自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

蠢く陰謀(6)




「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。それにしても、どの料理もすごく美味しかったですね」

 佐々木が笑顔で話しかけてくる。
 たしかに、どの料理も味は悪くない――、むしろ美味しいとすら言えたが……、関東の人間の俺にはどうしても味が薄いように思えて仕方ない。

「でも! お吸い物から魚の煮付けまで実家の旅館で出したいくらいの味でしたね! 先輩!」
「そ、そうなのか?」
「はい!」

 妙に佐々木のテンションが高いな。
 まぁ、この割烹旅館に泊まる事になってからテンション上がりまくりの様子だったが……。

「佐々木の実家も旅館を経営しているんだろう? やっぱり色々な場所で料理を食べたりするのか?」

 俺の言葉に佐々木がハッ! と、した表情をしたあと俯いてしまう。
 何かおかしな質問でもしたか?
 していないはずだが――。

「私の実家が経営している旅館『捧木』は、女性が経営から厨房までを取り仕切っているので後継ぎであった私は、男にされてからと言うもの経営からは私は遠ざけられていました」
「そうなのか? 料理の味を調べるのだって男でも出来るはずだろう?」
「えっと……、じつは……、佐々木家は代々――、男が短命なんです。――ですから、店の経営に携わるような事はさせないんです」
「短命?」
「はい。私のお父さんは、私が物心つく前に死んでいるんです」
「――ん? もしかして佐々木香苗さんは?」
「はい。一応、実家の旅館の女将をしていますけど、外から嫁いできたので本家には頭は上がらないんです」
「本家か。それって、お前を男にした薬を調達してきた連中だよな?」
「はい……」
「つまり佐々木家の本家の連中が、出資しているのが旅館「捧木」であって、その旅館の跡取りは男にしかなれないが、実質的には経営権は女将が持つってことか?」
「経営権というよりも、旅館を運営する手腕なので、雇われ女将に近いです」
「なるほど……、そうなると立場的にはかなり弱いことになるな」
「はい」
「妙だな……」
「え?」
「いや、旅館の運営に関しては佐々木の母親である香苗さんが行っているんだろう?」
「そうです」
「でも本家の意向には逆らえない。つまり、香苗さんは佐々木を守れる立場には無いという事になる。それなのに、お前を手伝いとは言え呼び出すのはおかしくないか?」
「たしかに普通に考えたらそうなります。――でも、いまの私はレベルが8800ありますし魔法も使えるので……」

 戸惑いながらも佐々木が答えてくる。
 まぁ、たしかに佐々木の言う通り――、今の佐々木と真正面から戦って勝てる奴は少ないだろう。
 それでも相手が何かしらの対策を講じていないとは限らないからな。
 とくにダンジョン産のアイテムは色々と特殊能力が付与されているものがあるし。

 まぁ、考えたところで始まらないか。

「先輩どこに?」
「いや、ちょっと町を探索にいくだけだ」
「――わ、私も一緒にいきます!」

 佐々木はハンガーに架けてあったコートを羽織る。
 
「先輩は、コートは?」
「俺はいらない」

 1月初旬で真冬とは言え小太りな人間にとっての徒歩は如何なる暖房器具をも超える熱を体が生み出すのだ。

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