自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

はふりの器(18)第三者視点




「消えてしまう? それって……」
「はい。縁の絆が強くとも、それは何れ消えてしまう。それが、本来の彼岸と此岸の関わりであり在り方です。――ですから……、今は迷うことはあるかも知れません。――ですが、いつかは消えてしまう記憶です。忘れてしまうのが、一番いいのかも知れません」
「そんな……」

 藤堂の悲嘆な表情を見て――、神居は小さく溜息をつく。

「よく考えてください。死んだ者を労わる気持ちは大事かも知れませんが、その者は――、すでに死んでいる者なのです。つまり彼岸の者である以上、強く心に留め置くということは、死んだ者の魂を束縛していることになるのです。そのような状態で、死んだ者が安心して消えることが出来ると思いますか?」
「…………私は……」

 山岸が死んだということを知らされた藤堂は、どうしたらいいのか分からないと言った様子で放心してしまう。

「まったく――、我が着いてきて正解だったのじゃ」

 そう言うと、藤堂の髪の中から姿を現した狂乱の神霊樹は、藤堂の頭の上に乗る。

「……もののけ!?」
「やれやれ、住職に就いている者がこの程度とはな。我と地に貯まる瘴気から生まれたモノを同一として見るなど不敬なのじゃ」
「――な、なら何者……」
「我の名は、神霊樹。いまは別の名で呼ばれておるのじゃ」
「神霊樹……?」
「うむ。こことは別の場所、別の時間で、汝らの願い――、信仰により生まれた」
「信仰……、ま、まさか――、精霊神……、八百万の一柱……」
「まぁ、中にはそう言う者もおるが……、我が居た時代には、八百万信仰は存在してはおらんかった。さて――、神居とやら、我が知りたいのは山岸直人の胴体と頭は、20年前の事件でどうなったのじゃ?」
「胴体は、上落ち村の――、神堕神社のお墓に埋葬されています。頭は見つかっては……」
「ふむ……」
「それで、もう一つ。上落ち村について――、とくに神堕神社についての話を聞きたいのじゃ」
「それは……」

 目を背ける神居。

「すでに信仰を失ったと言っても、さすがに神には嘘はつけんか?」
「それは……」
「この村の名前、神居村――、そこから見るに、ここは上落ち村を監視するために作られた場所だと我は思っているのじゃが、どうなんじゃ?」
「……神霊樹さん、どういうことなの?」

 ショックから立ち直った藤堂が、自らの頭の上に乗っている神霊樹に声をかける。

「決まっているのじゃ。いまの神居村には、村に入った儂ら以外には住職の夫妻以外は生命反応がないのじゃ――、つまり、すでに役目は果たした。そう考えるのが妥当というところじゃろう。違うか? 神居とやら」




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