獲物

蜘蛛星

宇宙航海日誌

僕は、小指を見つめる。
彼はまだ生きているだろうか。
水も食料も
帰りのエネルギーも積まずに
宇宙の果てを見つけるだけの船。
障害物を避けるためだけに
必要だった操縦士。
誰も彼を止めなかった。
僕も止めなかった。
ただ、きっと寂しいだろうからと
僕の大切な鉛筆を渡した。
彼はあの日、海へ行こうと言った日
その時と同じ顔で笑っていた。
彼が飛び立ってから四日が経った。
人はたったそれだけの期間
水分を取らないと死ぬらしい
彼はもう死んでいるだろうか。
僕は小指を見つめる。

口から、涙の代わりとでも言うように
言葉が溢れていた。

「友よ、我が最愛の友よ、もし願いが叶うのなら、もう一度だけ君と海へ行きたかった。ああ友よ、どうして僕は君を止めなかったんだ。それは君の笑顔が輝かしかったからだ。なあ、あの日と同じだ。僕は、君の笑顔を止められなかった。」

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