【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
贖罪の迷宮(4)佐々木望side
「それは……」
彼は一瞬――、説明をしようとしたけどかぶりを振って銃口を私の方へと向けながらセーフティロックを解除する。
「答える必要はない。そのくらいは、そちらも理解しているはずだろう?」
夏目さんが口角を上げながら言葉を零す。
私は、それがハッタリだと分かっている。
だけど――、私の唇から出てくる言葉は、まったくの別物で――。
「考古学の為に来ています」
「なるほどな」
「考古学ね、そういう話は聞いてはおらんかったが――」
「神居さん……」
そこで、ようやく存在に気が付いたのか私の口から自徳寺の住職――、その方の名前が出てくる。
「つまり、君達は神居村……。――いや、上落ち村について調べものをしていた……、ということかね?」
「……」
「沈黙は肯定と受け止めるぞ」
「ああ、そうだよ」
夏目さんの言葉に答えたのは、クーシャン・ベルニカであり田中一郎――、その人であった。
「何のために、上落ち村について調べていた?」
「ただのサークルの研究に過ぎない」
「サークルの研究?」
「ああ、上落ち神社って知っているか?」
「知っているが……」
田中の言葉に頷きながら答える夏目さん。
「そこの神社のことを色々と調べていたんだよ」
「なるほど……。だから自徳寺にも来たのですね」
「その辺は、直人さんの――」
「直人?」
二人の間に割って入るように私の口から出た言葉には――、彼の……、先輩の名前には、特別な感情が込められているのが私でも分かった。
「誰だ? ソイツは――」
「あんたには関係ないだろ?」
そうぶっきらぼうに切り捨てたのは駅前で出会った男――、ランハルド・ブライド。
「菊池」
「分かっているよ。藤田」
二人の会話。
そして、その身なりから――、ランハルド・ブライドが菊池仁であり、藤田尊という人物がユーシス・ジェネシスだと言う事が分かってしまった。
それと同時にレムリア帝国の四聖魔刃の内3人が揃っている異常性に驚く。
こんな事はありえない。
運とかそういうのではなくて――、確実に何かあった――、そうとしか考えられない。
「それより、どうして陸自の人間が、こんなところにいるんだ? あいつらは目撃者をころそうとしているようなんだが……、すぐに発砲しないって事は、あんたも同類ってところか?」
「ふんっ、ずいぶんと頭が回るようだな」
ランハルドは、肩を竦めながら口を開く。
それに対して、挑発するかのように答える夏目さん。
一触即発の中で――、私は口を開く。
「ここで喧嘩は止しましょう。時間を浪費するのも勿体ないですから」
「そうだな」
もう一人の私と言っていいのか、もう一人の私の言葉に夏目さんは銃口を下げると一歩下がる。
「ところで、陸自の方」
「夏目で結構だ」
「それでは夏目さん、ここまではどうやって来られたのですか?」
「抜け穴を通ってだが?」
「それを使わせて頂くことはできますか?」
「構わないが、どうしてだ?」
「外には陸上自衛隊が既に展開していて、見つかるのも時間の問題なのです。そのために、少しでも時間が稼げる場所へ移動したいんです」
「ほう……、つまり時間を稼ぐ事が出来たなら何とかなると言う事か?」
「それは分かりませんが……」
「分かった」
曖昧な願いに夏目さんは、力強く頷いた。
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