【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
交渉(1)
「だが! 断る!」
一度は、言ってみたかった言葉を口にすると同時に、スキル「威圧LV10」を発動。
「な――!?」
「ぐあっ!」
「何!?」
次々とアメリカの軍人たちが、膝から崩れ落ちる。
それと同時に全員のレベルをスキル「神眼」で、確認するが全員のレベルは100前後で、そんなには高くはない。
「――い、一体……」
俺に話かけてきた女性の軍人は、額から汗を滲ませながら言葉を紡ぐが、スキル「威圧LV10 」の影響からは、満足に語ることすら出来ずにいる。
「……な、何を……、して……」
戸惑いの色を浮かべた瞳を俺に向けてくるが、真面目に答えるつもりなぞまったくない。
そもそもアメリカの軍人のおかげで海鮮牛丼を食べることが出来なかったのだから、俺としては許しがたい連中だ。
「貴様は、敵対している相手から問われれば答えるのか?」
「――な、なん……だと!?」
「質問は、俺の方からさせてもらおう」
「――くっ!?」
「どうして、貴様らは俺の名前を知っていて俺にコンタクトを取ってきた?」
「……そ、それは――、言うことはできない……」
「ふむ……」
――困ったな。
正直、スキル「大賢者」が使えるのなら、要件を別に聞かなくても、人相から情報を集めることが出来たはずだが……、いまはそれが出来ない。
そもそも、どうして俺のような人畜無害な一般人にアメリカの軍人が関わってくるのか、その理由が――、分かるけど分からない。
少なくとも不信感を思われないように、着ぐるみを着て行動していたはずだし、問題はなかったはず……。
「アメリカ海兵隊の方ですね」
藤堂が、倒れていた兵士達の装備を見ながら俺の方を見てくる。
「本当なのか?」
「はい。間違いないです。以前に、合同演習をした時に、装備などを見た事があります。それに階級や軍属によって支給される装備が違いますし」
「なるほど……」
よくわからん。
そもそも海兵隊と言われても海軍の兵隊としか俺の中では認識がない。
「たぶん、彼らはアメリカ政府の意図で、私達に接触してきたと思いますけど……」
「それで同行依頼か――」
「はい。おそらくは……」
思わず溜息が出る。
同行を願い出るのはいいとしよう。
だが――、拳銃の銃口を俺達に向けて交渉してくるのは些か交渉的に拙いとしか言いようがない。
仕方ない、話し合いを有利に進めるために少しはハッタリを効かせるとするか。
スキル「神眼」を発動し、俺に話かけてきた女性へと視線を向ける。
名前 メルリド・バーレン
職業 軍人 ※米海兵隊 少佐
年齢 29歳
身長 165センチ
体重 54キログラム
レベル122
HP1220/HP1220
MP1220/MP1220
体力14(+)
敏捷22(+)
腕力13(+)
魔力 0(+)
幸運11(+)
魅力29(+)
所有ポイント121
「メルリド・バーレン少佐、聞きたいことがある」
「――ど、どうして……、私の名前を……」
目を見開き俺のことを彼女は見てくる。
別に、どうしても何もスキル「神眼」で、彼女のステータスは見えているからなんだが――、その事を親切丁寧に教えてやるほど俺はお人よしではない。
「くくくっ……」
「……な、なにが……、おかしい……」
「貴様は、我がテリトリーに入っている事に気が付かないことに笑えたのだ」
「――何!?」
かなり適当に言ってしまっているが、アメリカ人のノリが良くて助かる。
「アメリカ政府に注目されている程の俺が! 何の準備もせずに家から離れるなどあり得ると思うか?」
「――ま、まさか……、鍵屋や探偵を雇ったのは……」
おいおい、どこまで俺の事を調べているんだよ……、普通に怖いんだが――。
「そのまさかだ! このアパートは、一見! 何もない! ボロアパートのように見えるが、その実! 貴様らの会話や行動を録画・録音する機器がそこら中に設定されているのだ!」
俺の言葉に、米軍だけでなく佐々木や江原までも周囲を見渡している。
まぁ、そんな機器など設置していないがな!
さすが内閣情報調査室に所属していた藤堂は、俺の言葉がハッタリだと理解しているのか深い溜息を吐いている。
「なるほど……、さすがユナイテッド・ステーツが注目するだけの男はありまス」
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