【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

人類の罪過(18)佐々木望side




「成れの果てって……」

 私は、鏡花さんの言葉に耳を傾けながらも、空中に留まり続けてデザートイーグルの銃口を向けている人物を――、ランハルド・ブライドを見ながら呟く。

「鏡花さん」
「――何?」
「あの人って……、この世界ではサークルの……、山岸先輩が所属するサークルのメンバーだった方ですよね?」
「そうね」
「――なら、どうして、私達に銃口を向けてきているんですか?」
「さっきも言ったわよね? 私達が、この世界では異物だと判断されたからだと――」
「それで、攻撃を仕掛けてきたんですか?」
「そうよ。最初に、貴女に言ったわよね? ここは、お兄ちゃんの精神世界だと」
「……はい」
「つまりね、ここに出てくる登場人物は、本人そのものが出てきている訳ではないの。あくまでも起きた出来事がそのまま繰り返されているだけ。それだけに過ぎないの」
「起きた出来事が……、そのまま?」

 そこで、ようやく私は自分が致命的な勘違いをしている事に気がつく。
 今まで、この世界は極めて私が生きて居た世界に近い作りだと思っていたが、実際は起きた出来事を再生しているだけだという事に。
 つまり……。

「――で、でも! 私達の世界とは別の世界なんですよね? これって、起きてしまった出来事だと言われても……」
「……」
「鏡花さん?」
「舌を噛むから静かにしていなさい」

 彼女は、ヘリを急下降させると何か飛んできた物を避けるが――、その避けたであろう塊は、前方のヘリ一機を破壊し空中で爆発させた。

「ヘリが!?」

 私が呟くと共に、鏡花さんが操縦するヘリは急下降し――、その何かを必死に避ける。

「まったく……。この手だけは使いたくはなかったけど……」

 鏡花さんは、小さく溜息をつくと――、

「顕現しなさい! 我が盟約と契約の召喚に応じ――、居間此処に!」

 その言葉と共に、ヘリの前方に――、遥か下からせり上がってきた大地が砕けると共に人影が現れる。
 その姿は、1本の日本刀を持つ優男であり――、見た事がある人物で……。

「――や、……夜刀神!?」

 私が契約していた神霊樹を殺した存在。
 それが、ヘリの目の前に瞬時に現れ――、飛んでいたヘリと交差すると共に後方から追いかけてきていたランハルドが撃った何かを破壊したのを見て私は鏡花さんを思わず見る。

「言いたいことは分かるわ」

 彼女は、それだけ言うと、機体制御を行う。
 ヘリは、水平を保つと速度を上げていく。
 前方を飛んでいたヘリも速度を上げたのか中々追いつくことは出来ないけど……、それよりも私は、彼女が――、山岸鏡花さんが夜刀神を呼び出したことに対して疑念を抱いていた。

「夜刀神って、日本の神様ですよね? それを召喚したって……、どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味よ? それよりも、目の前を見てみなさい」

 鏡花さんは、私の質問に答えるつもりはないと言わんばかりに、ヘリが向かう先を指差してくる。
 向けられた、その先には山があり――、山の頂上付近にはヘリポートが存在していた。

「あれは……」
「あれが、剣山の入り口のある場所よ?」

 

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