【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
日本国政府との交渉(3)
首相官邸内に入ると、俺を出迎えたのは夏目一元。
スーツをビシッと着こなしている事から、俺との話し合いはそれなりに考えているように見える。
まぁ、俺は普段着――、ジーパンとYシャツにコートを羽織っているだけだが――。
「君、ご苦労だった。下がってくれたまえ」
無言で、俺を案内してきた運転手は頭を下げて立ち去っていく。
「山岸直人君、待っていたよ。それでは、こちらまで来てくれるかな?」
小さくコクリを頷き、首相官邸3階に上がっていくと、大勢の人間とすれ違う。
「正月だと言うのにずいぶんと大勢の人間が働いているんだな?」
中には自衛隊の服を着ている人間も何人か混ざっている。
夏目は、俺の問いかけに答えず4階の一室まで案内する――、そして俺が入室すると扉を閉めた。
「そこに座ってくれたまえ」
大人しく座ることにする。
余計なことを言って時間を浪費するのもアレだからな。
「――さて、先ほどは回答できなかった大勢の人間が働いているという話だが――。伊東市――、伊豆半島全域に被害が及んだ事件は覚えていると思うが?」
「ああ、そういえばそうだな……。つまり伊豆半島全域の復興と災害対策の為に首相官邸は多忙な状態と言う事か?」
「そうなる。危機管理室と防災危機管理室をチームで編成しているからな。現在300名近い人間が、対策に当たっている。それでも十分とは言えないが――」
「そうか……」
「君が落ち込むことはない。君が、ピーナッツマンとして何の魔法を使ったかは知らないが大勢の命を救ったというのは、こちらの気象衛星でも確認が取れている。多くの国民を救ってくれた事には、最大の感謝の意を示したい」
夏目が立ったまま頭を下げてくる。
その様子から嘘をついているようには見えない。
「――気にすることはない。それに感謝されるような事は何もしていない」
俺は誰かを助けたいと思って助けたわけではない。
目の前で苦しんでいる誰かを――。
目の前で助けを求めている誰かを見て――、助けられなかった妹の顔を思い出し――、その贖罪の為に、もう誰かが目の前で死ぬのは嫌だから、助けただけに過ぎない。
そこにあるのは、無力だったころの自分を――、無力だったこそ助けられなかった自分の罪を贖う為に、自分のエゴで――、自らの考えだけで救っただけに過ぎない。
誰かを助ける為ではなく、自分の過去の過ちを覆いつくそうとしているだけの偽善に過ぎない。
感謝されるような事は何もしていない。
「それでも、誰かを救ったという現実は変わらない」
俺は夏目の言葉に苛立ちながら睨みつける。
それだけで、俺の思いは伝わったのだろう。
男は、小さくため息をつく。
「――それでは、話をしようか」
俺は、アイテムボックス――、四次元ポーチをジーパンのポケットから取り出すと旅館『捧木』の登記簿謄本などを取り出す。
「まずは、コレの名義を変更してくれ」
「ほう……、これは……」
夏目が登記簿謄本に目を通していくと表情が険しくなっていく。
「――で、今回の相手は佐々木雄三か?」
「何か問題でもあるのか?」
「まだ調査中だが――、佐々木雄三は、伊豆半島に『神の杖』を使うようにアメリカ政府に働きかけた日本の上級国民の一人だ。君が暮らしていた上落ち村の太陽光発電施設の建設をした東亜ソーラー開発株式会社の役員の一人でもあるし、西貝当夜が政界に進出する際の後援も務めていた大物だ」
「俺の実家の?」
静かに頷いてくる夏目。
「――その大物と君は戦うというのか? 多くの官僚や政治家――、マスメディアや経団連も全て君の敵に回るぞ? 下手をすれば暗殺されかねないが――」
「関係ないな」
「即答か――、で? 君は、この土地家屋の権利を誰にするつもりだ?」
「俺にしておいてくれ」
「つまり、完全に君が矢面に出て対決する姿勢を取るということか?」
「まあな、コイツは俺の喧嘩だからな」
俺の返答の何が琴線に響いたのか知らないが夏目の口角が上がる。
「――で、他に頼みたいことがあったのだろう? だから態々、此処まで来たんだろう? あとは何を――、お望みだ?」
夏目の雰囲気が一変する。
「【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
1,391
-
1,159
-
-
265
-
1,847
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1,274
-
1.2万
-
-
1,658
-
2,771
-
-
1,013
-
2,162
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
176
-
61
-
-
66
-
22
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
5,039
-
1万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
3,152
-
3,387
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
450
-
727
-
-
89
-
139
-
-
3,548
-
5,228
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
1,295
-
1,425
-
-
6,675
-
6,971
-
-
2,860
-
4,949
-
-
62
-
89
-
-
3,653
-
9,436
-
-
3万
-
4.9万
-
-
344
-
843
-
-
86
-
288
-
-
65
-
390
-
-
76
-
153
-
-
2,629
-
7,284
-
-
62
-
89
-
-
14
-
8
-
-
10
-
46
-
-
3
-
2
-
-
1,863
-
1,560
-
-
187
-
610
-
-
218
-
165
-
-
2,431
-
9,370
-
-
108
-
364
-
-
183
-
157
-
-
1,000
-
1,512
-
-
23
-
3
-
-
71
-
63
-
-
477
-
3,004
-
-
2,951
-
4,405
-
-
33
-
48
-
-
86
-
893
-
-
83
-
250
-
-
614
-
1,144
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
10
-
72
-
-
398
-
3,087
-
-
220
-
516
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
7
-
10
-
-
17
-
14
-
-
9,173
-
2.3万
-
-
6
-
45
-
-
47
-
515
-
-
4
-
1
-
-
4
-
4
-
-
27
-
2
-
-
9
-
23
-
-
18
-
60
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
2,799
-
1万
-
-
614
-
221
-
-
116
-
17
-
-
104
-
158
-
-
164
-
253
-
-
51
-
163
-
-
1,301
-
8,782
-
-
88
-
150
-
-
42
-
14
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
213
-
937
-
-
408
-
439
-
-
83
-
2,915
-
-
215
-
969
-
-
29
-
52
「現代アクション」の人気作品
-
-
4,126
-
4,981
-
-
986
-
755
-
-
817
-
721
-
-
756
-
1,734
-
-
186
-
115
-
-
184
-
181
-
-
183
-
157
-
-
181
-
812
-
-
149
-
239
コメント