神の使徒

ノベルバユーザー294933

第七話 「大森林②」

リリエールの告げた言葉通りに木々の合間を縫うように抜けて、俺は彼の言っていた場所に到着する。そこには数十人単位で人が集まっていた。身なりを見る限り普通の一般人ではない…。

「報告します! ブラディティカール遺跡は既に完全に倒壊し、内部の状況を確認するのにも困難を極める状況です」

そう言って、白の鎧を着た騎士の男が、相対する白鎧の男へと、何か、凄く心当たりのある事柄を話していた。

「そうか…。だが中を確認しなければ神子様方にご報告すらできぬ。魔法兵を総動員しても構わん! 警備隊のみ残して瓦礫を退かすのを最優先としろ!」

「はっ! 了解しました!」

上司の野太い声と共に、部下の騎士は敬礼し駆け出して行く。その後ろ姿を見送り、男を見やりながら、ふと考える…。
今話していたのは、俺が初めに転移してきた、あの遺跡だよな…。ブラディティカール遺跡って名前なのか、だがその名前にはよく聞き覚えがあった。
そう、後ろでニヤニヤしながら彼等の様子を眺めているリリエール・ヴィ・ブラディティカールだ。名前が一言一句同じ、絶対関係あるよな? 
彼が封印されていたから、彼の名前を冠する遺跡だったということか? まぁ聞いてみるか…。

「おい、今あいつらブラディティカール遺跡とか言わなかったか?」

「言ったね。僕が封印から解かれたのを知った誰かが、調査隊を送り込んできた。あるいわ、僕を殺すために討伐隊を送り来んで来たそんな所かな?」

「まじか………。って、そうじゃなくてだな、なんであの遺跡がお前の名前になってたんだ?」

「さぁ? 僕を捕まえた奴が分かりやすくする為にそう名付けたんじゃないかな?」

つまり、分からないと…。まぁ、もう倒壊した遺跡など意味はないか。

それより、この騎士団だな。リリエールのことを知っていて来たってことなら…。彼を封印する方法も知っているはず、なんとか接触しなくては…。

「なあ、リリエールさん」

そう、俺は彼に話しかけると。

「僕を再封印したいから、彼等と話してもいいかいだって? 君僕に喧嘩売ってんの? 買うよ?」

「………は?」

ちょ、待てよ、そんなことは言ってないはずだ。どうやってそんなことを知ったんだ…。
すると、彼は俺の疑問に答えるようにして自身の頭を人差し指でトントンと小突く、その瞬間…なるほど、と息を呑んだ。

『思念接続(テレパス)、これで君の頭の中を限定ではあるけど読み取れる。何か良からぬことでも考えたら一発で見破れるから、そのつもりで』

そう、彼の言葉が直接頭に響いてきたのだ。
おいおい、まじかよ。ハハハ…これじゃ何もできないな。
ふざけんな! でたらめな奴め! 人間お互いの思考が読めないからこそ、互いを知ろうとする、コミニュティを築く。話術、詐術、全て会話を成立させるために重要な事柄なのです。
いいか! つまり俺が何を言いたいのかというと!

『とりあえず静かにして…五月蝿いよ』

怒られた…。

「まぁ、でも、それしか手はないかな、いいよ、その手に乗ってあげる。聞いてみたらどうかな? 話術を使って、ね」

彼はにこやかな笑みを浮かべて俺を促す。
ふむ、お互い手はない。よしよし、それなら何か有用な情報でも聞きに行きますか。
俺はゆっくりと草むらから立ち上がってガサガサと音を立てながら騎士達へと近付いて行った。

もし、上手く立ち回れば結果的に聞けるかも知れないな…封印について。
フフフ…俺はニヤリと顔を歪めた。

俺が草むらから出て行くと、気づいた何人かの騎士が俺へと近付いてきた。
まずは相手に警戒させないために笑顔を作ることに意識し、俺は笑顔を強調して彼等へと話しかけた。

「やぁやぁ、俺は異世界人の柴田・敦、すまないが、よく分からない場所にいきなり転移させられてな、此処が何処だかよく分かっていないんだ…。助けて━━━」

「ぬぅぅぅん!!」

言い切る前に、騎士の野太く荒い声が響き、人の顔大はありそうな、その右拳が俺の顔面に炸裂する。

どうしろと?

俺が宙を舞い、地面に倒れ伏す頃、リリエールの笑い声が頭に響いてくる。

だから、言ってるだろう? 
人はまず話し合うべきなんだと…。
俺の意識は笑い声と共に刈られていった。


















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