぉ!」


「逃げる……?  馬鹿を言うな、お前達の恩人は誰だ?  恩人には恩返しじゃねぇのか?  ああ!?」


「ぎゃああああ!!」


「やめてくれー!!」


  こいつらが極悪非道の盗賊でもこれは見てられないな。
  盗賊達に戦う意思はもう無いみたいだし行くか。




「恩を仇で返す奴には天罰を!!  死ねぇぇぇ!!」


「いやだああ!  まだ死にたくないぃぃ!!」


「結界魔法、展開!」


  俺は目の前に大きめの結界を発動する。
  アンジェロの炎が俺の目の前で止まる。




「何だお前、俺とやろうってんのか?  悪いが今は虫の居所が悪くてなぁ?」


「ああ、その通りだ。お前には聞きたいことがあるからな」


「じぁ無理矢理にでも聞き出してみな。出来るならな!!」


  アンジェロは低い姿勢で潜り込むように向かってくる。
  俺はサイドステップでそれを避け、振るわれた剣を弾く。




「【炎の蛇フレイム・サーペント】!」


  アンジェロは剣を突き出し、炎を繰り出す。
  剣が炎を纏い、こちらに目掛けて向かってくる。




「【水砲ウォーターキャノン】」


  俺は水が勢いよく吹き出すダムをイメージする。
  俺は手を突き出し、水を繰り出す。
  

  勢いよく吹き出る水と轟々と音を立てて燃える炎がぶつかり、どちらも消えた。




「それは……魔法か?」


「ああ、魔法だ」


「魔法使いはアンドレ=ウェルナードで最後だったはず!  それなのに何故!」


「俺がアンドレ=ウェルナードの弟子だからだ」


「弟子だと……?  なら尚更ここで殺しておかないといけないな!  この世界に害をなす魔法使いは死ななければならない!」


  アンジェロは炎を纏った剣を振り下ろす。
  俺はそれを刀身で受け止める。


  バチバチと火花が舞う。
  炎の熱気で俺の額にはダラダラと汗が流れる。


  くそっ、凄いパワーだ……身体強化してもキツイぞ!




「魔法使いが世界に害をなすだと?  そんなもの迷信だ!」


「迷信だと?  大司教様の預言を迷信等と言うな!!」


  すると、アンジェロの剣を押す力が増す。 
  

  ダメだ、力じゃかなわねぇ!  ならば!




「パラライズショック!」


「ぐおっ!?」


  俺は剣を受け流しつつ、麻痺電気を纏った拳でアンジェロの腹部を殴る。
  バリバリ、と電流がアンジェロの体に流れ、アンジェロは力なく地面に倒れ込んだ。




  俺はこちらを睨みつけているアンジェロに向かって歩く。
  さっき剣を受け流し切れなかったので肩にそれなりの傷を負ってしまった。




「卑怯だぞ……!」


「戦いに卑怯もクソもあるか。さぁ、質問に答えて貰おうか」


「誰が貴様なんかの質問に答えるか!  俺は決して折れんぞ!」


「そうか。じぁとりあえず仮面を外すか」


  俺はそう言って手を伸ばした。
  こいつの仮面はどこか怒ったような表情に見えるな。




「止めろ!  それに触れるな!」


  仮面を外す、と言った途端にアンジェロの声に明らかに動揺が感じられた。
  これは何かあるな……揺さぶってみるか。




「何故だ?  顔を見ないと話が出来ないだろ?」


「仮面をつけたままでも話は出来る!  だから仮面は外すな!」


「そんなに必死になってどうした?  何か見られたくないものがあるのか?」


「無い!  何も無い!  だから気にするな!」


  うーん、明らかに怪しい……これは絶対何かあるな。
  よし、外してみるか!




「そこまで言われると外したくなるな。ほれっ!」


「やめろおおお!!」


  俺は男の仮面を外した。
  

  顔に酷い傷跡があったりだとか物凄く不細工だったりとかそういう事かと思っていたが特に何も変わった所はない。
  それなのに何故あんなに仮面を外す事を恐れていたんだ?




「ほら、別に何も無いじゃないか。さぁ質問を始めるぞ」


「ダメだ……うっ、抑えきれない!  落ち着け……はぁはぁ……やめろ、出てくるな……!」


「ど、どうした?」


  男は仮面を外した途端、苦しみ出した。
  見た感じ特に酷い外傷は無い。
  しかし、とても苦しんでいる。




「お前のせいだ……!  お前が仮面を外すから……ダメだ、もう抑えきれない!  うあああああああああああぁぁぁ!!」


「何っ!?」


  突然、アンジェロの魔力量が激増する。
  急激な魔力上昇でアンジェロから衝撃波が起こり、俺は吹き飛ばされる。


  一体、何が起こったんだ!?




「はぁ……はぁ……力が漲る!  はぁ……溢れ出しそうだ!」


  アンジェロは呼吸を荒らげて自分の力を試すように周りのものを壊している。
  何の魔法も使わない拳で壁や床を割っている。
  とてつもないパワーだ。


  恐らくあの仮面が外れた事がキッカケで内に秘められた力が解放されてしまったみたいだ。
  やっちまったな……




「あぁ……頭が痛い……!  お前のせいだ、お前のせいだあああああぁぁぁ!!」


「結界魔法、展開!」


  俺は咄嗟に目の前に結界を張る。


  アンジェロは数百メートル離れた所から一瞬で俺の目の前まで移動し、結界を殴る。
  結界はパリィンと音を立てて簡単に割れてしまった。


  なんてスピードとパワーだ!  反応がギリギリだ!




「お前のせいだ!」


「ごはっ!!」


  結界を割ってすぐ、アンジェロは俺の腹部を殴る。
  重すぎる衝撃が体に走る。
  ミシミシ、と言う音と共に肋骨が折れた感覚がする。




「ごほっごほっ!  くそ……【ヒール】」


  俺は腹部にヒールを掛けて痛みを和らげる。
  ヒール程度じゃそこまで回復出来ないが、魔力を浪費したくない。痛みは我慢だ。




「はぁ……はぁ……お前は殺す……いや……皆殺す」


  アンジェロは拳に魔力を込める。
  超高濃度で尚且つ大量の魔力でアンジェロの拳が燃え上がる。


  あの炎、並の付与術じゃない!


「今度こそ……殺す」

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