自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

指針と会話(1)




「山岸さん」
「――ん?」

 振り返ると藤堂が神妙な表情で俺を見てきていて「話を擦り合わせませんか?」と、語り掛けてきた。
 その案には俺も賛成だ。
 そもそも上落ち村から千葉に帰ってくるまで、殆ど情報を交わしていない。
 
 ――理由は、いくつかあるが……。

 一番の理由としては、佐々木が契約していた狂乱の神霊樹という魔物が夜刀神に殺されたことだろう。
 彼女が落ち込んでいたので気軽に会話が出来なかったのだ。

「そうだな……、とりあえず今後の事を考えて3人と話を擦り合わせるのは必須だろうな」

 とくに車の弁償も関わってくる江原との話は最優先事項。
 
「それでは、私の部屋で行いませんか?」
「江原の部屋か……、だが――、お前の部屋ってたしかパソコンとか無かったよな?」
「ありませんけど……、スマートフォンならありますよ?」
「いや――、俺はパソコン世代だからインターネットを見る場合にも情報を仕入れる際にも基本的にパソコンを使うから」
「……そ、そうですか……」
「それなら! 私の部屋で!」と、藤堂が手を上げてくる。
 
 たしかに藤堂の部屋なら色々とありそうだ。
 盗聴器なども俺の部屋にあったくらいだからな。
 きっと色々と設備とかがありそうなイメージ。

「そうだな。藤堂の部屋でいいか」
「あの……。先輩、私は少し休みたいです……」

 普段の佐々木からは考えられないほど弱気な発言。
 まぁ、佐々木に関しては別にあとでも問題ないか……、というより佐々木に聞くことってあまりないんだよな。

「分かった。ゆっくりと休んでくれ」

 佐々木を残し藤堂の部屋へと、彼女――、藤堂が部屋の鍵を開けたあと上がる。
 正直、室内に入って思ったこと。
 江原の女性らしい部屋とは対照的に様々な機械が置かれている。
 中には無線機などもあり、さらに言えば――、4画面ディスプレイのパソコンまで置かれている。

「藤堂、このパソコンは?」
「えっと……、一応趣味で――」
「なるほど……」

 趣味で4画面ディスプレイとは……、俺はデュアルモニターだと言うのに――。
 デスクトップ持ちのパソコンとしては4画面ディスプレイというのは一種のステータスでもある。
 今度、4画面にしよう。
 
「飲み物を用意しますから、座って待っていてください」
 
 俺に続いて江原が「失礼します」と、室内に入ってくる。
 部屋の中を彼女は見まわしたあと、室内の床に座った俺の隣に座ってくる。

「江原、近い」
「気にしないでください」
「いや、気にするからな」

 好意を持たれていると分かっている身としては、20歳近く年が離れていても意識してしまうものなのだ。
 なるべく意識しないようにし――、目の前のテーブルに飲み物が置かれるまで無心を心がける。



 ――スキル「無心LV1」を手に入れました。



 久しぶりのスキル獲得のログが視界内のプレートに流れる。
 それにしても、スキル獲得の条件が今一、分からないんだが――、どうなっているのか……。

「お待たせしました」

 内心、一人で突っ込みを入れていると湯気の立つカップを3つテーブルの上に置いた藤堂がテーブルを挟んで向かい側に座る。

「コーヒーしかありませんけど、どうぞ――」
「ブラックコーヒーか」
「はい。仕事柄、コーヒーを飲む事が多いので……」
「まぁ、藤堂は陸上自衛隊所属だったからな」

 カップに口をつけながら言葉を返す。
 そして、俺の隣に座った江原と言えばコーヒーに口をつけずに、別に用意されたミルクと砂糖を入れていた。

「――さて、話をしたいと思うが……、藤堂」
「はい」
「どうして、上落ち村にお前たちは居たんだ?」


 

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