獲物

蜘蛛星

正義おばけ(裏)

私はなんのために生きているのだろう。世界はこんなに美しいのに、どうしてこの社会はこんなに汚いのだろう。

教室に入ると、クソみたいな奴らがクソみたいなことをしてクソみたいに笑ってた。気持ち悪い笑い声。死んで欲しい笑い声。私はそんなクソ女郎共にキャンディーを配ってまわった。誰でもよかった。死んでくれるならこの中の誰でもよかった。
ロシアンルーレットのようで、しかしそれは私だけが理解している。それが随分と滑稽に思えた。
キャンディーを配り終え、クソ猿共がそれを口にする前に私は学校をばっくれた。

清々しい気分だった。
だから、少年に話しかける気になったのだろう。
私は彼に話しかけてよかったのだろうか。
彼は正義を愛した純粋無垢な少年だ。
こんな汚い私が、関わってよかったのだろうか。

少年は私をおばけと呼んだ。私は彼を少年と呼んだ。お互い名前も素性もほとんど知らないまま、たくさんの場所へ出かけた。
私が行きたかったところだった。
塀の中へ行く前に、行きたかったところだった。

親は私を愛していたのだろうか。私の言葉を否定する両親は、私を愛していたのだろうか。私は、どこで正義を履き違えたのだろうか。正義が、私を守るための正義が、私を傷つけ始めたのはいつからだろうか。

夕焼けに焼き殺される町は無様でとても好きだ。ふと、少年がこちらばかりを見ていることに気づく。汚い私を見透かされているようで、こちらを見てほしくなかった。

「おばけの方が美しいよ。」

彼はもうこちらを見ていなかった。ただそれだけが幸いだった。私はその言葉を噛み締め、深呼吸をする。自然と笑いが込み上げて、私はなぜか泣いていた。

死にかけの町が、冷ややかな目で私を見た。





朝、テレビを付けるとおばけが映っていた。相変わらずの不敵な笑顔だった。

『昨日午前、〇〇高校にて女子生徒数名が死亡した事件で、警察は事件に関与した疑いがあるとして、同校の女子生徒を殺人容疑で逮捕しました。容疑者は容疑を認め、「本当は学校を出てすぐ自分も死ぬつもりだった」などと供述しています。』

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