自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

はふりの器(24)




「どうかしたのか? いつもの鏡花らしくないぞ?」
「…………う、うん」

 鏡花が、整ってる眉を顰めながら頷いてくる。
 いつもの元気溌剌な妹とは打って変わって不安そうな表情を見せている。

「車から人が降りてきたな」

 大人の女性3人に、白髪交じりのおじさんと言った風貌の男の計4人。
 女性は3人とも、目を引くほどの美人。

「――お、おい。鏡花、観察している途中でカーテンを閉めるのは――」
「お兄ちゃんには! 私がいるからいいの!! そもそも、あんな美人さんにお兄ちゃんが相手される訳ないじゃん! 見てたらセクハラで捕まっちゃうよ!」
「おい、見ていただけでセクハラで捕まったら世の男性はセクハラだらけになるぞ」

 まったく、こいつは……。

 母親が小さい頃に亡くなってから、多忙な父親に代わって面倒見てきたことからブラコンになってしまって困るな。

「いいの! とにかく、お兄ちゃんは他の女の人見るの禁止!」
「お前は、俺の行動を阻害してどうするつもりだ。そもそも、別に女性を見るくらいどうでもいいだろ」

 それにしても、服装がどことなく今風ではない気がする。
 何というか時代が異なっているというかそんな感じを受けるが――、まあ……、俺も女性の服装については、そこまで詳しい訳ではないからな。

「しかし、俺が通っている大学に通っている女子達と比べても遥かに綺麗系だったな。とりあえずお近づきになりたいな」
「にいやん……、捕まるよ?」
「なんで、話しかけただけで捕まるんだよ! 理不尽すぎるだろ。――と、とりあえず……、一応は、うちの神社は顔役でもあるからな。こんな何もない村に何のために来たのか聞いてみた方がいいかも知れないな」
「それなら、お父さんが対応した方がいいと思うの」
「親父は、神堕神社にいるだろ? 神社まで呼びに行っていたら往復で5分はかかる。その間、村の外からの訪問者を待たせる訳にはいかない」
「――そ、それじゃ! 私が対応するから!」
「いいから、俺が対応するから。鏡花は親父を連れてこい」
「…………お兄ちゃん」

 鏡花が俺の腕を掴むと引っ張ってくる。

「放っておけば村から出ていくから絶対にだめ!」
「どうして、そんなに反対するんだ?」
「…………だって……、お兄ちゃんが捕まったら……」
「どうして、俺が捕まるって前提なんだよ!」

 ――ピンポーン

「インターホンが鳴ったな」
「うん、鳴ったね。居留守しよう」
「だから、上落ち村に何しにきたのか聞いておいた方がいいだろ? それに、こんな山奥の村にまで来たんだから、もしかしたら道に迷っているのかも知れないからな」
「うーっ」

 鏡花が頬を膨らませて納得しかねるといった表情をする。

「とにかく行くぞ」

 階段を下りて玄関へと向かう。

「にいに、相手にしない方がいいと思う。へんなセールスとか宗教勧誘だったら大変だよ?」
「それなら、それで断っておけばいいだろ。それに――、もしかしたら困っているかもしれないし」
「むー」

 玄関の引き戸を開けると、そこには先ほど車から降りてきた女性3人と中年の親父さんの姿が――。
 その中の一人の女性と目が合う。
 
 すると、その女性の瞳が潤むと同時に――。

「――せ、せん……ぱ……い?」

 震えた声で、女性は言葉を紡いでくる。
 
 すると突然、彼女は、「……せん……ぱ……い?」と言ったあと――、目に涙を浮かべるといきなり抱き着いてきた。



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