【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

想いと思い(1)




「――ん……」

 微睡の中で何か体に重みを感じると思い瞼を開けると、佐々木が俺の上に乗っていた。もちろん浴衣を脱いで裸だ。
 起き抜けによく回らない頭で、とりあえず佐々木に問い正す言葉……、それは――。

「佐々木、お前は何をしているんだ?」
「えっと……」

 佐々木の目が泳ぐ。
 そして、その目線の先は俺の下半身に向かう。

 俺も寝る時は浴衣であった。
 そして、おそらく――、間違いなく――、佐々木が行ったのだろう。
 俺の浴衣もはだけている。 
 つまり、何が言いたいのかというと下半身が……。

「あっ!」

 佐々木の腰を掴んで俺の上から退かす。
 
「まったく、お前は何を考えているんだ」
「えっと……、マッサージとか……」
「マッサージで裸になる必要はない。さっさと浴衣を着ろ」
「はい……」

 俺は溜息をつきながら部屋の時計を確認すると針は、午前4時半を指している。

「また変な時間に起きたな」
「山岸先輩……」

 浴衣をシッカリと着ている佐々木を確認しつつ俺は布団の中に入る。
 実質、1時間ほどしか寝ていないのだ。
 正直、眠いが――。

「お前は、何で夜這いというか襲ってくる真似をしたんだ?」

 また佐々木が襲って来ないとは限らないからな、きちんと理由を聞いておいた方がいいな。
 
「あの、山岸先輩は……、私のことは嫌いですか?」

 どうして、好きか嫌いかでコイツは判断してくるんだ?
 以前に自分が問題行為を起こして俺に怒られた事を忘れているんじゃないのか?
 
「お前な、少しは――」

 話しながら佐々木の方を見て俺は喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
 そして――。

「佐々木」
「はい」
「どうして、お前は俺にそんなことを聞いてくるんだ?」

 ハッキリ言って俺は佐々木に何か良い印象を抱かせるような――、恋心を抱かせるような事をした覚えが一切無い。
 それなのに、俺に好意を向けてくるのは正直言って困るというのが本音の所だ。

 それに、佐々木は元々、俺の後輩で男だったわけだし……。
 まぁ、いまの佐々木は男の頃の面影はまったく無い日本撫子風の美女な訳だが――。
 それでも元の姿を知っている俺にとっては安易に受け入れることはできない訳だ。

「……先輩が好きだからという理由ではダメですか?」
「つまり、お前は俺の事が好きだから夜這いをしたってことか?」
「はい」
「お前な、夜這いって行為はお互いが恋人同士で良く知っている仲だから許される行為なんだぞ? それを無理矢理するっていうのは夜這いって言わないからな」
「でも……」
「お前は、何で俺の事が好きなんだ?」

 もうストレートに聞くとしよう。
 遠回しでは拉致があかない。

「私を暴漢から救ってくれた時から――、山岸先輩に惹かれていました……」




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