【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

人類の罪過(24)第三者side




 その……変える事ができないという言葉に、思わず……私は無言になってしまう。
 それと同時に終わった世界という意味。
 それは実際に、起きた出来事を指してあるであろうことは想像に難くない。
 
 ――でも、それと同時に……、ある疑問が私の中で首をもたげる。

「鏡花さん」
「何?」

 彼女は、私の横をすり抜けて、まるで行先を知っているかのように歩みを止めることはない。
 それはまるで……。

「これは何?」

 思わず、擦れ違い間際の彼女――、鏡花さんの手を掴んでいた。
 
「貴女は、私を試すような事をしているんですか?」
「……」
「答えてください。起きた出来事を追体験させるなんて、それって――、私に……」
「ええ、そうよ」

 鏡花さんは、小さな溜息を共に私の問いかけに答えてきた。
 それと共に――。

「どうして……、どうして!」

 自分の感情が高ぶるのを抑えることが出来ない。

「鏡花さんは言いましたよね? 手順を踏まないとダメだって! でも、それ以外にも方法はあるんじゃないんですか? もっと早い段階で手を打つとか!」
「だから言ったじゃない。手順を踏まないとダメだって」
「でも! それでも!」

 食い下がったところで、掴んでいた腕を振りほどかれる。

「貴女、何も変わっていないのね」
「――え?」

 静かに――、それでいて……、まったく感情が抜け落ちたかのような言葉に私は彼女の顔に視線を向けた。

「全て、貴女が原因なのに……、そこから目を背けて何も見ずに只、誰かのせいにする。だから、こんな結末になったのに、貴女は何も変わらない」
「……それは」
「自分には関係ない――、そう言いたいの? この世界は、アレと契約を結んだのは貴方達であり貴女なのに……、それで、どれだけの人が死んだのか何も分からないの?」
「――でも、それは!」

 私と同じ人の体に入っていたけど、それは私とは別人で――、その人が星の迷宮という場所で契約を行ったのは、私には関係の無いことで……、それを私のせいにされても……。

「見ているけど見てない。それが、佐々木望、貴女の在り方なのよ? そして、貴女のせいで兄は力を暴走させてしまった。それまで、自分は関係ない! と、言うつもりなの? そこでも言い訳をこねくり回すつもりなの?」
「それは……」

 先輩が、漆黒の巨大な狼に変貌してしまったのは知っているし、それを助けたい! その決意にかわりはない。
 だけど……。

「覚悟を決めて世界を見なさい。貴女しか、お兄ちゃんを助けることは出来ないのだから」

 彼女は、地下へと通じる階段を降りていく。
 私は、そのあとを黙って追っていくことしかできなかった。

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