【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

生贄の祭壇(6)第三者side




 旅館の駐車場には数人の人影が存在していた。
 一人は日本ダンジョン探索者協会鳩羽村支部の支店長である宮本あきら。
 そして残りは2人。
 二人とも髪の毛を金髪に染めており、腕には入れ墨などを掘っていて一目で一般人から浮いているのが分かる風貌をしている。
 ただ――、耐刃の効果がある防護服を身にまとっていること。
 そして背中には、竹刀を入れるような長い布を背負っている事から見る者が見れば冒険者だというのが分かる。

「宮本さん、本当に来るんですか?」
「当たり前だ。来てくれないと困る」
「まぁ――、俺達はどっちでもいいんですがね」

 本来であるなら支部長に対して、このような物言いを冒険者は行わない。
 何故なら、日本ダンジョン探索者協会は言わば取引先相手であり、冒険者という存在は個人事業主だからだ。

「お前達は、お前達の仕事を全うしろ」
「はいはい。クライアントに届けるだけの仕事なのに、そんなにピリピリしても仕方ないのにな」
「そうそう。レベルが高いって言っても護衛に裏切られるとは思っていないだろうし」

 軽口を叩く二人の冒険者――、【戦国無双】のギルドメンバーを横目で見ながら、宮本あきらという男は心の中で溜息をついていた。
 この男達は、本当に使い物になるのか? と――。

「お前達、おしゃべりはそこまでだ。ターゲットがきたぞ」

 宮本あきらの言葉に、二人の視線は旅館の方から小走りで向かってきている佐々木望に向けられた。

「あれが、元・男か? すっげえ美少女じゃねえか」
「いや――、元・女のはずだ。それが薬で男になっていたのが女に戻っただけだろ」
「ああ――、そういえば、そんな薬をクライアントに売った事があるな」
 
 二人は小声で情報を共有している間にも、日本ダンジョン探索者協会から配布された職員の制服を身に纏った佐々木望が近寄ってくる。

「お待たせしました」
「――いえ、無理なお願いをしてしまい本当に申し訳ありません。これからの手順については、車での移動中に説明致しますので」
「分かりました」

 神妙そうな表情で頷く佐々木望を観察する宮本は頷く。
 どうやら、目の前の女性は此方の意図を知らないと考えながら――。

 佐々木望や支部長に二人の男を乗せた車は日本ダンジョン探索者協会鳩羽村支部へと向けて走り始める。

「それでは佐々木さん、簡単にご説明させて頂きます」
「はい」

 頷く佐々木。
 その表情は真剣そのもの。
 
「まず佐々木さんに行ってもらう事は、ダンジョン内での通信機器の再設置をテストです」
「それは、先ほど伺った通りの内容ですね」
「はい。あと、佐々木さんが作業をしている間、モンスターからの襲撃から護衛をするのは、この二人になります。一応、日本でもトップクラスの【戦国無双】のギルドに所属している探索者で、二人ともレベルは1000付近です」
「なるほど……。佐々木望です、よろしくお願いします」
「前川(まえかわ) 一平(いっぺい)だ」
「玉木(たまき) 勇次郎(ゆうじろう)だ」

 ぶっきらぼうに彼女に感心がないとばかりに自己紹介を返す二人に佐々木望の表情は曇る。
 二人の話し方に忌避感を抱いたのではなく――、露骨なまでの二人の――、男としての視線が、佐々木望の胸に向けられていたのが原因であった。

 ただ、そのことを彼女は口にすることはなく宮本あきらから、これからの話を車の中で説明を受けたのであった。
 
 

 
 
 

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