自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

はふりの器(14)第三者視点




「影山君。我々は、報道するだけだ。それが事実であろうと虚構であろうとだ。それを見て判断するのは愚かで低能で愚鈍で自分で何も作らず、ただ生きているだけの家畜だ。そんな家畜の命など、我々にはどうでもいいことだ。何かあれば言ってやればいい。我々は、政府が隠していた情報を流しただけだとな。なあ~に、ソースを聞かれたら官邸筋と言っておけば問題はないことだ! いままでも、それでやってきたのだからな! ハハハハハッ」
「そっ――、のとおりです! さすがは村上社主! 影山部長! 君は、これを元に記事を作りなさい! 記事のタイトルはそうね……【日本国官邸の闇! 元・自衛官――、夏目総理が隠してきた事実! 民主主義は、そこにあるのか!】 これで行きましょう。間違いなく数字が取れるわ」
「うむ、影山君。しっかりと頼んだぞ」
「…………わ、わかりました……」

 社会部――、影山部長が頷いたのを確認すると共に愉悦な表情を浮かべた村上社主は2本目の葉巻を取り出し火をつける。

「次の議題だが――。影山君、日本国政府は、どのくらいで【海ほたる】――、現地の取材は許可を出すと言っているのだ?」
「はい。官邸筋からの情報によりますと世界的なテロリストが【海ほたる】を襲撃し、東京湾アクアラインを破壊し護衛艦イージスをも撃沈したということで、しばらくは入場規制は解かれることはないだろうと」
「なるほど……」

 村上社主は、葉巻を吸いながら東京夕日新聞東京本社局長である野口へと視線を向けと――。
 彼女は、頭を下げる。

「野口君、分かっているな?」
「はい。現場に入れなければ、いつも通り記事をでっちあげておけばいいのですね?」
「野口君。そういう我々が嘘をついているような言い方はよくない。我々が、思ったこと――、そして考えたストーリーこそが正しい。そのように世論を誘導することこそがあるべきメディアの役目なのだ」
「――そ、そうでした!」
「うむ、分かればよい。影山君、すぐに取り掛かってくれたまえ」
「わかりました」

 影山が東京夕日新聞社主室から出たあと。
 背もたれに体重を預ける村上社主は、葉巻を灰皿に置くと指を組む。

「野口君。影山君だが――、そろそろ死んでもらうとしよう」
「影山部長をですか?」
「そうだ。ああいう半端に正義感ある社員は、我が東京夕日新聞には相応しくない」
「分かりました。すぐに組織に連絡を入れます」
「うむ。そのために我々も野党に献金しているのだからな、少しは働いてもらわ――!?」

 村上社主が途中で口を噤んだ。
 それと同時に――、社主室の強化防弾ガラスが外側から粉々に粉砕される。

 大きな音が社主室内に響き渡るが、密会などで利用される社主室は防音対策が取られており、外には音は洩れない。
 外から侵入してきた侵入者は一人。
 すぐに東京夕日新聞の村上社主はガードマンを呼ぶべくデスク上のボタンを押す。

「侵入者だ! すぐに警備員を!」

 その言葉に、「わかりました」と、音声が切れる。
 そして――、村上社主は侵入者へと視線を向けた。
 姿を現したのは男で背は高くない。
 せいぜい見積もっても165センチほどだろう。
 男は黒いスーツを着て白い仮面を被っている。
 目の部分は三日月の形にくり抜かれており侵入者の男の視界を確保しているように見受けられた。

「お、お前は何者だ! ここを天下の東京夕日新聞の社主室だと知ってのことなのか!?」
「ふむ。どうやら、情報どおり東京夕日新聞の社主室でいいようだな」

 侵入した男は、室内を見渡すと話しかけてきた男に視線を向ける。
 

「貴様が村上藤次郎か?」

 仮面を被っている事で声をクリアに聞き取ることは出来なかったが――、それでも仮面の男の言葉を正確に理解した村上藤次郎は頷く。

「ふむ。なるほどな……、さて――、貴様に聞きたいことがある」
「き、聞きたいこと? 何をだ? 貴様のような、低俗なゴミと儂が話すことなど……「なるほど……」――なっ!?」

 仮面の男の言葉に答えないという意志を示したと同時に、東京夕日新聞東京本社局長である野口美恵の首が宙を舞った。
 それと同時に、社主室は局長である野口の血により赤く染められる。
 そこで、ようやく村上は仮面の男が右手に刀を握っていることを理解する。

 ――あまりにも常識外の出来事。
 
 人間の命が、まるで花でも詰むように刈られる異常な出来事に――、村上は放心すると同時に椅子から転げ落ち社主室の床の上に引かれている高級絨毯の上に倒れ込む。
 
「もう一度、聞くぞ?」
「ヒィ!?」

 刀の切っ先を向けられた村上が悲鳴を上げる――、が! その声は防音になっている社主室から外に漏れることはない。

「村上藤次郎、貴様には聞きたいことがある。20年前に起きた上落ち村の事件のことだ」
「…………か、上落ち村?」
「そうだ。貴様は、県会議員の西貝当夜から上落ち村で起きた事件について、警視庁上層部と結託し隠蔽し揉み消したはずだ」
「ど、どうして――、そ、それを……」
「すべてをクリエイティブバンクの社長が親切丁寧に教えてくれたぞ?」
「――な!?」
「さて、貴様に聞きたいのは、特亜ソーラ開発株式会社関係者の目録のことだ。大陸との交渉で使うためにデーターは保管してあるんだろう? それが欲しいんだが?」
「ま、まさか……、きさま――、上落ち村のメガソーラー発電開発関係者を次々と殺しているという……」
「そうだ。目録を寄越せば、楽に殺してやろう」
「な、何故だ! 何故、何もしていない人間まで――」
「おいおい、何を言っているんだ? 事件を揉み消している時点で、放送する権利と義務を放棄しているだろう? ならペナルティが必要――、それだけのことだ。それに人間は家畜なんだろう? だったら、俺から見たら貴様らも全員家畜同然――、それだけのことだ」
「――こ、こんなことをして只で済むとは――、ぎゃああああああ、腕が! 腕が」

 右手の親指が刀で切断された村上は絶叫しながら、社主室の扉の方へと逃げ――、扉を開ける。
 そして廊下へ転がり出ると同時に走って逃げていく。

 途中で村上社主と擦れ違う社員達。
 その尋常ではない村上社主の様子に腰を抜かす社員達。
 中には何が起きたのか考えた人間もいたが――。
 
 ――その全てが、何が起きたかを認識しないまま首を刀で刎ねられ絶命した。


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