自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

蠢く陰謀(4)



 松坂インターチェンジから降りて一般道を走ること20分ほど。

「山岸様。ところでホテルはどちらの方を借りたんですか?」

 車を運転している相原が尋ねてくる。
 そういえば場所を教えていなかったな。

「いつも千城台交通さんには無理を言っているので、今日はサプライズとして割烹旅館を借りました」
「割烹旅館ですか? どちらの?」

 車が信号待ちしている間に、相原がカーナビの音声入力を設定する。

「場所は、割烹旅館『夢庵(ゆめあん)』ですね。ここからだと5分ほどで到着しますね」

 信号が青に切り替わったところで車は走り出す。

「――え? 先輩! 割烹旅館の夢庵で泊まるんですか?」
「まぁ、そうだな。さっきも言った通り――、海ほたるの以降ずっと無理をお願いしているからな。そのお礼も兼ねて部屋が空いていたから宿泊予約をした」

 まぁ、実際のところリムジン1台にクラウン1台を大破させているわけだし――、このくらいは労わっても少ないくらいだ。
 海ほたるの時なんて下手をすれば死人が出かけたからな。
 本当は、社長の富田に礼をしたかったが請求書などの作成で来られなかったからな。

 ――それなら、相原に忖度していてもいいだろう。

 何せ、運転手は相原が専属になるかも知れないし――。
 もしかしたら、これからも迷惑が掛かるかも知れないことを考えると安いくらいだろう。

「すごいです! 先輩、松坂市内でも、一番高い旅館ですよ! ずいぶんと奮発したんですね」
「まぁな――。一人一泊10万円するからな」

 佐々木と話をしている間に古風な街並みの中に一際大きな日本家屋が見えてくる。
 旅館は、スマートフォンで調べた通り立派な作りとなっており、駅近くだと言う事を感じさせないほど広い日本庭園を持つ旅館。
 それを見ていた佐々木の目が輝いている。

「わ、私、こんな高い所に泊まったことないです! 実家でも、旅館を経営していますけど、ここはかなり由緒正しい旅館で料理もすごいってお母さんから聞きました!」

 佐々木が、すごく興奮した面持ちで早口で説明をしてくる。
 
「佐々木は、旅館の経営が好きなのか?」
「――え? ……えっと……、嫌いではないです。でも――」
「何かあるのか?」
「いいえ、何でもないです」

 佐々木が何を言いかけたのか気になったが、俺の考えを他所に車は旅館の駐車場に泊まり、「山岸様、こちらで宜しかったでしょうか?」と、相原が俺の思考を中断してきた。

「それでは行きますか」

 車から降りたあと、相原と佐々木と共に旅館入口へと向かう。
 建物に入ったあとフロントの女性が俺達に気が付いたのかカウンターから出てくると近づいてくる。

「いらっしゃいませ。本日は満室となっていますが……」
「予約は取ってあります」
「お名前をお伺いしても?」
「山岸直人で予約してあると思いますが?」
「少々お待ちください」

 カウンターまで戻った女性は、パソコンを弄ったあと戻ってくる。

「山岸直人様。本日は、当旅館をご予約頂きましてありがとうございます。すぐにお部屋までご案内致します。お部屋は二部屋と言う事でしたが……」

 チラリと相原と佐々木の方を女性は見てくる。

「女性と男で部屋を分けてくれて構わない」
「――わかりました」
「――え? せ、先輩!?」
「どうかしたのか?」
「いえ……、なんでもないです……」

 男女別で部屋を分けるのは常識だろうに――。
 ああ、なるほど……。
 佐々木は、俺か相原と相部屋になると心配していたのか。
 まぁ、俺はそういう所はキチンとしている男だからな。

 とりあえずチェックインしたら、市内に繰り出すとしようか。




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