【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
贖罪の迷宮(3)佐々木望side
通路を歩くこと30分ほど。
立ち止まったところの前方には壁があって、周囲を見渡しても何も変わったところが無いように見える。
「神居さん、行き止まりのようだが――」
そう語りかける夏目さんを他所に彼が壁の窪みに手を置くと、何かを押したのかガコッ! と、言う音が聞こえてくる。
それと同時に、壁の一部がスライドして人一人が通り抜けられる程度の道が作られた。
「隠し通路か……」
「そうです。何か、あった時の為に作ったのです」
「何かがあった時? ……つまり、こういう状況が発生する事をあらかじめ予測していたと言う事か?」
夏目さんの考えは合っていたのか住職は言葉を発する事なく頷くと空いた通路へと入っていく。
そのあとを夏目さん、私の順で追いかける。
扉は自動ですぐに閉まり、暗闇に閉ざされたけど……、すぐに夏目さんが懐中電灯を取り出し灯りを確保してくれた。
「ここからは上に上がりますので気を付けてください」
その声には幾分かの緊張感が混じっているように見える。
しばらく階段を上がり、夏目さんが足を止めた。
「夏目さ――」
「静かに」
「――え?」
「誰が居るようですね」
「ええ。少し開けてみてみましょう」
夏目さんは灯りを消し、拳銃を構える。
それを確認した住職は、音を立てないように慎重に天井の板をスライドしていく。
「人数は……、4人か……見た目からして民間人っぽいが……」
「そうですね……」
階段下に居る私からは見る事は出来ないけど、二人はどうするか小声で相談している。
「ここは発砲すれば音は聞こえるか?」
「一応、上落ち神社の社近くですから――」
「そうなると山の上になるから聞こえるか」
「はい」
「だが、どちらにしても行かないと話にならないか」
「そうですね」
「神居さん、俺が突っ込む。佐々木さんの事はよろしく頼む」
「分かりました」
相談が終わり、すぐに夏目さんが自動小銃を手にしたまま駆け上がっていく。
そして、懐中電灯をつけたのか、すぐに灯りが見えて――、懐中電灯に照らされた私は思わず何が起きたのか分からなかった。
「――え? 佐々木さん……」
どうして、私に銃口を向けているのか――。
「貴方は……、陸上自衛隊の方ですか?」
そう私の口から零れ落ちたのは、私の言葉ではあったけど――、私は何一つ発してはいなかった。
勝手に唇が動いたかと思うと、銃口を突き付けている夏目さんに返事をしていたのだ。
「神居さん、佐々木さんは――」
「分かりません。消えてしまって――」
「どういうことだ!?」
神居さんも、夏目さんも混乱しているのが伝わってくる。
私だって、何が起きたのか混乱していて――、事態が掴み切れない。
「……一つ聞きたい。君達は、此処で何をしている?」
「それは、こちらのセリフです。どうして陸上自衛隊の方が私の名前を知っているのですか?」
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