自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

はふりの器(26)第三者視点




 父親を呼びにいくという山岸直人が去っていく姿を、佐々木達は見送っていく。
 そして彼の姿が見えなくなったところで――。

「それで――、どうして部外者である生者の貴方達が、この世界に入れたのか説明してもらえるかしら?」

 目の前に立っている山岸鏡花の言葉に――、佐々木達の間で緊張感が走る。

「どういうこと?」

 その中で最初に言葉を発したのは藤堂。

「どういうことも何もないから。この世界は、祝の器たる存在だけが作り上げることが出来る結界。そんな世界に、異物が入り込むことは出来ないの。それなのに、あなた達は入ってきた」
「祝の器?」
「神を受け入れる為の器ということじゃ」

 藤堂の髪の中から狂乱の神霊樹が姿を現す。

「――そう。古の名を無くし信徒を無くした虚ろの神が一緒にいたのね。……でも――」

 狂乱の神霊樹の姿を見ながらも山岸鏡花の表情には焦り一つ見つけることは出来ない。

「この世界は、契約した者でしか侵入することは出来ない絶対の領域。天津神・国津神でも、それは同じ――。だから……、元・国津神のアナタでは、この世界に干渉することは出来ない」
「そうじゃな」
「――なら、この世界に干渉出来たのは……」

 山岸鏡花が何もない空中を虚ろな目で見たあと口を開いた。

「そう……、お兄ちゃんは、貴方達3人と契約を結んだのね。だから――、この世界に干渉できたのね……」
「どういうことじゃ?」

 狂乱の神霊樹は、視線を江原・藤堂・佐々木に向けるが、「何を言っているのか?」と疑問を浮かべた表情しか3人は返すことができずにいた。

「あなた達、私が天津神に捕まっている時に――、お兄ちゃんから祝福を受けたんでしょう?」
「祝福?」
「そう――、言い方を変えればいいかしら? ギルドメンバーとしての登録をした。そうでしょう?」
「……それが祝福?」

 藤堂の呟きに、鏡花が苛立った様子で頷く。

「私が、いないときに! どうして他の女なんかと――」
「何を言っているのか分からないですけど……、確かに山岸さんのギルドに加入しました」
 
 キッ! と鏡花に睨まれた江原は佐々木の後ろまで下がっていく。

「どうして……、こんな女たちを助けるために……、お兄ちゃんは私のモノなのに……」
「……あの鏡花さん、ここが――、どこか教えてほしいのですけど……」
「藤堂さんでしたっけ? あなた達に教える謂われは無いから。さっさと村を出て行ってくれない? ここは、私とお兄ちゃんだけが居ればいい世界なの」

 ほとんど投げやりに言葉を呟くと鏡花は村の出口を指さす。

「ここの道を通れば県道に出られるから。もう、私達のことは放っておいて」
「それは出来ないです! だって、山岸先輩の手がかりを追って私達は、ここまで来たんですから!」
「そう……、本当に残念。――なら、ここで死ぬ?」

 その言葉に――、空間が軋みを上げる。
 富田が、その場で膝をつく。
 残りの3人――、藤堂・江原・佐々木は平然と、その場に立っており。
 
「…………やっぱり駄目みたいね。いまの私は、この空間内にいる者を恐怖で殺すことは出来る。だけど……、貴女達はお兄ちゃんからの加護を受けていてどうする事もできない。本当に厄介ね」
「鏡花さん、さっき――、ここは死者しか入れない場所だって言ってましたよね?」
「…………そうね」
「どういう意味なんですか?」
「どうもこうもないわよ。ここの空間を作り出せるのは祝の器たる資格を持つ者のみ。ここは此岸と彼岸の間に存在する虚空の世界にして虚ろの世界だもの。普通は生者は入ることが出来ないの。この世界に唯一、生身で入れるのは――、山岸家の人間だけ、だから出ていってくれない? 資格のない人間が、この世界に居れば死ぬから」
「――それは出来ません」

 佐々木が、即答で言葉を返す。
 それは拒絶の意を含んでおり――。

「そう、なら……、しばらくはこの世界で逗留するといいわ。あなた達が、どういう選択をするのか見てあげる。それに――、きっとお兄ちゃんは、私と過ごす道を選ぶもの」


 

 


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