自宅にダンジョンが出来た。(WEB版)

なつめ猫

はふりの器(6)第三者視点




「はふりの器?」

 狂乱の神霊樹の言葉に江原は首を傾げる。
 そんな江原とは異なり、藤堂がしばらく考えたあと――、「それって祝(はふり)のことですか?」と、呟く。

「そうじゃ」
「――でも……、――祝の意味は神に仕える神主や神職のことを言うのではないのですか? 山岸さんは、神社とは無縁な気がするのですけど……」

 藤堂は半信半疑ながらも思ったことを口にするが。

「本当に無関係かどうか、奴のことを調べればハッキリするじゃろう?」
「それって……、山岸さんのことを――」
「そうじゃ。あやつのことを調べるべきじゃろうな」

 話が一段落したところで、狂乱の神霊樹は頷くと、佐々木の頭の上に乗る。

「あの、それじゃメゾン杵柄に向かうって感じでいいんでしょうか?」
「そうじゃな。あやつが住んでいた場所じゃからな。まずは調べた方がいいじゃろう」
「先輩の住んでいた場所……」
「ようやくマスターも反応したようじゃな」
「佐々木さん?」
「望さん――」
「…………二人とも、ごめんなさい。私が一番最初に出会ったのに、直接的には何も教えて貰えなかったことに嫉妬してて、それで――」

「望さんの気持ちはわかります」と、江原が言葉を呟く。

「佐々木さん、いまは何が起きているのかまずは調べないといけないです。山岸さんが、居なくなってしまったということを、認められないのなら進まないと――」
「うん、急いで向かいましょう」
「足はどうしますか?」

 藤堂は、現実的なことを口するが――。
 
「山岸さんから、千城台交通の電話番号を貰っているので、電話して使えるかどうか聞いてみましょう」

 江原の言葉に佐々木と藤堂が頷く。
 山岸の存在が消えたことで、千城台交通との契約がどうなっているかが分からないからこそ出た言葉であったが――。
 すぐに江原は、スマートフォンを取り出して千城台交通に電話をし、電話を切った。

「どうだったの?」

 藤堂が心配そうな表情で江原に聞くが――。

「近くに停まっていたのですぐに来てくれるそうです」
「どういう契約になっていたの?」
「あ!? それは聞くのを忘れていました」

 江原の言葉に藤堂が溜息をつく。

「まぁ、細かい事はいいわね。とりあえずハイヤーが来る場所まで向かうとしましょう」

 藤堂が椅子から立ち上がり扉に近づいたところで、佐々木が待った! をかけた。

「外には陸上自衛隊の人間が何人か居るわ」
「たぶん監視されているでしょうね」

 彼女の呟きに、藤堂は部屋の中をグルリを見る。

「窓から飛び降りた方がいいわね」

 藤堂が部屋の窓を開けると1階までは10メートル近くあり――。

「佐々木さん、お願いできる?」
「ええ」

 身体強化の魔法を使ったまま佐々木は1階まで飛び降りる。
 そして飛び降りてきた江原と藤堂を受け止めた。
 そのまま陸上自衛隊の正門ではなく、裏手の金網を跳躍して抜けると、丁度――、ハイヤーが目の前にきたところであった。

「あれ? 山岸様はいないんですか?」
「――え? 富田さんは、先輩のことを覚えているんですか?」
「何を言っているのか分かりませんが、大お得意の山岸様のことを私が忘れるわけがありません」

 リムジンに乗って現れた富田は、ハッキリとそう告げた。

 


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コメント

  • M!Nt0

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