神の使徒
第一話 「使徒の仕事」
「では、よろしく頼む新しい私の使徒君」
言われて俺はその場に膝を突き頭を垂れた。なぜか自然とそう体が動いた。前世でそんなこと全く誰に対してもしたことがないにもかかわらず。これは使徒になったゆえの強制力なのだろうか?
「はい、マスター」
淡々と俺は言葉を述べる。
神はそれを聞き、頷くと。
「早速ではあるが…君にはこの世界へ行ってもらう。世界名「460………」まぁ長いね、別名「イシュルベル」という世界だ。数千億もの可能性を秘めたる世界の一つであり私という神を脅かすほどの存在が蔓延る世界だ。君には使徒として、この脅威となりえる存在の排除、あるいは監視と管理を任せたい。先に行った、同胞三十人ほどの使徒達と共にね」
「…使徒は俺だけじゃないんですね?」
率直に思った。世界を任せると言われたので手付かずの所へ行くのかと思っていた。
「それでもいいなら他の場所へ行かせるが…君は何もない場所でまず一人で暮らせるかい? 便利な器具道具、はたまた技術、娯楽快楽、それがない状況で仕事ができるかな?」
それはつまり俺の前世での生活が石器時代まで戻るということか?
しかもほとんど一人で?誰の助けも借りずに?
「すみません…できる気がしません」
そう言うしかなかった。普通に現代で利便性溢れた生活をしている一般人がはるかに時代の劣った場所で生きていくことはできない。
逆にはるかな未来もまた然り、便利という習慣毒はおそらく俺を堕落に落とすだけだ…。
「できること、できないことはよく理解しておくことだ…でなければ死ぬよ」
「は、はい…」
「ああ、それと三十人の同胞と言ったがそれは正確ではない、私は今までに数千人もの使徒を送り込みこの世界を監視してきた。この世界は、その数千人が散って行った場所でもある。それをよく覚えておくことだ」
言われ、仕事のハードルが急激にあがったと思った。無理な仕事を新人に押し付けているのか? そう思えてならないほどだ。
「しかし、犠牲があったおかげでこの世界はかつて管理をし始めた頃に比べればかなり穏やかで安全な世界になった、文化レベルもほぼ君の世界と似通っているからね」
とそう言ってもくれたので確かに仕事にも安心感はできてくる。
ただ…。
「えと、神を脅かす存在にどう立ち向かえば?」
一番の問題だった、神自身がさっき言った。この世界には、自身すら脅かす存在がいると。そんなでたらめな化物にどう対処しろと?
「努力と根性、後は才能だ」
「…」
それは正確に訳せば…俺に1から考えてやれと? 無理だ…。
押し黙る俺に神は何も告げずに手の平を向けた。
「…え?」
「話しをする時間も惜しくなったのでな、後は転移先の世界の使徒達に聞くといい。仕事の術を、な《神・世界転移》」
眩い光が俺の視界を覆い尽くした…。
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