自宅にダンジョンが出来た。(WEB版)

なつめ猫

はふりの器(4)第三者視点




 ――アメリカ合衆国――、ワシントン・ホワイトハウス。

 そこはアメリカ合衆国大統領が居住し、執務を行う場所であり政府の中枢とも言える場所である。
 いま、そのホワイトハウスは大勢のスタッフが忙しなく行き来していた。

「ジョージ大統領、ワシントンとニューヨークの電子機器の大半が使い物にならなくなったと報告が上がってきております」
「原因は?」
「はっ、成層圏にて核爆弾が爆発した事が原因と報告が上がってきています」

 報告を上げてきたのはウィリアム国防長官。

「つまり電磁パルス攻撃を、どこかの国が仕掛けてきたということか? それよりも以前に、電磁パルス攻撃には現在の機器は影響を受けることはないとマデレーン国務長官から報告を受けていたが?」
「はい。政府関係及び大企業の根幹を為すサーバーに関しては、バックアップ機能が存在するため問題はありませんでしたが――、郊外に点在する変電所は電磁パルスの影響により機能を停止、もしくは過電流を流したことで、コンセントに繋いでいた機器が炎上する事態に発展しています。現在、復興作業をしておりますがウォール街は、システムダウンを起こしております」
「ウォール街が?」

 ジョージ大統領は、椅子に深々と座りながら財務長官であるローレンスへと視線を向ける。
 ローレンス財務長官は溜息をつきながらも資料を読み上げる。

「現在、ウォール街のみならず、外部電源に依存しており過電流対策を怠っていた金融機関は軒並みシステムダウン
を起こしています。今回の損失額ですが、少なく見積もっても500兆円は下らないかと思われます」

 その言葉に、ジョージ大統領の顔色が赤く染まる。

「どこの国だ! どこの国が、我がユナイテッド・ステーツに攻撃を仕掛けてきたのだ!」

 大統領の言葉に「はい、それが――」と、ウィリアム国防長官が口を開く。
 すると【オーバルオフィス】に集まっていた数少ない閣僚の視線が一斉にウィリアム国防長官へと向かう。

「攻撃を仕掛けてきたというよりも……」

 歯切れが悪い説明に、ジョージ大統領の眉間に皺が出来る。

「いいから、さっさと言え!」
「はい。日本国――、【海ほたる】近辺からの攻撃かと思われます」

 ウィリアム国防長官の報告に、「日本国……、海ほたる……、まさか……」と呟きながらも、明らかにジョージ大統領の顔色が変わる。
 そんな彼の様子に。
 
「大統領、海ほたるというのは? それに日本国は同盟国のはずでは? それに日本国は核ミサイルを保有していなかったはず。何より大陸間弾道ミサイルでしたら、それなりの設備が必要なはず……、アメリカが、発射されることを感知できないわけが……」

 ロナルド商務長官の言葉に、ローレンス財務長官とバビット内務長官だけでなくエネルギー長官のリチャードソンも同意をするかのように頷くが――。

 それにジョージ大統領が答えられるわけがない。

「ウィリアム、2発だけなのか?」
「はい。衛星写真では、もう一発はアクアライン――、海底で爆発したのが確認できます」
「大統領! どういうことですか!」

 テーブルを叩きながら立ち上がったのは、ローレンス財務長官。

「どうして! 核爆弾を2発だけと言ったのですか? 何を隠しているんですか! 今回の電磁パルスの件と関わりがあるのですか?」
「そ――、それは……」
 
 たじろぐ大統領に、ローレンス財務長官の視線はウィリアム国防長官に向かう。

「ウィリアム国防長官! アンタたちは何を隠している? 同盟国で核ミサイルを爆発させたのか?」
「ローレンス財務長官、落ち着いてください」
「落ち着けるわけがない! アメリカ合衆国の毎年の赤字は100兆円を超える。今回の、電磁パルスの影響で最低でも500兆円の被害が出ることが決まっているのですよ? 少なくとも!」

 怒りのあまり彼はテーブルを殴りつける。
 そんな彼に同調したのはエネルギー長官のリチャードソン。

「大統領、まさか軍隊を動かしているのですか?」
「……動かして何が悪い? 日本には、あのテロリストを支援する国家、レムリア帝国の四聖魔刃の一人クーシャン・ベルニカが居たのだ。アメリカが誇った第7艦隊を、たった一人で壊滅に追いやった者が!」
「大統領、あなたは正気ではない。核爆弾を使用すれば、世論がどう動くか分からないわけでもないでしょうに……」
「だから! 海ほたるというエリアを孤立させたのだ! あとは、日本のマスメディアに圧力をかければいい。どうせ日本のマスメディアなど金さえ貰えれば、どんな違法な事であっても是として喜々として報道するのだからな! 何も問題ないはずだった……」

 その言葉にパビット内務長官が額に手を当てながら。

「つまり、ワシントンとニューヨークで発生した電磁パルスを起こした核ミサイルの出どころは、我がアメリカだったという訳ですか……」

 彼の言葉に全員が無言になる。
 静まり帰った【オーバルオフィス】で最初に口を開いたのは、ウィリアム国防長官であった。

「皆さん、それよりも問題があります」

 ウィリアム国防長官の言に大統領のみならず全員が視線を、彼に向ける。

「使われた核爆弾は、【改良型放射線強化型核爆弾】になります。ダンジョンから産出された金属で作られていますが、その総重量は2トンを超えます。それを、アメリカ合衆国の東海岸まで、短時間で運ぶなど大陸間弾頭ミサイルを利用しても不可能です」

 その言葉に全員の顔色が変わる。
 何故なら、核爆弾を大陸間弾頭ミサイルで飛ばしていないのでは、どうやって東海岸まで持ってきたのか? という疑問にぶち当たるからだ。

「これを見てください」

 室内にスクリーンが降りてくると同時に世界地図が表示される。

「これを見て頂くと分かりますが、核爆弾からの電波はある時間を境に急速に移動し始めます。その速度は、マッハ
22になります。限りなく第一宇宙速度に近い速度で移動し、アメリカの東海岸の上空――、成層圏で爆発しました」

 ウィリアム国防長官の言葉に、誰もが唾をのみ込む。
 そんな速度で攻撃などされれば迎撃は限りなく不可能だからだ。

 説明が終わったところで、ジョージ大統領は

「つまり、核爆弾を我が国に向けて放った者がいるという訳だな? それは、クーシャン・ベルニカか?」
「いえ、衛星で確認していましたところ――、この男の可能性が――」

 長官の前に、一人の男が表示される。

「この男は?」

 ジョージ大統領の問いかけに、ウィリアム国防長官は頷く。

「はい。着ぐるみを空中で瞬時に着ていたのが衛星映像から確認が出来ました。この着ぐるみを着た男が、我が国に核ミサイルを投げた張本人です。どうやら、日本ダンジョン探索者協会に所属している人物のようです。現在、海軍に調べさせているところです」
「何故、海軍に?」
「日本国内の米軍は現在、日本国政府からの監視を受けており、身動きが取れない状態にあります。空港も現在、厳戒態勢を敷かれております」
「夏目か、あの男は余計なことを」
「そのため、東京湾アクアラインで作戦行動中の海軍が動くことになりました」
「分かった。それで、クーシャン・ベルニカの方はどうなったのだ?」
「はい、現在は自衛隊に所属している佐々木望と言う人物がクーシャン・ベルニカを捉えたと報告が来ていますが……」
「何か問題でもあるのか?」
「はい。衛星映像を見て頂くと分かるように、佐々木望と着ぐるみを着た人物は別の人物のようなのです」
「ふむ……、つまり日本国政府は意図的に情報操作をしていると?」
「それは分かりませんが、唯一つ言えることは日本国政府は非常に強力な武力を手に入れたということです。それも我が国を震撼させるほどの武力をです」

 その言葉に誰もが言葉を失った。



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