【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

人類の罪過(27)




「……どういうことだ?」
「それは……」

 そこで初めて怒りの感情を山岸鏡花さんに向ける天照。
 そして、その視線を向けられた鏡花さんも戸惑いの表情を見せていて――。

「何も知らなかったとは言わないじゃろうな? ――いや、むしろ知っていたからこそ、その者を……、世界と滅ぼす切っ掛けを作った者の道化を連れてきた……、そういうことじゃろう?」
「……」
「それを知っていた――。それなのに、この場まで連れてきた。それも、手間を――、前世界の在り方と見せて」
「……」
「何も話さないつもりか? 当代の巫女よ。何も返答しないという事は、全てを肯定と見なす事になるが?」
「…………私は、兄を……」
「そうか。助けたかった……。そういうことか? 実の――、血の繋がっていない……。否! 生物として異なる存在を」
「私は!」

 天照の言葉を遮るかのように鏡花さんは声をあげる。
 ただ、その言葉は、続かない。
 
「アマテラスさん」
「何用か? 佐々木望。いや、ただの道化に過ぎない者よ」

 道化? 私が……。
 鏡花さんを追求しようとした天照と言う女性の言葉を遮った私を蔑むように見下しながら語りかけてくる女性。
 
 そして――、その言葉の中にある道化という言葉。
 さらには世界を滅ぼす切っ掛けを作ったという飾りの一切無い事実とも言える内容。
 違う……言葉だけなら事実だとは私も理解はしなかった……、理解できなかった。
 だけど……、この世界の佐々木望の体の中に入って全てを見て来た私にとって、天照が語った内容は本当の事だと分かってしまう。
 だからこそ、私は口を閉ざしかけた。

「私が……、道化とはどういう意味ですか?」
「決まっておろう? どうして、大して教養もない人間が神代文明時代の文字を読むことが出来た? ――否。どうして前文明時代の文字を読むことが出来た? つまり、そういうことになる」
「それは……、私が入っていた佐々木望という――、もう一人の私が読めたからでは……」
「それはない。全ては――」

 そう、天照さんが言いかけたところで「星の導きというところじゃな?」と、狂乱の神霊樹が私達の会話に割って入ってきた。

「神霊樹さん?」
「問題ないのじゃ。それより、招集された者が、そこまで語るとは随分と大きく出たものじゃ」
「貴様――」
「言葉に気を付けるのじゃ。星の迷宮に封印された原初の精霊神の妾と、汝では存在の在り方は一緒だが、妾の方が存在率は上なのじゃ」
「……え? どういう……」

 原初の精霊神? 天照大御神と、同じ存在? それって……。

「主よ。そのままじゃ。妾と天照……、そして月読――、主が鬼と呼んでいた存在。そして月読を含む全ての神々と人間や生物。それらは全てが一つの――、否。同じ存在なのじゃ」




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