【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

VS夜刀神(3)




「これだけの力を――、顕現した――、この夜刀神の半身とも言える神刀で斬り裂けない程の顕現力を持っていると言うのに……か?」

 夜刀神が、俺から距離を取る。
 それと同時に夜刀神が召喚したであろう神刀が粉々に砕け散った。

「ハハハハ――」
「何がおかしい?」

 夜刀神は仮面を摩(さす)ったあと、両手を広げると。

「愉快だ! これほど、愉快なことは初めてだぞ? 神同士の戦いなら分かる。だが――、たかが人間ごときが神たる我の権能を破壊するなど出来るはずもない! なのに、貴様は自身を人間と嘯(うそぶ)く。それは汝の神性を貶めることに他ならない。何故なら、神は神たる自身の――、そして己の存在理由を理解し――、行動原理に従うことで力を振るい維持する事が出来るからだ。――なのに貴様は……」
「……」

 俺が語り出してから俺は、攻めあぐねる。
 戦闘の素人の俺から見ても分かってしまうからだ。
 明らかに夜刀神が、俺からの攻撃を誘っていることが――。



 ――信仰心が50万を超えました。
 ――一定の信仰心を得た為、スキルの開放を行います。
 ――スキル「#JWOR」の封印を一部、解除します。
 ――魔法「須佐之男命(スサノオ)」の発動を許可します。
 ――スキル「#JWOR」の機能一部解放を行います。
 ――魔法「大国主神(オオクニヌシノカミ)」の発動を許可します。



 攻めあぐねていた所で、視界内のプレートにログが一気に流れる。
 それは、以前にダンジョン内でレムリア帝国の軍人と戦っていた時に使っていた物。
 何より、以前は特殊防御スキルと言われていた「大国主神(オオクニヌシノカミ)」が使えるようになったのは大きい。
 何故なら、俺の後ろに倒れている佐々木達を戦闘に巻き込む恐れが減じるからだ。

 

 魔法 

 ▼須佐之男命(スサノオ)

  消費MP 
  接続中、常時MP消費
  
  効果
  蓄積されてきた人間の戦闘技能のトレース



▼大国主神(オオクニヌシノカミ)

 消費MP 
 接続中、常時MP消費・接続消費MP量に応じて強度が変わる。
  
 効果
 土により防御壁を作ることが可能。 
 


「――戦闘中に気を抜くなど愚かな!」

 システムログと魔法アイコンを確認したことで注意力がほんの少し落ちたのを夜刀神は察したのだろう。
 気が付いた時には、夜刀神の手には新しい神刀が握られており俺の頭上からまっすぐに振り下ろしてきているところであった。
 避けることは出来ない。
 俺は両腕を交差し受け止める。
 それと同時に、足元の地面が砕け散り当たりに数メートルもある石の破片などが飛び散るのが見える。
 それらの破片は一般人が直撃すれば即死する。

「大国主神(オオクニヌシノカミ)発動!」

 消費MPを設定する事なく魔法を展開する。
 それと同時に、俺と夜刀神を中心とした円の形に土壁がせり上がり、飛び散った石や岩などを全て受け止めた。

「――なっ!?」
「――ッ!?」

 夜刀神の声と俺の驚きの声が重なる。
 何故なら、以前に発動した特殊防御スキル「大国主神(オオクニヌシノカミ)」よりも遥かに強固な土壁が一瞬で作られたからだ。

「き、貴様……、我らが系統たる国津神の力を――、一体……、貴様は……」

 震える声で、夜刀神は俺から距離を取る。
 明らかに声から、動揺しているのが手を取るように分かる。

「ばかな……、こんな馬鹿な事があるわけが……、国津神は人間を滅ぼすことを決めたはず――、なのに力を貸す神が居る訳が……」

 どういうことだ?
 人間を滅ぼす?
 話がまったく見えない。
 そもそも、目の前にいる夜刀神と語る者が、何なのかすら分からないが――。

 また人間と言っても一笑されて終わりなんだろうな。
 なら、ここは――。

「くくくっ、夜刀神とやら――」
「――な、雰囲気が!?」
「貴様にだけ教えておいてやろう」
「何!?」
「この俺の正体は――」

 そこまで言ったところでゴクリと、唾を飲み込む声が聞こえてくる。
 ふっ、なら教えてやろうではないか。
 この俺が何者なのかということを――。

「千葉県の特産物であるピーナッツの化身であり、そして――、人類史において最高にして至高の食べ物である牛丼をこよなく愛する者! つまりピーナッツマンだ!」

 夜刀神が脱力し首を傾げる。
 そして、最初は小刻みで体を震わせる。
 それが徐々に大きくなっていき――。

「……貴様、舐めているのか!」

 俺の説明に納得いかなかったのか夜刀神の怒号の声が辺りに響き渡った。


  


「【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く