【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

在りし日の時間(2)佐々木望side




「これって……、先輩の文字? もしかして――」

 レポート用紙を捲っていくと、一番後ろに作成に携わったメンバーの一覧が書かれていて――、

「サークルに所属しているメンバーは……、部長が菊池(きくち) 仁(じん)、副部長が山岸(やまぎし) 直人(なおと) メンバーは、田中(たなか) 一郎(いちろう)、藤田(ふじた) 尊(たける)、佐々木(ささき) 望(のぞみ)……、つまり私もメンバーってこと? でも……」

 疑問はあるけど、私はまず資料に目を通すことにする。
そこには上落ち村の創設は古く、多岐に渡る伝承が残っている事が書かれている。
さらに神社に彫られているレリーフの写真もクリップで張り付けられていて、資料から読み取れる範囲では、何か得体の知れないモノが書かれており、それは上落ち神社との関係性がある事が示唆されている。

「得体の知れないモノ……」

 それは一体……。
 それに、この考古学メンバーには見た目からして少なくとも四聖魔刃が二人は居る。
 これは偶然では片付けられない。
 むしろ、何か因果関係があると言われた方が納得する。

「――でも……」

 神社の柱ではなく――、たぶん通路か何かに掲げられたレリーフだと思うけど、そのレリーフに描かれているのは、月を背中に移した黒き獣。
 まるで、それは山岸鏡花さんに先輩の姿だと見せられた時の獣に非常に酷似している。
 
 さらに資料を捲る。

「何、これ……」

 そこに書かれていたのは家系図。
 それも山岸先輩の家に関してのモノ。
 ただ、その家系図には不可解な部分が幾つも見受けられる。
 それは、一定の感覚で直人という名前が登場しているという部分。

「どういうことなの? それに、これって5代ごとに先輩の名前があるなんておかしいわよね」

少なくとも、同じ名前を短期間で繰り返して使う家は見た事がない。それに、家系図は写真で、書かれているのは何かしらの布。
 そして、その布はかなり損耗していることが一目で伺いしれる。
 きっと――、ううん。たぶん、かなり古いモノ。

「――でも……」

 そこで疑問点が浮かびあがる。
 どうして、先輩は自分の田舎をわざわざ調べるような真似をしたか? という点。
 普通、ここまで綿密に調べるような真似はしない。
 いくら研究用のレポートだったとしても……だ。
 研究やサークルの活動の資料やレポート提出なら、日本ではもっと古く興味を引くような郷土がたくさんある。
 それなのに、自分の田舎を研究対象として選んだのは何か特別な理由があると思うんだけど……。

「他には、何も書いてないのね」

 ルーズリーフを閉じて、ホテルの机の上に置こうとした時に一枚の写真が床のカーペットの上に落ちる。

「何か落ちたの?」

 裏返しになってカーペットの上に落ちたのは手触りからして写真。
 表にすると暗闇の中でも金色に輝く西方体の棺のようなモノが映っていた。
 それは見た事がないけど、不思議と吸い寄せられる。
 
「写真の右下に文字が書かれているけど……神棟木(かみむなぎ)って読むのかな? 何の意味なのかな?」
 





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