魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!

ユーガ

第5話『再び』

「目指すは商業都市ラッカーナ!  行くぞー!」


「……」


「そこはおー!  って言わないと!」


「おー」


  ミリアめちゃくちゃテンション高いなぁ。
  そんなに冒険出来るのが嬉しいのか?




「何だか夢への第一歩を踏み出せた気がして嬉しいよ!」


「そうだな。で、ラッカーナってどこにあるんだ?」


「無知!?  ダイゴって何も知らないの!?」


「ずっと師匠の所に住んでたから……」


「ラッカーナはこの街道を真っ直ぐ行った所にある港町だよ。ラッカーナはその名の通り商業が盛んなんだ!  そこで冒険者パーティーに必要なサポーターと出来れば収納ボックスも手に入れたいんだ!」


「おぉー、大体分かった。さすがリーダー」


「え?  リーダーはダイゴだよ?」


「俺?  いや、この世界の事をよく知ってるミリアが適任だろ」


「でも、ダイゴの方が強いからね」


「そんな感じでリーダーって決めるのか……?」


「とりあえず急ぐよ!  馬車が出てる中継地点までは歩きだから!」


「おう」


  しばらく歩くとちょっとした集落見たいな場所に着いた。
  ここからは馬車に乗るのか。
  当たり前だけど馬車は初めてだな。




「よう嬢ちゃん、ラッカーナに行くのかい?」


「えぇ、乗せてくださる?」


「おうよ!  そっちの兄ちゃんも乗ってくのか?」


「ああ、頼む」


「じぁ、後ろに乗りな。すぐに出発するぜ」


  俺達は言われた通り、後ろの荷台に乗った。
  何故荷台なのかと聞くと、普通の馬車は高くて到底平民には乗れる額ではないみたいで荷台なら無料で乗せてくれるらしい。
  乗り心地はかなり悪いがな。




  俺はもう日も落ちていたので馬車の中で眠っていた。
  

  しばらく寝ていると、俺は外から怒号が聞こえてきたので目が覚めた。




「……ミリア、何事だ?」


「盗賊よ……今運転手さんが全力で逃げてくれてるけど、それも時間の問題ね」


「そうか。ちょっと外に出てくる」


「え、待って飛び降りると危ないわよ!」


  俺はミリアの制止を無視し、荷台から飛び降りる。
  着地をバッチリと決めて、振り返ると黒い馬に乗った盗賊が馬車を取り囲むように並走していた。




「ヒャッハー!  諦めて馬車を止めな!」


「嫌だ!  このお菓子を待っている子供達がいるんだ!」


「お菓子ぃ?  嘘をつくなよ、知ってるんだぜ?  魔道具がのってる事はよぉ?」


  あの無造作に置かれていたのは魔道具だったのか。
  ただのガラクタだと思ってたわ。


  とりあえずリーダー格のあいつを潰すか。


  俺は身体強化を使い、走る。
  馬より速く走れるのでどんどん盗賊との距離が縮まる。




「【魔力斬】」


  俺は斬撃を飛ばす。
  飛ばした斬撃は馬の足に命中し、馬は転ける。
  馬が転けたので盗賊は投げ飛ばされ、地面に打ち付けられる。




「なんだっ!?  何が起きた!」




「敵襲で――ぐあっ!」




「ひぃぃー!  ぎゃー!!」




「オラァ! ―― へぶしっ!」


  俺は【魔力斬】で次々と盗賊を倒していく。
  しかし、リーダー格の男は馬から落ちても無傷だった。




「てめぇ……何者だ!」


「俺はダイゴ。これに懲りたらもう盗賊なんて辞めるんだな」


「はっ、仲間共を倒したからって調子に乗るなぁ!!」


  男は腰からナイフを抜いて迫ってくる。
  見た目に反して素早い動きだ。


  俺は男が振り回すナイフを軽々と避けていく。




「くそっ!  くそっ!  何で当たらねぇんだよ!」


「動きが単調で読みやすい。まだまだだったな。【魔力斬】」


「ぐおおおお!!  腕が……腕がぁぁぁ!!」


「まだやるか?」


「……化け物……ひぃぃぃー!!」


  盗賊は片腕を切り落とされて戦意喪失し、そのまま森の中へと逃げていった。
  あの様子だと魔物に襲われて勝手に死ぬだろう。




「おーい、大丈夫かー?」


  俺は運転手に駆け寄る。
  幸い怪我は無いみたいだ。




「あんた……強かったんだな……」


「まぁな。もう大丈夫だから早くラッカーナに向かってくれ」


「ああ、明日の朝には着くと思うからそれまで寝ててくれ。ありがとうな、あんたは命の恩人だぜ」


「どういたしまして」




「ダイゴ、大丈夫?」


「ああ、一発も攻撃受けてない」


「びっくりするぐらい強かったね……」


「何、あれくらいの盗賊なら簡単に倒せる。ミリアだって余裕だぞ?」


「そんな勇気でないや……じぁおやすみ!」


「あ、あぁ……おやすみ」


  何かよそよそしくないか?
  もしや盗賊殺したから怖がられてる?
  まぁいいや、寝よ……






――翌朝――


「着いたぜ兄ちゃん達!」


「んー?  あ、もう朝か……」


「むにゃむにゃ……美味しそぉ……」


「こら、起きろミリア」


  俺は寝ているミリアにデコピンする。
  全く……こんなに寝心地が悪いのによくここまで気持ち良さそうに寝れるもんだ。




「痛ぁっ!?  あれ? もう着いたの?」


「ああ。ありがとう、助かったよ」


「助かったのはこっちの方よ。もう少しでこの魔道具達がアイツらの手に渡る所だったよ」


「魔道具を売ってるのか?」


「俺は店を出してないが魔道具を売ってる店に卸してるのさ」


「なるほど。じぁまた」


「おう、兄ちゃんらも元気でな!」


  俺達はとりあえず街の中心に向かった。
  

  本当にこの街は商業が盛んで、至る所で店が出ていた。
  人通りも多く、かなり活気に満ち溢れている。




「とりあえずギルドでサポーター募集の貼り紙でもしましょうか」


「そうだな」


  ギルドは街の中心部にあった。
  大きな街だからか、かなり賑わっていて上の階の酒場からも大きな声が聞こえてきた。


  俺達は掲示板に向かった。
  掲示板にはクエストを一緒にやるメンバーを募集したり、パーティーの仲間を募集したりするためのものだ。




「えーっと、サポーター募集・連絡はギルドを通してっと……」


「出来たか?」


「えぇ。これで志願してくれる人を待つか、自らスカウトするかね」


「とりあえずクエストでも受けてみよう。どんなんがあるんだ?」


  クエストボードを見てみると結構な量のクエスト用紙があった。
  その内容は様々で探し物や採取、探索や討伐といった種類がある。




「とりあえずこれを受けてみるか」


「なになに……グレイベアーの牙五個の納品、って大変過ぎるでしょ!?」


「そうか?  倒すのだけなら簡単だぞ?」


「いや、まぁ私でも何とか倒せるんだけど牙がかなり貴重ですぐに腐ってダメになっちゃうのよ……」


「牙が腐る……?  よく分からんが止めとくか」


「うん、そのクエスト受けたいならやっぱり収納ボックスがいるわね」


「ならまずそっち見に行くか」


  俺達は結局クエストを受けぬままギルドを出て、収納ボックスを扱っている店に向かった。
  どれも大きさはリュック程度なのだが値段がそれぞれ一桁ずつ違う。




「いらっしゃい。どのような収納ボックスをお探しですか?」


「容量が大きい物が良いわね……」


「サイズは小、中、大、特大とございましてお値段は小さい順から1000G、10000G、100000G、1000000Gとなっております」


「やっぱり大きいのは高いわね……」


「そもそも収納ボックスってなんだ?」


「収納ボックスっていうのは魔道具の一種で沢山の物を入れられるのよ。重さもそこまで無いから冒険者の必須アイテムなのよ」


「へぇー」


「とりあえず一通り見たからまた今度決めてから来ますね」


「はい、お待ちしております」


  ミリアはそう言って何も買わずに店を出た。
  結局買わないのか?




「買わないんだな」


「小さいのを買っても意味無いもの。出来るならば大くらいは買いたいんだけど何にせよお金が無いからね」


「現在の所持金は?  俺はゼロなんだが……」


「一万よ。それより、ゼロってどういうことよ!  さっさと簡単なクエストでも受けて稼いできなさい!  その間私は必要な物買ってくるから!」


「はぁーい……」


  俺はミリアに怒られたのでホーンラビットの角10個の納品という簡単めなクエストを受けて森に入った。




「ここら辺の筈なんだけど……あれか?」


  俺は受付嬢さんに教えて貰ったホーンラビットの生息域に来ていた。
  しかし、目の前に見えたのはウサギと言うよりかは熊に近い程の大きさの生き物だった。
  だが、頭に角が生えているのを見る限りあいつがホーンラビットだろう。




「思ったよりデカいけど……とりあえずやるか!」


  俺は身体強化でホーンラビットに接近する。
  すると、ホーンラビットは角をこちらに向けて突進してきた。


  ありえない程の加速で一気に速度を上げたホーンラビットはゴゴゴゴゴ、という音と共に一瞬で俺に肉薄する。




「ちょ、速っ!!」


  俺は風魔法で体を横に移動させ、何とか避ける。
  あの巨体であのスピードが出るのかよ……




「速い敵には……サンダー!」


  俺の目の前に魔法陣が出現し、眩い光と共に雷鳴が轟く。
  あまりの眩しさと音に目を耳を塞ぐ。


  目を開けるとホーンラビットが丸焦げになっていた。




「角は……ギリギリ無事かなぁ」


  俺は角を回収して、次のホーンラビットを探す。
  すると、少し先に人影が見えた。
  よく見ると3人がかりで一人を虐めてる見たいだ。
  ん?  あれ猫じゃね?




「おーい、いじめはかっこ悪いぞー!」


  俺はとりあえず助けることにした。
  そいつらに近づき、止めさせようと肩を掴んだ。




「あぁ?  んだよ、関係ねぇだろ?  あっち行ってろ、雑魚!」


「あ?」


  あーもう絶対許さない。こいつら全員ボッコボコにしてやる。
  俺は雑魚と言った奴を殴る。
  身体強化で力を底上げしてるのでボコッと鈍い音がして男は吹き飛ぶ。




「やんのかてめー!!」


「よくもリーダーを!」


  リーダーが殴られて他の2人も殴りかかってくる。
  俺はその拳をそれぞれ片手で受け止める。




「どうした、こんなもんか?  俺が雑魚だったら雑魚にこんなにやられるお前達は何なんだぁ!?」


「ひぃ、ごめんなさいもう許してくださいぃ!!」


「ブクブクブクブク……」


  ちょっと声に魔力を乗せて威圧すると片方は命乞いを始め、もう片方は泡を吹いて気絶している。
  この辺にしといてやるか。




「良いだろう、許してやる。もういじめはするなよ」


「ごめんなさいぃー!!」


  男は伸びているリーダーと泡を吹いているもう一人の男を引きずって逃げていった。




「大丈夫か?」


「ありがとにゃ。獣人だからって絡まれて困ってたにゃ」


「大変だな。さぁ、街まで送ってやる。っとその前にクエストしないとな……」


「クエスト?  もしかしてお兄さん冒険者?」


「そうだけど」


「僕を仲間にして欲しいにゃ!  絶対役に立つにゃ!」


  今度は猫が仲間になりそうです。
  やっぱり可愛いなぁ。

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