自宅にダンジョンが出来た。(WEB版)

なつめ猫

激戦! 激闘! 海上決戦!(1)




 江原と別れる。
 そしてスキル「神眼」を常時発動させながら、【海ほたる】の建物の中をくまなく調べていく。

 1階、2階、3階と調べていくが見つからない。
 
「――時間が無いと言うのに……」

 いたずらに時間だけが過ぎていくことに焦りを感じる。
 そしてエスカレーターを上がろうとしたところで――。

「(山岸さん)」
「(藤堂か? どうした?)」
「(一つ思い出したことがあるんです)」
「(思い出したこと?)」
「(はい。中東で高密度中性子爆弾が使われた際には、もっとも高い建物の屋上に爆弾が仕掛けられていたことです。原爆という特性上、地面付近で爆発させるよりも高い場所で爆発させた方が効率よく運用できるみたいで……)」
「(――くっ!? わかった。そっちの避難の様子はどうだ?)」
「(山岸さん、こちらは殆ど用意が出来ました。あとは、アクアラインに向かって発進するだけです。早く戻ってきてください)」
「(俺は大丈夫だ。二人は避難をしている人々と一緒に、アクアラインを通って川崎の方へ行け)」
「(――え? ……で、でも山岸さんは……)」
「(俺は、大丈夫だ。さっさと移動を開始しろ。これは命令だ藤堂も分かったな?)」
「(わかりました)」
「(…………わ、わたしは……)」

 どうやら、江原は納得してくれてはいないようだ。

「(江原、お前が避難民と一緒に避難しないといけない理由は分かっているな? いま、現状がどうなっているのか避難民は理解していない。そんなときに誘導をしていたお前が【海ほたる】に残るなんて言ったらどうなるのかくらいは分かるだろう?)」
「(……で、でも……)」
「(時間が無い。押し問答している余裕はない。これは命令だ。すぐに避難民を連れて逃げろ)」
「(…………わ、わかりました……)」
「(藤堂は何かあった場合に江原のサポートをしてくれ)」
「(わかりました)」

 藤堂の声を聞き終えたあと、屋上へと向かう。
 屋上に出たところで周囲を見渡すが、爆弾らしきものは見当たらない。

「どこにもないな。考えすぎだったか……」

 無ければそれに越したことはないんだが……。
 呟きながらパラボラアンテナなどが壁についている建物を見る。
 その建物は、海ほたるの屋上から行ける場所ではなく内部からしか行けない塔で――、屋上には物見台が設置されているのが見える。

「……まさかな……」

 いま、俺が立っている場所よりもあきらかに高所の位置に物見台が存在しているのが、やけに焦燥感を駆り立てる。
 屋上から跳躍し物見台の場所へ降り立つ。

「おいおい冗談だろう……」

 スキル「神眼」の力により、視界内のプレートに表示されたログを見て、思わずつぶやく。



【アイテム名】

 改良型放射線強化型核爆弾003

【効果】

 ダンジョンで産出された金属を使ったことで殺傷能力を極めて高いレベルで実現させた核爆弾。 
 爆心から300メートル以内の建物を破壊、生物の即死。
 1500メートルまでの範囲内でほぼ即死、物理的破壊は起きない。
 4000メートルまで死亡者80% 放射障害患者が発生。
 3基の核爆弾とリンク中、停止は不可能。


 
「(山岸さん!)」

 切羽詰まった藤堂の声に、ハッ! とし――。

「(どうした? 何があったのか?)」
「(東京湾アクアラインが――、川崎に向かう道が瓦礫で塞がっています。しかも……、見た事が無い半魚人のような魔物まで大量に襲ってきます!)」
「(魔物? ここにダンジョンがあるのか?)」
「分かりません、ただ――、車が――、避難するための車が数珠繋がりなっていて――、きゃああ)」

 藤堂の叫びが、聞こえてくる。

「(江原! 聞こえるか?)」
「(はい!)」
「(話は聞いていたな? すぐに移動車両を海ほたるに戻せ)」
「(――で、でも、それだと……、原爆があったら……)」
 
 江原の言葉に俺は唇を噛みしめる。
 核爆弾が爆発するまで、あと180秒を切っている。
 しかも――、核爆弾はあと2個残っていて所在も分からない。

 さらに、海中を通るアクアラインは瓦礫で封鎖されていて川崎方面へ抜けて逃げることも出来ない。
 しかも、袖ケ浦に向かうアクアラインを復旧させたところで、4キロまでの範囲の生物が80%も死滅する爆弾が爆発したらどうにもならない。

「どうする……」
「(魔物に――、バスが襲われて――)」

 くそっ!? 考える余裕すらないのか!

「(藤堂、いまのお前は俺のステータスの10%を付与されている。普通の魔物なら殴れば倒せる! それで魔物を倒しながら避難民を誘導してくれ)」
「(――え? どういう意味ですか?)」
「(いいから、俺を信じろ! 時間がない!)」

 すでに核爆弾のタイマーは160秒を切っている。
  
「(江原も、俺のステータスが付与されている。その力は山根よりも上だ。藤堂と一緒に避難民の誘導を地上までしてくれ)」
「(は、はい!)」

 くそっ!? こんな状態で核爆弾のことなんて説明できない。
 説明したらパニックになるのが落ちだ。

「どこを余所見してやがる!」

 声が頭上から聞こえてくる。
 俺はとっさに後ろへと飛びのく。

 すると――、先ほどまで俺が立っていた場所が、3メートルを超す灼熱色のククリナイフで切り裂かれた。
 ククリナイフを持っている男は、おもむろに立ち上がると俺の方を見てくる。
 
「おいおい、まさか――、あの程度で、このレムリア帝国の四聖魔刃の一人クーシャン・ベルニカを倒したと思っていたんじゃないだろうな?」

 冗談じゃない。
 唯でさえ時間がないというのに――。

「無言かよ、ピーナッツマン。お前の正義とやら、どの程度か見せてもらおうか? 日本ダンジョン探索者協会の英雄さんよ!」
「――くっ!?」

 田中が――、その手に持っていた巨大なククリナイフを横薙ぎすると、それだけで炎の竜巻が発生し俺の方へと押し寄せてくる。
 それと同時にスキル「神眼」が、田中が持っているククリナイフのような物を解析する。



【アイテム名】

 人造兵器イガリマ

【効果】

 太古に栄えた魔術大国レムリア王国の魔術師が作り出した最古の剣の一本。
 あらゆる炎を生み出し操ることが出来る。
 全ての物質を分子レベルで溶解・消滅させることが可能な大剣。



 視界内のプレートにログが流れた瞬間に、危険を感じ振り下ろされた剣をギリギリで避ける。
 だが――、田中が振り下ろした大剣は、余波だけで【海ほたる】の建物を両断した。




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