【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
人類の罪過(3)佐々木望side
車が停車した場所は、横田基地から少し離れた場所。
すぐに鏡花さんは、シートベルトを外して車から降りる。
「早く降りなさい。移動するわよ」
彼女の言葉に従い車から降りたあとは、横田基地の方に向けて歩きだした彼女のあとを追う。
「あの、鏡花さん」
「何?」
「ここって、実際あった出来事だと鏡花さんは言いましたよね?」
「それなら、私達の住んでいる世界は、どういう事ですか? こんな事が起きた事なんて一度もないですよね?」
「それは、今から起きることを見れば分かるわ」
それは、つまり――、訳の分からない世界を見続けるという事に他ならない訳で――。
「これで、本当に先輩を救えるんですか?」
「たぶんね……」
自信満々で話してきていた鏡花さんが、少しだけトーンを落としながら答えてきた。
しばらく横田基地の方へ進んでいると銃声が聞こえてくると鏡花さんが足を止める。
まだ基地までの距離は遠く、銃声も遠いように感じられるけど……。
「どうします?」
神居村で起きた自衛隊による村へと空爆の現場を目撃した者としては、横田基地に近づいていいのかどうか迷ってしまう点で――。
「とりあえず、何に向けて銃を撃っているのかだけ確認してみましょう。その時に対応を考えればいいから」
「そうですね……」
銃声が鳴り響く場所まで慎重に近づく。
「佐々木望、こっちに――」
「マンションに何か用でもあるんですか?」
彼女は、私の問いかけに答える事もなくマンションの階段を上がっていく。
最上階に到着したところで――。
「ここって、横田基地の正面ゲートが直視できますね」
「そうね。あまり近づいて殺されるのは避けないといけないからね」
「殺されるって……」
「月読が言っていたでしょ? 危険だと――。この世界で死んだら、私も貴女も存在が消えるのよ? だから、慎重に行動しなさい」
ヘリを勝手に操縦して、そのまま海に飛び込んで海岸線まで泳いだ人間の言う事ではないと、私は心の中で思ったけど口にはしない。
「あ、はい」
「納得いかないような返事ね?」
「そんな事ないです。それよりも、あれって――」
私達の視線の先には、横田基地へ入るゲートが存在していて――、多くの米軍や自衛隊と言った軍人が防衛線を築いているのが見えた。
「市民を誘導していますね」
「ええ。どうやら、横田基地は市民を守る為に行動しているみたいね。これなら――、何とかなるわね」
「それにしても、すごい避難する市民の数ですね」
「それはそうよ。この辺には地下鉄なんてないもの。地下街も限られているし――、だから市民は基地に逃げ込んでいるんでしょうね」
たしかに、核ミサイルの話が本当なら戦争になるのは必然で――、そうなれば基地に逃げるのは理に叶っている。
それよりも、いまは私が一番気になる点があった。
膨大な化け物が横田基地を攻撃しているという点。
そして、その化け物と戦う為に米軍と自衛隊が奮戦しつつ市民の安全を守る為に避難誘導している点だった。
「やっぱり市民を狙って……?」
「違うわ。あれらの目的は、お兄ちゃんを狙っているの。唯一、彼らに対抗できる力を持つ存在だから」
「――え?」
「貴女も見たんでしょう? 夜刀神を倒す姿を――」
「それは……」
「今、現出しているのは贖罪の為に現出している存在――、人間が神と崇めている物なの」
「神? それと戦う力を持つって……。先輩は一体?」
「とりあえず向かうわよ。これ以上、此処に居ても奴らに探知されて殺されれば、私達も消滅するから」
鏡花さんの言葉に頷き、すぐにマンションの最上階から降りて、ゲートの方へと走る。
道中で、化け物が私達に気が付き襲ってくるけど、歩み自体は遅いので何とか攻撃を潜り抜けることに成功し――、ゲート前に到着し避難する市民の列に紛れ込むことが出来た。
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