自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

はふりの器(11)第三者視点




 富田が運転する新しい車――、クラウンが到着したのは行き先が決まってから2時間後。
 すでに日は昇りかけていた。

「富田さん、すいません。元旦だと言うのに」
「いえ、仕事ですから――、それよりリムジンの修理費と保険については……」
「分かっています。私が支払いますので」

 江原と富田の会話に割って入るかのように佐々木が言葉を紡ぐ。

「そうですか。それなら安心です。佐々木さんは、貝塚ダンジョンを攻略された方ですからね」
「そ、そうですね……」

 すでに、本当の意味で貝塚ダンジョンを攻略したのは山岸だと知っている佐々木は苦笑いを浮かべることしかできない。

「場所は伊豆半島の伊東市ですか――」
「はい。かなり山奥になると思いますけど……、大丈夫ですか?」
「問題ないですね。それでは、元旦ということもありますから首都高は空いていると思いますので、車に乗ってください」

 彼の言葉に、佐々木・江原・藤堂は黒塗りのクラウンに乗る。
 すると、すぐに車は走り出す。

 車は京葉道路を北上し、首都高を介したあと東名高速へと乗り換える。
 そして南下したあと、1時間ほどで大井松田インターチェンジで東名高速から一般道へと降りる。

「ここからは、国道135号線を伊豆半島に向けて南下します。そのあとは、内陸に向けて県道を走る事になりますので、目的地までは2時間ほどです」

 富田が、カーナビを見ながら3人に説明したが――。

「「「…………」」」

 三人は、海ほたるの激戦からの疲れもあって首都高からすでに寝ていた。
 そんな三人を見て富田は苦笑いをすると車を南伊豆方面へ向けて走らせる。

 熱海を通り越し伊東市内に差し掛かる。
 そして県道に乗り換えたあとは、内陸部の方角に車を走らせていく。

 海岸線沿いを走っていた時には、多くの建物が密集する光景が続いていた。
 それが県道に切り替えてからは、建物が疎らになっていき――、ついには整備の行き届いていない県道とガードレールだけになる。
 
 街頭も無くなっていたが、日は既に上がっていたこともあり走るのには支障はない。
 冷川峠を越えたあたりで、守居(かみい)村への入り口の看板が見えてくる。

「ここか――」

 富田は、カーナビで確認しながらハンドルを切ると北の山中へと続く山間の道を走る。
 すでに舗装は無いに等しい。
 そのために車内は揺れる。

「――ん……」

 すると当然、目を覚ます女性もいるわけで……。

「富田さん……」
「藤堂さん、すいません。道の整備が為されていないみたいで」
「――いえ。富田さんも殆ど寝ていないのに……」
「気にしないでください。タクシー運転手は貫徹運転は慣れていますので」
「そうですか。ありがとうございます」
「藤堂さん、これを見てもらえますか?」
「これは、この周辺の地図ですか?」
「はい。この周辺ですとカーナビの情報も殆ど役に立ちませんので――、伊東市内のコンビニで地図を買ってきました」
「なるほど……」

 藤堂が頷きながら、彼女は携帯で地理を確認していくが――、どこのWEBサイトの地図サービスも守居(かみい)村の詳細地図は書かれていない。

「助手席にいたのは幸いでした。それでは、私が地図を見てナビをしますね」
「よろしくお願いします」

 いくつかの分岐の道を車は通り抜け――、唐突に森が開ける。
 二人の視界に広がったのは山の中に作られた小さな田んぼのあとと畑――、そして点在している住宅であった。

「ここが守居(かみい)村のようですね」
「そうですね」

 富田の呟きに同意するかのように言葉を呟く藤堂。
 細い砂利道を車は走り続け――。

「止まってください」

 藤堂の言葉に、富田が運転している車は停まる。
 車が停まった先には、上に伸びるようにして続く階段が存在しており――。

「ここが、自徳寺みたいですね」
「目的の場所ですか?」
「はい。江原さん、佐々木さん起きてください!」
「――ん? おはようございます……」
「ここは……?」

 起こされた江原と佐々木が車の中から外の風景を見ながら藤堂を見る。

「守居(かみい)村の自徳寺に到着しました。ここからは、別行動をしましょう。何があるかわかりませんから、佐々木さんは江原さんと一緒に、富田さんと車を守ってください。私と狂乱の神霊樹さんは、自徳寺の確認をしてきます」
「――で、でも……」

 佐々木が不満そうな声を上げる。
 それはそのはずで……、彼女も山岸のことを知りたいからであった。

「佐々木さん、現在――、佐々木さんは狙われている立場なのを理解してください。そんな状態で、山岸さんへと繋がる証拠があるかも知れない場所に連れていくのは証拠が無くなる可能性があるんです。――ですので、絶対についてこないでくださいね」
「……わかったわ」
「狂乱の神霊樹さんも、それでいいですか?」
「仕方ないのじゃ」

 佐々木の髪の中から姿を現した狂乱の神霊樹は、藤堂の頭の上に乗る。

「それでは、富田さん。よろしくお願いします」
「分かりました。人形ではなかったんですね」
「ええ、――まあ……」

 いまだに事態を呑みこめていない富田と佐々木と江原を残し、藤堂は自徳寺に繋がる階段を登り始めた。

 

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